新たな力
今回短めです。
「やっぱり、二人にも参加してもらいます。前回であれだったんだから、多分今回は俺一人じゃ倒しきるまでもたないし」
と言いながらユウシアは、彼の持つ水晶武装を取り出す。
「〔殲滅ノ大剣〕――〔蹂躙ノ光刃〕」
――それも、二つ。
前にやったときは負荷に耐えきれず倒れてしまった同時使用だが、今度はしっかりと立っている。
そう、これが、先程レイラから貰った力だった。
『元々足りないのはゆーくんの中の神力だったからねー。ラウラ姉様と同じように身体能力だとかを満遍なく強化することも出来たんだけど、そうすると同時使用は二、三個が限界だし、いっそそっちに特化させてみました! 多分これなら七個全部集まっても一緒に使えると思うよ。それでよかったかな?』
(うん、そっちの方が色々と嬉しい。ありがとう、レイラ)
『ふっふっふ、どういたしまして! やっぱあたしって出来る女神だね!』
『レイラ、あまり調子に乗らないでください。出来る女神は信徒を暴走させたりしません』
『うっ、いや、あれは皆が勝手に……はい、ごめんなさい』
レイラの声が段々弱くなっていく。何があったのか少し気になるユウシアだが、今は戦いに集中すべきだろう。
「グラド」
ユウシアはグラドの名前を呼ぶと、彼に大剣を投げ渡す。
「なんだ、俺はこれ使えってか?」
「これが一番使えるだろう?」
「……フン」
小さく鼻を鳴らしたグラドは、大剣を構える。その姿は非常に自然で、彼が大剣使いであると言われても違和感のないものだった。
「……なによ、まだ隠し玉でもあったの? 私相手に手の内を隠すなんて、いい度胸してるじゃない」
「うるせぇ、お前相手にコレは合わねぇだろ。それより今はアイツに集中しろ」
「はいはい、分かったわよ。それでユウシア君、私はこの飛んでるのでも使えばいいのかしら?」
「あー……ちょっと待ってくださいね」
既に自由に動ける短剣を持たせる意味も薄い。困ったユウシアは再び頭の中に意識を向ける。
(ヘルプ)
『……仕方ないですね。妹にばかり見せ場を取られる訳にもいきませんし、今だけ特別ですよ』
ラウラの声が聞こえる。
その直後、周囲に浮かぶ短剣は集まり始めると、融合し、二本の長剣へと形を変えた。
『これもおまけしておきますね』
続いて、ユウシアの短剣に神力が付与される。
『これで、一時的にですがあれにも通用するはずです』
(なるほど……さすがはラウラ)
『いえ、可愛い息子のためですから』
『……なんでもないふうに言ってるけど、ラウラ姉様、すっごいニヤニヤしてるよ?』
『こら、レイラ! 余計なことを……!』
……どうやら、嬉しかったらしい。顔を赤くするラウラを想像して小さく笑うと、ユウシアは形を変化させた代わりに飛行能力を失った二本の剣をニアに渡す。
「二刀流、ね」
「はい。レイピアと短剣の二刀流とはまた少し感覚が違いますが」
「いえ、これでも問題ないわ。さ、早く終わらせましょう。疲れたから休みたいの」
ニアが剣を構える。それにならいユウシアも、取り出した短剣を構えた。
「これといって指示は出しません。邪魔せず、フォローしあいながら、効率的にダメージを与えてさっさと倒しちゃいましょう」
「ああ」
「了解よ」
ざっくりとそんなことを言ったユウシアは、先陣を切って異形へと向かっていった。
なんか前回敵が向かってきてた気がしますが、避けながら会話してることにしておいてください。書き終わってから思い出した。