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“元”暗殺者の転生譚!  作者: 浅野陽翔
オーブ集めの旅へ
21/217

たわわに実った以下略

 ユウシアと目があった白竜の子供は、卵から抜け出すと飛び立ち、ユウシアの周りを嬉しそうに鳴きながら飛び回る。

「ぴぃぴぃっ!」

 生まれたばかりなのに飛べるのかとか、そんなツッコミは置いといて。

 ユウシア、アヤ、フィルの三人は声を合わせて、

「「「可愛い」」」

 そう呟いた。

 ユウシアが腕を広げると、白竜はその中に飛び込んでくる。

「ぴぃっ」

 自分を見上げるクリクリの目。

「……え? 何これ本気で可愛い」

 思わず白竜を抱きしめるユウシア。

「ゆ、ユウ君、私も」

 アヤに頼まれ、白竜を渡す。

「ぴぃ?」

「欲しい」

 嘘偽りない本音である。

 と、そこで、羨ましそうにこちらを見つめるフィルに気づく。

 アヤがフィルに白竜を差し出してみると、彼女は一瞬逡巡する気配を見せるも、我慢出来なくなったのかそっと受け取り、抱きしめる。

「はふぁ……」

「フィル様がだらしない顔をしておられる……」

 ユウシア達を連れてきた衛兵が驚きながら呟く。

「この白竜は、私が引き取ろう。うん、そうしよう」

「ぴっ!」

 ニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべながらフィルが言うと、白竜は嫌っ! とでも言うように鳴いて彼女の腕から抜け出してしまう。

 そのままユウシアの頭に着地する白竜に手を伸ばし、フィルが情けない顔をしているが、ユウシアは不思議そうに頭の白竜を見上げている。

「……凄い懐かれてる?」

「……懐かれてるね」

「刷り込み的な?」

「それって、最初に見たものを親と認識しちゃうっていう? 鳥?」

 ユウシアとアヤが首をひねっている間も、フィルは情けない顔をして、よろよろと近づいてきている。

「よし、飼うか」

「軽いね」

「異論は?」

「ありません!」

「なら良し」

 即決である。

 こうして、ユウシアの旅の仲間にペットが加わった。

「私にも、私にも愛でさせてくれ……」

 白竜の可愛さにやられた騎士様が加わる予定は、今のところない。


++++++++++


 翌日ユウシアは、街の鍛冶屋にやって来ていた。アヤは宿の部屋で安直に「ハク」と名付けられた白竜と戯れている。

 ここに来た目的は、黒竜の目に刺さったまま息絶えて目を閉じたことにより折れた短剣を新調するため。何とも締まらない最期だが、安物だから仕方ない。

「こんにちはー」

「お、いらっしゃい!」

 出迎えたのは、女性の店主だ。女性ではあるが、フィルの紹介なので、腕に心配はいらないだろう。

「武器を作って欲しいんですが……」

「オーダーメイドだね? いいけど、アタシの武器は高くつくよ?」

「それについては大丈夫です」

 何だかんだでフィルにかなりの額を貰ったので、ユウシアの懐はかなり暖かいのだ。

「武器の種類は何がいい?」

「短剣で」

 ユウシアがそう答えると、店主は店に置かれている短剣を何本か手に取り、ユウシアに渡す。短剣ではあるが、それらは大きさや重さ、形が全て異なっているようだ。

「それじゃあ、この中から一番しっくりくるのを選んでくれ。それを参考にするからさ」

「分かりました」

 そう答えたユウシアは、渡された短剣の一本一本を手に取り、軽く振って感触を確かめる。

「んー……じゃあ、これで」

 その中でユウシアが選んだのは、短剣にしては少し大ぶりのナイフで、反対側がギザギザの櫛状になっているもの。一般的に、「ソードブレイカー」と呼ばれるものである。

 それを渡された店主は、少し驚くように眉を上げる。

「いいのかい? 普通のナイフより耐久が落ちるし、大した武器は壊せないんだよ?」

「大丈夫です。実は、素材にこれを使って欲しくて」

「……これは?」

 ユウシアがリュックから取り出したのは、

「黒竜の角です」

「へ?」

 昨日倒した黒竜の、最も大きな角。

 あの後、やっぱり素材全部は受け取れないということで、黒竜の素材の中で一番貴重な部位であるそれを受け取っていたのだ。武器の素材に適しているというので、せっかくだから新しい武器はこれで作ってしまおう、と思った訳である。

「だから、黒竜の角ですって」

 店主の疑問に満ちた声にあっけらかんと答えるユウシア。

「……黒竜って、もしかして、昨日の……?」

「そうですけど?」

「何でそんな素材を……」

「そりゃまぁ、倒したの俺ですし」

「…………」

 別に隠すようなことでもないので普通に答えると、店主が口を開けて絶句してしまう。

 そんな店主に角を押しつけるユウシア。反射的に受け取った店主は、我に帰ると咳払いをしてから角を見始める。

「……なるほど。確かにこれなら、耐久には問題ない……それに、魔力がこもっているから、魔導具アーティファクトになる可能性もあるね。分かった、角が素材となると本当は鍛冶屋の領分じゃないけど、アタシはこっちの加工も得意だからね。やってやろうじゃないか!」

 店主がそう言って胸を叩く。その弾みに、ユウシアが今まであえて意識していなかったたわわに実ったメロンが揺れたが……ユウシアは見なかったことにした。

「ところで、このサイズとなると、短剣を作っても半分以上余るんだけど……それはどうする?」

 その質問に、ユウシアは目をそらしたまま考える。

「そう、ですね……じゃあ、投擲用のナイフを何本か作ってもらえますか?」

「任せな。最高の武器を作ってやるよ!」

 再び胸を叩く店主。その弾みに以下略。

「あ、そうだ。武器を作るところ、見せてもらってもいいですか?」

「ん? そりゃ別に構わないけど……珍しいね」

「いえ、何か面白そうだなぁ、と」

「別に面白いもんでもないと思うけどね……まぁいいや、付いてきな」

 そう言って店の奥へ歩き出す店主。店はいいのかと思うユウシアだったが、一応店には他にも人がいるようだし、問題はないだろう。

 奥の扉、恐らく鍛冶場へ続くと思われるそこの前で止まった店主が振り返る。

「自己紹介がまだだったね。アタシの名前はメイサ。呼び捨てで構わないし、敬語もいらないよ」

「分かった。俺はユウシアだ。よろしく、メイサ」

 メイサはそれに笑って答えると、奥の扉を開いた。

 ニギハヤミ……あっちょっやめr

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