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“元”暗殺者の転生譚!  作者: 浅野陽翔
武闘大会(デカい方)
199/217

尾行

 早くも学校が始まるので憂鬱です……。

 翌日、レーラン教国との試合。

 前日とは違い最初から最後までアラン一人だけで行い、滞りなく勝利を収めた。しかし、


「……気になるな」

「そうですね」


 ユウシアの呟きに、シオンが賛同する。二人の視線は、負けたというのに全く残念がっていない様子のレーラン教国代表、アルベルト、サミラ、カーマインの三人に向けられていた。


「どうかしたんですか?」


 そんな二人に、戻ってきたアランが問いかける。

 答えるシオン。


「あの三人……敗北したにもかかわらず悔しさなどの負の感情を見せていない……というか、何も思っていないように見えます。そしてあの目……今までのターゲットに似ている」

「ターゲット……って、シオン先輩、それは……」

「はい。暗殺対象です」


 アランは彼女の家――アサギリ家のことを知っているのだろう。シオンは躊躇うことなく答える。


「それは俺も思いました」


 シオンの考えに同意を示すユウシア。少し考えると、


「どうにも鼻につく……このあと、少し尾行して調べてみます。先輩達は次の試合を見て作戦を考えててください」

「分かりました。ユウシアさんが見つかるとは思えませんが……あの三人、何やら底知れぬものを感じます。お気をつけて」

「はい」


 ユウシアは頷くと【隠密】を発動。風景に溶けるように姿を消した。


「……さて、私達は残る二試合のために情報収集です」

「そうですね。……本当は、作戦立案にはユウシア君もいてくれると心強いですけど」

「言っても仕方のないことです」


 話しながら二人は観客席へと向かっていった。


++++++++++


(……まぁ、様子が気になったのもそうだけど)


 レーラン教国代表控室。ユウシアはその扉のすぐ前で息を潜めていた。


(この感じ……)


 いかに自分の隠行に自信があるとはいえ大して広くもない部屋の中で仮にも一国の代表達にバレないとは思っていないし、そもそも【五感強化】があるので探るには部屋の外から話を聞いていれば十分だった。


(――と思ってたんだけど、まさか一言も話さないとは)


 そう。見当違いがあったとすればそれは、彼らが何も話をしていないこと。それどころか動いている気配すら感じられない。

 と、試合場の方から歓声が聞こえてくる。


(ん、始まったか……っと)


 一瞬そちらに目を向けたユウシアは、すぐにその場を離れる。その直後開く扉。中から三人が出てくる。


(観戦か……? いや、この方向は違う……)


 彼らが向かうのは試合場とは反対の方向。ある程度の間を開け、ユウシアも付いて行く。


(どこに行く気だ? ――っ!)


 闘技場から出たあたりで、彼らのリーダーであるアルベルトがふと後ろを振り向く。咄嗟に隠れるユウシア。


(気付かれた……? いや)


 気付かれた訳ではないようだ。アルベルトは首を傾げると再び歩き出す。


(……それにしても、見れば見る程不気味だ)


 先程アルベルトが足を止めた際も、他の二人は止まりはしたもののそちらを見もしなかった。その後もどうしたのか聞く気配すらない。

 歩き方だってそうだ。アルベルトが先頭、その後ろに付くようにサミラ、カーマイン。三角形の配置を全く崩さず、三人の距離もずっと同じまま。それどころか歩く姿も完全にシンクロしている。これを不気味と呼ばずしてなんと呼ぶのか。

 と、そんなことを考えているうちに、三人は学校の広大な敷地の端に到着する。カーマインが前へ出ると、学校を囲む壁の下のあたりを何やら探り始めた。


(……何をやってるんだ?)


 ユウシアが疑問に思ったその直後。

 カーマインはどこかに手を当てると、魔力を流し始める。

 それを見たユウシアは、すぐにその先に集中。

 魔力量が多い、つまり魔力に敏感なユウシアの感覚はその流れる先すら感じ取り――


(またこのパターンか……)


 いつぞやと同じ、魔力を流すことで開く隠し扉。そしてその位置は、ここからは少し離れた木の陰だ。

 ユウシアはそちらに先回りすると、すぐに中に入り込む。本来であればあまり先行しない方がいいのだが、アルベルト達が入ってすぐに扉が閉まってしまう可能性もある。先に入って彼らをやり過ごした方が確実だろうという判断だ。

 ある程度進んだところで陰になっている部分を見つけたので、そこに入ってアルベルト達を待つ。そう経たずに現れた彼らは、ユウシアには気付かず素通りして行ってしまう。念の為また間を空けて陰から出ると、つかず離れずの距離を保ちながら追いかける。


(それにしても、なんで他国の代表である三人がこんな場所を……)


 ユウシアはもちろん、下手をすればアランやシオンも知らない場所だ。さすがにヴェルムが知らないということはないだろうが……。


(この先に何があるのか、三人の目的はなんなのか……それに、この感覚は間違いないのか)


 額に走る、覚えのある感覚。そう、これは、オーブの――


(これが間違いないのだとすれば、三つ目のオーブを確保出来るし、もしも彼らの目的が何かよくないことだったならそれも阻止出来る。一石二鳥、かな……)


 何はともあれまずは調査だと、ユウシアは尾行に集中しなおした。

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