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“元”暗殺者の転生譚!  作者: 浅野陽翔
武闘大会(デカい方)
197/217

独壇場

 くじ引きを終え、控え室へと戻ったユウシア達。


「初日は休みか……」

「四日連続で戦うことになるのか。出来れば真ん中のあたりに休みを持ってきてほしかったけど、仕方ないかな」

「最初に他の選手を観察出来ると考えれば、悪くはないでしょう」

「ですね。確か一時間後に、クレイドとディオネスからでしたっけ」

「うん。……今までと同じなら、多分、ディオネスは先鋒でグラドが出てくる。クレイドに彼に勝てる選手がいるとは思えないから……」

「グラドの独壇場でまず間違いないでしょう。私達は明日、初戦の相手がクレイドなので、直近の相手についてあまり知れないのは残念ですが……まぁ、仕方がありませんね」

「……そこまでか」


 グラドの勝利を疑わないシオンとアラン。その二人の態度に、ユウシアは改めてグラドの強さを再確認する。この間会ったとき、あれだけの接触でグラドが強いことは分かりきっていたが、シオン達が――おそらく、この世代に限らずとも世界有数の実力者であろう二人が言うのだ。認識を改めるには十分過ぎるだろう。


「私達がディオネスと戦うのは四日目――明々後日でしたね。あまり言いたくはありませんが、おそらく、グラドに勝てるのはユウシアさん、あなただけです」


 アランが頷き、言葉を引き継ぐ。


「少しでも体力を温存してもらうために、明日、明後日の試合は僕達で片を付ける。何か異論があれば聞くけど……」

「……いえ。そこまで体力が少ないとは思ってませんけど、あいつが相手なら用心し過ぎるということもないでしょうし……万全を期すために、言葉に甘えさせてもらいます」

「では、そのあたりも含めて、試合開始まで作戦を立てましょう」

「「はい」」


 壁となるのは、四日目のディオネスと、五日目、最終日のアルトゥス。戦い方なども知らないため事前情報のみでの大まかな作戦だが、それでも三人の議論は白熱していった。


++++++++++


 ――予想通り、とでも言うべきか。

 初戦、ディオネス帝国対クレイド王国。

 ディオネス帝国先鋒、グラド・オルグ、クレイド王国先鋒、アメリア・セルワイト。勝者、グラド・オルグ。

 続いてクレイド王国中堅、アリト・フィルサイル。勝者、グラド・オルグ。

 いずれも圧倒的な試合。アメリアとアリトは、グラドにかすり傷を付けることすら叶わなかった。

 そして、クレイド王国大将、ジェノス・ヴィル・クレイドとの試合も、今決着が着こうとしていた。


「カハッ……」


 グラドの拳を腹に受けたジェノスが、血を吐きながら膝をつく。


「じゃあな」


 短い言葉とともに放たれた蹴りは低くなったジェノスの頭を捉え、勢いそのまま場外へと弾き飛ばした。


『ジェノス選手、場外! 圧倒的だー!!』


 エルナの声が響き渡る。ジェノスの場外負けだ。ちなみに、他に戦闘不能になった場合、審判エルナによる判定、降参による敗北もある。


「……フン」


 鼻を鳴らすと、その場を早々に立ち去るグラド。闘技場から出る瞬間、上の観客席にいるユウシアを見る。そのユウシアは、彼をまっすぐに見返している。

 あの試合を見ても臆することのないユウシアが気に入ったのだろうか。グラドは小さく笑って闘技場から姿を消した。


「……やはり、強いですね」


 ユウシアの隣にいるシオンが呟く。


「そうですね。少なくとも個人の戦闘力で見ればこの中でもトップかも……僕もちょっと自信ないなぁ。ユウシア君はどう思う?」

「分かりきってたことですけどね、あいつが強いのは。まぁ……だからって負ける気はないですけど」

「それは心強い。……さっきも言ったけど、彼はユウシア君に任せるつもりだ。準備は万全にね」

「はい。負ける気はないですけど、そう簡単に勝てるとも思ってませんから」


 正直なことを言うと、今日の試合ではグラドに関しては何も分からなかった。ほぼ全ての試合が、開始直後に距離を詰め、一撃入れて終わりだったのだ。戦略も何もない、単純にジェノス達の反応速度が追いつかなかっただけの話。グラドは武器を持たずに素手の格闘で戦っていたが、もしかしたらそれも武器を使うまでもないと判断してのことかもしれないのだ。


(強いて言うなら、身体能力の高さはよく分かったってところかな……正直なんの参考にもならないけど)


 試合を思い返しながら、ユウシアは苦笑を浮かべる。


(……あとは、とりあえず今回程度の速度ならわざわざ【五感強化】の強度を変えなくても見えるってことも分かったかな)


 まぁ、あれで本気だったとも思えないけど……と、思考を続ける。


(明日のレーランとの戦いも、レーランがどれくらいの強さなのかは分からないけど、今のところあまり期待は出来なさそうだし……となると明後日、俺達がやる前日のニアさん達との戦いをしっかり見ておかないと)


 おそらくマトモな戦いになるのはそこだけだ、と、ユウシアは考える。ニア達も同様なので、その一試合でアルトゥス、ディオネスの両方を見なければならないが、出来ないことはないだろう。


「明後日……私達の後でしたか、彼らとアルトゥス共和国の戦いは」

「そうですね。試合後休む暇はなさそうです」


 ユウシアと同じことを考えていたのか、シオンとアランがそんな会話を交わしている。

 その後に行われたアルトゥス共和国とレーラン教国の試合は、順当に――という言葉が正しいかは分からないが、少なくともユウシアはそう思った――アルトゥス側の勝利に終わった。

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