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“元”暗殺者の転生譚!  作者: 浅野陽翔
武闘大会(デカい方)
207/217

分裂

 正午になる六分前です凄い。何がって諦めなかった自分が。

 効率的にダメージを――とはいえ、短剣しか持たないユウシアでは、いくら攻撃したところで与えられるダメージなどたかが知れている。

 なので、自身も攻撃はしつつ、どちらかというとニアとグラドのサポートをするように立ち回っていたのだが……。


(……さすがに優秀だなぁ、二人とも)


 戦闘開始から数分が経過した今も、二人は大した怪我を負うこともなく攻撃を続けている。敵は前回ユウシアが戦ったときよりも強くなっているとはいえ、こちら側が複数人いるおかげか、前回よりも早く再生力が落ちているように思える。


(これならそう時間はかからなそ――っ!?)


 だが、事はそう簡単には進まなかった。

 グラドが両断した異形が、再生せずに形を変え、二つに分裂したのだ。


「……そんなバカな」


 思わず呟くユウシア。なんというか、何よりもめんどくさいという感情が真っ先に浮かんできてしまう。


「ユウシア君! これは一体!?」


 分裂した異形の片方を相手にしながら、ニアが聞いてくる。が、


「前に戦ったときはこんなことにはなりませんでした。ただ強くなっただけじゃないみたいですね……」


 と、そうとしか答えられない。知らないのだから、原因はもちろん、対策も分からない。


(という訳なんだけど)


 困ったときの女神様頼り――とばかりに、頭の中に問いかけるユウシア。


『なにこれ、どうなってんの?』

『さぁ……私にもちょっと』


 ダメらしい。


「……とりあえず、このまま戦ってみましょう! これで分裂は終わりかもしれませんし……まだ分裂するようならそのとき考えます!」

「……まぁ、それしかないわね。グラドは――」

「オラァァアアアッ!」

「――聞いてなさそう」


 というか、分裂したことにも気づいているのか分からないレベルの暴れっぷりだ。何を言っても止まらなそうなので、放っておくことに決めたニアである。

 そしてユウシアとニアの二人も、暴れるグラドに負けてられないとばかりに戦闘を再開した。


++++++++++


 そしてあれからおよそ三十分。

 結論から言うと、異形はまだまだ分裂した。

 だが、どうやら分裂は再生限界が近くなるたびに起こるようで、攻撃する程小さく、そして多くなっていき、そのペースも時間とともに加速していった。

 ただ小さくなって攻撃力が下がったとはいえ数というのは恐ろしいもので、分裂する程にユウシア達の消耗も激しくなっていた。

 しかしその分裂も打ち止めらしく、闘技場内は現在、小さな異形の死骸で埋め尽くされていた。そもそもマトモな生物かも怪しい異形に“死”という概念があるのかどうかは少し疑問だが。

 そして――残る異形は三体。ユウシア達がそれぞれ一人一体ずつ相手をし、今、


「フッ!」

「ハッ!」

「ラァッ!」


 戦いは、終わりを迎えた。

 三人がそれぞれの武器で、同時に異形にトドメを刺す。

 攻撃を受けた異形は動かなくなり、そして、


「溶けていく……」


 前に戦った異形と同じように、次第に液状になり、地面に染み込んでいく。今倒した三体だけでなく、それと同時に他の数十、下手をすれば百以上にも上りそうな異形達も同時にだ。


「……やっと終わりか」

「そうみたいだな。お疲れ様」

「フン」


 グラドは鼻を鳴らすと、ユウシアに大剣を返してさっさと闘技場を出ていってしまう。


「まったく、少しは喜ぼうって気にはならないのかしら」

「さすがのグラドも疲れてるんでしょう。ニアさんと戦ったあとにこれですから。……そういうニアさんは?」

「確かに疲れたけど……まぁそうね、私も帰って休もうかしら。まだ何かやることがあるみたいだし、ね」


 そう言ってパチリとウインクするニアに、ユウシアは苦笑を浮かべる。


「よく分かりますね。……そういう訳ですから、ゆっくり休んでいてください。事後処理は任せてもらって大丈夫ですから」

「ん、そうさせてもらうわ……」


 と、疲れたように――というよりは眠そうに、それもあくびをしながら言ったニアも、グラドと同じように闘技場を去っていく。

 ユウシアはそれを見届けると、おもむろに振り返った。


「さて……それじゃ、やりますか、事後処理」


 しゃがみ込んだ彼は、何かを探すように地面に触れる。そして――


「……ん、あった」


 ユウシアが手に取ったのは、水色の宝玉――オーブ。神装騎士カヴァリエーレに取り込まれ、次いで異形に取り込まれたそれを、分裂した異形の中心となる個体が保持しているのをユウシアは感じ取っていた。そして、最後の相手がその個体になるように、さりげなく調整していたのだ。


(まだ変化してないオーブは初めてだな……)


 というのも、最初の赤のオーブはセリックが、次の黄のオーブはアランが、それぞれの得意な武器に形状を変化させていた。現在ユウシアが使っているのもそれらの形状のままなのだ。


(これなら自由に形を決めれるんだっけ?)

『そうですね。オーブの性質によってある程度制限はされますが……』

(なるほど……ちなみに、このオーブの性質は?)

『……少し待ってくださいね。えぇと……』


 と、考えるラウラに割り込んで。


『静と動、固定と変化、かな』


 聞こえてくるレイラの声。


『れ、レイラ!? 私の仕事、しかも初めてを……!』

『わー、なんかその言い方えっちー。アハハ』

『もう、茶化さないでください!』


 姉妹喧嘩――と言うにはレイラが楽しそうだが――が始まるユウシアの脳内。単純にうるさいのでやめて欲しいと切に願いつつも、ユウシアは水色のオーブを何に変化させるか考える。

 そしてしばらく考え込んで出した答えは――


「決めた。ラウラ、お願い」

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