お話
ツイッターで、カスタムキャストを使って色々なアバターを作っているのを見かけまして。で、ふと思いついたんです。
「そうだ、自分の作品のヒロイン作ってみよう!」って。
という訳で、自分なりのイメージを形にしてみたものを私のツイッターに載せています。今はまだこの作品のはリルしかいませんが、興味がある方はマイページからツイッターのアカウントに飛べるので、是非。
「さ、それでは自己紹介も終わったことですし、皆さん是非、食事でもしながら親睦を深めてください!」
にこやかに言ったヴェルムが、先んじて料理に手を伸ばす。それに引っ張られるように、他の皆も皿を取り、思い思いに料理を盛り付けていく。そんな中、
「……先輩、随分盛りましたね……」
「お腹が空いていたもので。……それにユウシアさん、小耳に挟んだのですが、これらの調理には殿下も関わっているとかなんとk」
「先生、それは本当ですか」
「はぐっ……んぁ? あぁ、はい、本当ですよ?」
「早く言えよ馬鹿野郎!」
「ばっ!?」
相変わらずリルが関わってくると内心を全く隠そうとしないユウシア。当然のようにヴェルムを罵りながら全料理を一口分ずつ取り、一つ一つ口に入れて味わう。そして、
「……リルが作ったのは、これとこれ、あとはこれに……これと、これもそうだな。よし」
「わ、分かるんですか……」
「これくらい当然です」
「はぁ……」
真剣な表情でリルが作った料理を言い当てる彼に、呆れた目を向けてしまうシオン。その後ユウシアが今言った料理を中心に取っていくのを見て、更に呆れたようにため息を漏らす。
……ちなみにユウシアが指した料理は、間違いなく全てリルが作ったものだった。恐ろしや。
閑話休題。
リルの料理(だけをピンポイントで)楽しむユウシアのもとへ、あまり覚えのない――つまり、シオンやアラン、ヴェルムのものではない気配が寄ってくる。顔を上げるとそこにいたのは、
「確か……ニアさん、でしたっけ」
「えぇ。覚えてもらえて光栄だわ、ジルタ王国期待のホープ君」
アルトゥス共和国の学園首席であり、ユウシア自身も「格が違う」と評したニアだった。
ユウシアは手に持っていた皿を置いて、再び口を開く。
「覚えもしますよ。あなたは、強い」
「そう……その言葉は、そのままそっくり返すけれど。そう言ってもらえると嬉しいわ」
「お互い様です。……それで、俺に何か用ですか?」
「あら。一年生にして学園の頂点にまで上り詰めたあなたと話がしたいと思うのはいけないかしら? ましてそれが――」
ニアは小さく笑うと、ユウシアの耳元に口を近づけ、囁くように言う。
「――第一王女の婚約者となれば尚更、ね」
「っ!」
ユウシアは目を見開き、周囲に見えないようにニアの肩を掴む。
「……何故それを知っている」
「そんな怖い顔をしないで、別に言いふらしたりはしないから。……それより、力を入れすぎよ、痛いわ」
「信じられない。……別に隠している訳じゃないが、そう喧伝していいものでもない。質問に答えろ」
ユウシアの手にますます力が篭もる。ニアも彼が本気だと悟ったのだろう、表情に薄っすらと浮かんでいた余裕を消す。
「念の為、誰にも言わないと約束してもらいたいのだけれど」
「そちらの態度次第だ」
「……どこの国だって、他国に密偵くらい放つわ。隣国ともなれば、友好国といえどより徹底的に。その中に王城にまで入り込む者がいたとしても、私の知ったことではない」
「……信じよう。俺もとりあえずこの話は誰にもしない。俺を信じるか、そして話が漏れるかは――あなた次第だ」
「いえ……私もあなたを信じるわ。この話も絶対にしない。愛する人のためにこんなに怒れる人だもの、信じないと、ね」
「……そうか」
ユウシアは一言呟くと、ニアの肩から手を放し、自身も一歩後ろに下がる。
「――それで、お話、でしたっけ」
「……えぇ。この集まりの目的も親睦を深めることでしょう? 是非ともお友達になりたいと思っているわ」
「そうですか。俺としても望むべきですが……そんなにのんびり、できますかね?」
小さくため息を吐き、そちらに目を向ける。
「――よぉ、楽しそうなことしてんじゃねぇか。俺も混ぜろよ」
「ほらのんびりとか絶対無理な人来ちゃったよ」
この空間でもトップクラスの強者が二人。そんなところに、この男――グラドが興味を引かれないはずもない。声をかけてきた彼に、ユウシアは小さくため息を吐く。
「楽しそうなことと言っても、お話しているだけなのだけれど」
ニアがどこかめんどくさそうに言うも、グラドは鼻で笑う。
「ハッ、よく言うぜ。おめぇが元凶だろう?」
「……そう、見てたの」
先程のユウシアとニアのやり取りのことだろう。周囲に気取られないよう【偽装】により隠しはしたが、驚愕で使用するのが少し遅れてしまっていた。グラドは隠される前のほんの一瞬を見逃さなかったらしい。
「でも残念ね、あれはもう終わったこと。今は仲良くなるためにお話をしているの」
「……まだ話題すら決まってないですけど」
呟くユウシアに、「余計なこと言わないで」とでも言いたげな視線が飛んでくる。
「……フン、まぁいい、そういうことにしとくか。……ここにいる意味も特にねぇし、俺は先に帰らせてもらうぜ。あんたらと戦うのを楽しみにしてるよ」
「なら私は戦わずに済むことを祈っているわ」
ヒラヒラと手を振りながら部屋を出ていくグラド。ニアはそちらを見もせずに言葉を返す。
「……仲、悪いんですか?」
そんな彼女に、ユウシアが問いかける。
「そうね……正確には、悪くなるような仲すらないけれど。苦手なのよ、あぁいうタイプ」
「あぁ……まぁ、分かります」
なんだかんだ、意外と仲良くなれる気はするユウシアであった。




