自己紹介
名前考えるの本当にめんどくさい。何度モブズの名前省略してやろうと考えたことか……。私、頑張りました。
「まずはホスト国の我々から自己紹介と行きましょうか。僕は騎士学校の学園長を務めるヴェルム・フェルトリバーです」
食事の前に、と手を叩き注目を集めたヴェルムが、先んじて自己紹介をする。目を向けられたユウシア達も立ち上がり、
「ヴェルム騎士学校武闘大会第三位、“議会”副会長のシオン・アサギリです。よろしくお願いします」
「同じく第二位、会長のアラン・レイノルズです。いい勝負にしよう」
「第一位のユウシアです。とりあえず負ける気はないんで、よろしくです」
正直意気込みとかも何もないユウシア。ただリルも見ることだし手を抜く訳にはいかない、そして手を抜かないなら負ける気もない。そんな訳で優勝宣言をしてみる。
「ククク……いいねぇ、おめぇと戦るのが楽しみだ」
ユウシアを見ながら、グラドが笑う。
「――じゃあ、次はそちらにお願いしましょうか」
グラドが声を出したのをきっかけに、ヴェルムがそちらに話を振る。
「ディオネス帝国、グラド・オルグ。全員ぶっ潰す」
「セアルだ。よろしく」
「サルファ・ティネスです」
グラドに続いて他の二人も名乗るが、二人ともどこかグラドとの距離が感じられた。
(まぁ、あの性格じゃあ距離を取られても仕方なさそうだなぁ。グラド本人もむしろそれをよしとしてるみたいだし)
ユウシアが考えている間に、次の団体の自己紹介が始まっていた。
「クレイド王国第一王子、ジェノス・ヴィル・クレイドだ。――ユウシア! リルは渡さn」
「あ゛ぁ゛?」
「うぃっす……」
「ジェノス殿下……? えっと、アメリア・セルワイトです。頑張ります」
「アリト・フィルサイル。よろしく」
意気込むジェノスに、ユウシア安定のドスのきいた声。思わず縮こまる彼に他の二人が不思議そうな目を向ける。……先程も似たような光景を見た気はするが。
(で……あとの二国は全く知らないかな)
残る二国が同時にやって来てそのタイミングでヴェルムが声をかけたので、そちらに関しては本当に何も知らない。が――
(……いるな。結構強そうなのが。グラドじゃないけど……悪くない)
戦闘狂などと言うつもりはないが、強者との戦いで熱くなるのもまた事実。残りのメンバーにも強そうな者を数人見つけ、いつの間にやらユウシアは武闘大会が少し楽しみになっていた。
「アルトゥス共和国、学園首席。ニアよ。楽しみましょう」
「次席、マルティナと申します。よろしくお願い致します」
「第三席、ルーナ……」
続いて名乗った三人を見て、ユウシアは思わず呟く。
「全員女の子……?」
それを聞いていたのかシオンが、
「私も詳しいことは知りませんが……アルトゥス共和国はとある女戦士の子孫が集まって出来た国で、戦いに長けた女性が産まれやすいのだと聞いたことがあります」
「血筋ですか……でも実際、強いですね、彼女達。……特に首席のニアって人は格が違う」
その言葉にシオンは小さく頷く。
ユウシアの視線に気が付いたのか、ニアは意味ありげな微笑を浮かべる。
(……こういう風に笑う人、ちょっと苦手なんだよなぁ……何考えてるのか分からなくて)
それにとりあえず笑顔を返しながら、ユウシアは内心でそんなことを考える。苦手なものは仕方ないのだ。
――そして最後。
「レーラン教国学生代表、アルベルト・テッサ」
「同じく、サミラ・アイテラ」
「同じく、カーマイン・ウェルトリヒ」
「「「我らが女神に、勝利を捧げます」」」
「おぉう……」
声を揃える三人に、ユウシアが小さく声を漏らす。
「……えっと、先輩、あれは?」
「女神レイラを崇めるレーラン教を国教とする国ですね。何事も教えを最優先とする……正直、私はあまり好きではありません」
「僕もだね。悪いとは言わないけど、少し気味が悪い」
ユウシアの問いにシオンが少し顔を顰めながら言い、アランもそれに頷く。
(女神レイラ……ラウラの妹か。彼女自身はどう思ってるのか、少し気になるな)
今度ラウラと話せるときに聞いてみよう、と考えるユウシアだった。