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“元”暗殺者の転生譚!  作者: 浅野陽翔
武闘大会(デカい方)
203/217

乱入者

「何……これ」


 地面に開いた大穴。そしてその上空に浮かぶのは、巨大な騎士鎧。


「空飛ぶ騎士……だぁ? おとぎ話じゃねぇんだぞ」


 ニアのみならずグラドも驚きに目を見開く中、鎧はゆっくりとその手に持つ、体相応に巨大な剣を振りかぶる。


「っ、まずっ――」


 今の傷ついた体では避けられない。ニアが声を上げかけた直後、鎧の剣が弾き飛ばされる。


「あれ、ニアさん……と、グラド」


 鎧の頭上で目を丸くするのは、たった今その手に持つ大剣で鎧の剣を弾き飛ばしたユウシアだ。


「おい……一応俺も先輩だぞ。呼び捨てか?」

「そういうの気にする人じゃないでしょ、あなた。……ということは、今まで闘技場の真下にいたのか」


 ユウシアはグラドの言葉にそう返しながら、鎧の攻撃を避け、下へと降りる。


『こ、これは……一体どういうことでしょう!? 試合に見入っていたら、地中から巨大な騎士が現れました!』

『エルナ先生、実況は一旦ストップです。――ユウシア君、これは?』


 ヴェルムがユウシアに説明を求める。


「あー……説明は後で。今はとりあえず、こいつが敵ってことだけ理解してもらえれば。先生は観客の避難誘導をお願いします。俺はこいつを……まぁ、どうにかしてみます」

『分かりました。ユウシア君一人で大丈夫ですか?』

「……ちょっと分からないんで、ここの二人治療しても?」

『非常事態です、いいでしょう。二人とも、試合の続きはまた日を改めてということでいいですね?』

「はい。わがままを言っていられる状況ではなさそうですから」

「……チッ、仕方ねぇ」

『ありがとうございます。ではユウシア君、グラド君、ニアさん。ここは任せましたよ』

「はい」


 頷くユウシア。それを見たヴェルムは、エルナと共に避難誘導を開始する。

 そしてユウシアは、懐から取り出した銃を二人に向ける。


「えーと、ユウシア君? それは?」

「これですか? 銃っていって、まぁ基本的に武器なんですけど」

「……なんで武器を私達に向けるのかしら?」

「あ、今は大丈夫です。いわゆる治癒弾入ってるんで」


 雪山の山頂で手に入れた銃だが、弾丸にただ魔力を込めるのではなく、魔法を直接撃ち込むと、その魔法を吸収して使えることが判明したのだ。

 そこで、リルの協力を得て六発の弾丸のうち二発に回復魔法を込めたのだ。威力に関しては自分の魔力でいくらでも賄えるが、そもそも魔法を使えない以上回復魔法など自分では込められるはずもない。

 ユウシアは、その治癒弾を二人に撃ち込む。


「二発の消費は痛いけど……まぁ、仕方ないな」


 弾丸を撃ち込まれ、淡く光る二人の体。大量についた傷はみるみるうちに塞がっていき、すぐに傷一つない状態まで回復する。

 魔法弾の高燃費・高火力は、回復魔法でも例外ではなかった。魔法一回程度では到底容量いっぱいにはならなかったが、込めた魔法以上の効果をもたらしてくれたのだ。


「これは……凄いわね」

「……面白ぇ」


 感心したように呟くニアと、思い通りに動くようになった体を見て笑うグラド。


「それで、ユウシア君。ちゃんとした説明は後回しとしても、簡単な事情くらいは教えてくれるのよね?」

「え? あー……じゃあ簡単に言うと、レーランが何か企んでて、神装騎士カヴァリエーレっていうらしいんですけどあれがその内容で、何故か拠点がこの下に……俺も詳しくは分からないんですけどね。とりあえずあれは敵です」

「……まぁ、今はそれでいいか。分かったわ。私の剣は通らなそうだから、攻撃は二人に任せるわね」


 ニアはそう言うと、一人さっさと神装騎士カヴァリエーレへと向かっていってしまう。


「なぁ、おい」

「ん?」

「その、銃……ってのの威力、どんなもんなんだ」

「多分、そこらの大魔法より全然高いと思うけど……なんで?」

「自分の拳に自信がねぇ訳じゃねぇが……得体の知れねぇ金属を打ち砕けるとは思わねぇ」

「……メインの攻撃は俺にやれ、と」

「そういうこった。ったく、あれがそこらの騎士鎧だったら譲らねぇんだがな」

(そこらの騎士鎧なら拳で壊せるんだ……)


 若干引いてしまうユウシアである。


「あいつが攻撃を引きつけるなら……俺は隙を作るってとこか。おい、しくじるんじゃねぇぞ」

「そっちこそ」

「フン」


 グラドは鼻を鳴らすと、ニアと交戦中の神装騎士カヴァリエーレへと向かっていく。


「さて……通るといいけど」


 ユウシアは呟きながら、グラドが作ると言った隙を待ち、銃を構える。あのグラドが作ると言ったのだ。そこは信用出来るだろう。

 だがユウシアには、それとは別の、一つの不安があった。

 彼はそれを胸の内に押し込めて、暴れ回る神装騎士カヴァリエーレに照準を合わせる。

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