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“元”暗殺者の転生譚!  作者: 浅野陽翔
武闘大会(デカい方)
208/217

甘えん坊

 なんか久しぶりに出てきたなこの人達……。

 翌日。

 あんなことがあったのだ。武闘大会も予定通り進行とは行かず、原因の調査や諸々で、一週間程延期になっていた。

 当然ユウシアも話を聞かれるだろうし――というか最重要参考人なのでそれはもう念入りに聞かれるのだが、彼はそれと同時に事件解決の立役者でもあるので、ひとまず事情聴取は明日からということになった。今日はゆっくり体を休めるように、とのことだ。

 もちろん彼自身もそうしたかったし、むしろ今日は無理矢理にでも休みを勝ち取るつもりだったのでありがたいのだが――


「あの、リルさん?」

「……もう、ユウシア様は本当に、どれだけわたくしを心配させれば気が済むのですか……」


 ――なんというか、リルが引っ付いて離れてくれない。

 休むにも休めないでもこれはこれで幸せだからアリかも……とかなんとか、最近あまり二人になれなかった反動もあってか、心の中に小さな葛藤が生まれるユウシアである。


「心配させないでくださいと、何度も言っているではありませんか」


 胸に顔を埋めていたリルが、ユウシアの顔を見上げながら言う。


(ヤバい超可愛い。……じゃない)

「いや……それについては本当に悪いと思ってるんだけどさ……ほら、自分で言うのもなんだけど、俺はそこそこ強い訳で……そうすると、どうしてもこういうことも増えちゃうんだよ」

「それは……分かっていますわ。ですが、どうしても心配なのです。分かった上で、それでも心配させるな、というのは、理不尽なことかもしれませんが……」

「ううん、その気持ちだけでも嬉しいよ。でも……多分今後も、こういったことはなくならない。むしろ増えるかもしれない……それでも必ず、リルのもとに帰ってくる。約束するよ」

「……信じますわ。ですが、出来るだけ……わたくしの側にいてください……」

「……うん、分かった。じゃあ、とりあえず今日一日はずっと側にいようかな」


 ユウシアの言葉に、リルは小さく笑う。

 ……ちなみに、今日一日ずっと、というのは、実はそのまま言葉通りの意味で達成可能だったりする。

 というのも、今朝目が覚めた段階で、リルがベッドの中に潜り込んでいたのだ。それから今に至るまで片時も離れなかったので、この後も一緒にいれば晴れて“今日一日ずっと”達成という訳だ。


「……なんというか、もう慣れてきちゃった感じ、あるよね」


 ところで今いる場所は、王城にあるユウシアの部屋。部屋の主であるユウシアがいるのは当然として、朝いつの間にかいたリル、そして、同じく王城に住むフィルとアヤの二人もやって来ていた。今のセリフはアヤのものである。


「それは……否定出来ないな……」


 イチャつく二人から目を逸らしながら呟くフィル。

 そんな彼女達の言葉に、ユウシアは小さく笑う。自分の世界に入ってしまったリルがそれに気づかないのはいつものことだろう。


「しかし……昨日のあれは一体、なんだったんだ?」


 やはり気になるのだろう、フィルがそうユウシアに聞く。


「んー……そうだな。簡単に言うと、狂信者の暴走、かな」

「狂信者の暴走?」

「狂信者……っていうと、レーラン教国のこと?」


 聞き返すフィル。興味を示したのか、アヤも話に加わってくる。


「そう。昨日の、レーランとの試合が終わってからのことなんだけど……なんか引っかかることがあってさ。対グラドと対ニアさんの作戦を立てるのは先輩達に任せて、俺だけレーランの三人を尾行させてもらってたんだ。詳しいことはそのうち先生あたりから聞けるだろうから省くけど、昨日の神装騎士カヴァリエーレが、彼らの企みの正体って訳。まぁ、実を言うと俺にもまだ全ては分かってないんだけど……それも含めて、分かったことは少なくともここにいる人には情報が来るはずだよ」


 ここにいるのは、王族や事件の当事者、また彼らに近しい者だ。アヤはまだしもリルやフィルには情報が来るはずだし、そもそもユウシアが彼女達にはちゃんと報告するようにさせるつもりである。レーランの企みがこれで終わりかどうかも分からない以上、身を守るためにも情報は持っているべきだろう。


「……リルも、聞いてた?」

「もちろんですわ」


 ユウシアにくっついたまま静かだったリルだが、話はしっかり聞いていたらしい。……らしいのだが、ユウシアを見つめる瞳が、「そんなことはどうでもいいからもっと甘えたい」と言っている。……気がする。

 そして、フィルとアヤもそれを感じ取ったらしい。二人で目を合わせ、頷くと、そのまま立ち上がる。


「「それじゃあ、ごゆっくり……」」

「え」


 彼女達は、そんなことを言うとそそくさと退散してしまう。後に残されたのは、部屋主であるユウシアと甘えん坊モード全開のリル。


「うわっ」


 誰もいなくなるのを見るや、リルはユウシアをベッドに押し倒した。


「今日は本当に、離しませんからね、ユウシア様!」

「……はい」


 その瞬間ユウシアは、この休日に自由がなくなったことを理解した。

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