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“元”暗殺者の転生譚!  作者: 浅野陽翔
武闘大会(デカい方)
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お互い様

 うぼぁ

「ふむ……そういう場合は一旦――」

「――なるほど、そういう手もあるのね」


 それから三十分程が経過し、ユウシアとニアは、料理をつまみつつ話に花を咲かせていた。話題は戦闘関連のものばかりではあったが、それは仕方のないことだろう。


「相手の動き一つ一つに色々なアプローチがあるのね。分かってはいるつもりだけれど、どうしても似た動きには同じような対応をしてしまうから……勉強になるわ」

「それはお互い様ですよ。人間、どうしても癖というのは付いてしまうものですから」

「そうね。でも……いいの? これから戦う相手に手の内を明かしてしまって」

「いい……とは言いませんけど、それこそお互い様。俺の方も色々と教わってますし、何より引き出しを全て開けたりはしませんよ」

「ふふ……それもお互い様ね。私だってそんな迂闊なことはしないわ」

「当然です」


 そんな迂闊な人間はこの場には来られないだろうとユウシアは苦笑する。


(……手を全て見ることは出来なくても、引き出しの中身を推測することは出来る)


 情報が多ければ多い程、その推測は正確になる。それは相手としても同じだろうが、ユウシアはニアに話したものとは似ても似つかぬ手段を複数持っている。


(まぁ……ニアさんだってそのくらい分かってるだろうけどな)


 その上で、自分の手を隠し、今もこちらの手に対する対策を立てているだろう。そのほとんどが無駄になると理解はしているが、活きる可能性が少しでもあるから。それはユウシアも同じだ。


(あとは単純に、こういうのは勉強にもなるし)


 知識は強さだ。色々なことを知っていれば、ユウシアの言う“引き出し”を増やすことに繋がることだってある。要するに、いいことづくしなのだ。


「……色々と打算があるのは分かるし、私も同じだけど、仲良くしたいというのも嘘ではないからね?」


 そんなことを考えていると、ニアが苦笑しながら言ってくる。それにユウシアは小さく笑い、


「俺もですよ」


 と答える。当然、紛れもない事実だ。


「……というか、ニアさん以外に仲良く出来そうな人がいないというか……」


 ユウシアは言いながら周りを見る。

 仲間であるシオンとアランを除くと、ディオネス帝国のセアルとサルファは二人で端の方で固まってしまってとても話しかけられるような雰囲気ではないし、グラドはいないしいてもあまり仲良くしたくはない。

 クレイド王国のジェノスは言うまでもなく、アメリアとアルトは当然自国の王子が敵視している相手と仲良くなど出来ないだろう。

 ニアの仲間であるアルトゥス共和国のマルティナとルーナなら仲良く出来そうではあるが、その二人はシオンとアランと四人で話しているので一旦パス。

 レーラン教国のアルベルト、サミラ、カーマインは……正直、あまり近寄りたくはない。他の皆も同じなのか、彼らの周りには他国の生徒は誰もいなかった。


「――でも、平気なの?」

「何がですか?」

「私と話していて。彼女さんに知られたら怒られない?」

「あぁ……」


 ニアの問いに、ユウシアは少し考える。

 彼女とずっと二人で話していると知ったリルがどうするか……。


「……うん。多分大丈夫です。彼女はそのくらいで怒る程心の狭い人間じゃないし……何より、俺が彼女一筋なのはよく知ってるはずですから」

「……そ、そう……」


 あっさりと言い切るユウシアに、若干引き気味のニア。ユウシアがどれだけリルを愛しているか……二人の関係を知っている者の中では半ば常識となりつつあるそれを、彼女も理解したようである。


「……そういえばニアさん、あまり食べてないですね」


 ニアの反応を見て、ユウシアは話題を変える。


「え、あぁ……私、少食なの。さっき食べた分で十分よ」

「そうなんですか。せっかく美味しいのに勿体な――あれ、なくなってる」


 新しく料理をよそおうとしたユウシアは、いつの間にか大皿に盛られていた料理が全てなくなっているのに気が付く。かなりの量があったし、皆そこまで食べているようには見えなかったんだけど……と、ふと隣を見るとそこには、


「もぐもぐ……」

「……先輩、何やってるんですか」


 料理を皿に山盛りにした上で頬をハムスターのように膨らませるシオンの姿が。


「え、あれ? さっきまで向こうでアラン先輩達と話してましたよね? っていうかいつから食いしん坊キャラになったんですか」

「もぐ……ごくん。いえ、話に一段落ついたので。それに私は、昔からこのくらいは食べます」

「え、知らなかったんですけど。夏休みにうちで出てた大量の料理、いつの間にかなくなってると思ってたけど先輩が処理してたのか……」

「美味しかったです」

「あはは……あ、でも、それはさておき」


 笑っていたユウシアだが、表情を一転、シオンを真剣に見つめる。


「リルの料理、返せ」

「お断りします」

「ならば奪うのみっ!」

「やれるものならやってみなさい!」

「……何か始まっちゃった……」


 ぶっちゃけ子供同士の喧嘩レベル。

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