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“元”暗殺者の転生譚!  作者: 浅野陽翔
武闘大会(デカい方)
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帰ってきた波乱

 帰ってきた作者。詳しくは活動報告に書いたので省きますが……お久しぶりです。お待たせしてすみません、更新再開でございます。新章スタートです。

 五国間学生武闘大会――冬休みを利用して行われるそれだが、何も冬休みに入ってすぐに行われる訳ではない。

 それに、普通であれば移動のためにその余裕もほとんど失われることになるのだろうが、今年は開催国がここ、ジルタ王国なのでそんな心配もない。

 そんな訳で、ユウシア達は、普通に自宅と化している王城にて暇な日々をのんびりと過ごしていた。

 大会のための特訓? やってますよ、たまにね。

 なんて、そんな様子である。

 ちなみに、ユウシアが何をしているのかというと、ほとんどの日をリルとイチャイチャして過ごしている。当然のようにイチャついている。それはもう人目も憚らず、父親ガイルの目の前だろうが、ハイドの目の前だろうが当然のように。

 だがしかし、今日も今日とてバカップルっぷりを発揮していた二人のもとに、波乱(?)がやって来る――。


++++++++++


「……いつもいつも、二人してそうベタベタと……よく飽きないな」

「んー、そう?」


 どこか諦念の混じった顔で言うフィルに、ユウシアは微笑を浮かべながら答える。その声はどこか上の空で、その視線は自分の肩にもたれかかって小さな寝息を立てるリルに向けられている。

 ここはリルの部屋に付いたテラス。いい天気だったのでそこでリルが読書をしていたところにユウシアがやって来て、何をするでもなく隣に座ってボーッとしていたのだが……気付けばリルが彼を支えに眠ってしまっていたのだ。きっとこの陽気に当てられたのだろう。

 そして、そこへ更に何か用があったらしいフィルがやって来たのだが――


「それで、フィルはどうしてここに?」

「ん、あぁ、忘れるところだった。実はな」


 フィルはそう前置きすると、


「母上と、一番上のディルク兄上が帰ってきたのだ」


 ガタッ、と、リルが椅子からずり落ちかける。

 危ないな、と言いながらそれを戻したユウシアは、改めてフィルを見る。


「えっと……お母さんって確か、エリザベート様、だっけ。そういえば、一番上の兄と国外に行ってるって言ってたな」

「名目上は国交を深めるため……実際は旅行目的だろうがな。私達も誘われたのだが、私は騎士の仕事があったし、姉上も当時は様々な場所に赴いて演説をしてと忙しかったので断ったのだが……一年ぶりに帰国したのだ」

「一年か……随分と長く行っていたんだな」


 そう返しながら、ユウシアは前にリルとフィルに聞いた話を思い出す。

 エリザベート――愛称はエリザ。三人いる王妃の中のいわゆる正妃というもので、リルとフィル、ハイド、そして先程話に出たディルクの産みの親だ。

 リル達曰くかなりの子供好きで、自分の子供はもちろん、側室達の子供――それぞれ二人ずつの四人、うち三人は男――も溺愛。ことあるごとに孤児院に赴いては、散々子供達と遊びまくった上で多額の寄付をして帰ってくるという、子供好きの権化、そしてかなり自由な性格だそう。

 会うのは初めてだし、ずっと挨拶もしたいと思っていたので会えるのは嬉しいのだが……問題は、何故かそこに通りかかったガイルが「自分の子供の婚約者となると、恐らく私よりも厳しい」と言っていたこと。多分、きっと、恐らく、大丈夫……だといいなぁ、と、実際に見ていないからなんとも言えないのだが。最悪駆け落ちでもなんでもする所存のユウシアである。

 閑話休題。

 ディルクの方だが、彼も彼でハイドと同じように、そしてそちらよりオープンにシスコンらしく。というか、母の子供好きを受け継いだのか、弟妹全員大好き、もちろん子供も大好きな性格だとか。こちらはガイル曰く「ディルクはリルの幸せを素直に祝福してくれるだろう。妹が認めた者を頭ごなしに否定するタイプではない。……もちろんエリザもそうなのだが、何分第一印象で決めがちでな……いや、ユウシア君なら問題ないだろう」と。エリザベートに関することが多かったようにも思えるが、ともかくディルクは大丈夫。少し安心である。

 そんな子供好き、それに関連して心優しいというディルク。頭もよく、腕も立つ。政治的に必要な汚れた部分もしっかり理解した上で受け入れている――という、時期国王が半ば決定している存在であるそうな。王位継承権第三位という、十分に玉座を狙える位置にいるハイドが騎士として過ごしているのも、次の王はディルクだと確信しているからだという。他の王子達もそんな様子で、各々好きなことに打ち込んでいるとも、ユウシアはその時に聞いていた。

 それを思い出しながら、ユウシアは口を開く。


「そうか……それじゃあ是非挨拶したいな、二人とも。今その二人はどこに――」

「その必要はないわ!」

「うおっ!?」


 バァンッ! と大きな音とともに開けられた扉。その向こうには二人の影が。フィルによく似た赤髪の、今声を上げたと思しき女性に、その後ろに小さく苦笑しながら立つ、こちらはオレンジに近い色の髪をした男性。

 ズカズカと入ってきて、再び声を上げようと口を開くその女性に、ユウシアは口に指を当て、無言で「静かに」と伝える。


「……すみません、いきなり。でも今、彼女が寝ているので」

「……あら」


 女性は、それを見て眉を上げる。そこではリルが、先程の音のせいかどこか顔を顰めながら眠っていた。


「ごめんなさい、気付かなかったわ。なら、静かにお話しましょう?」

「……えっと、はい。……あの、それで……失礼ですが、どちら様で?」

「うふふ、聞いてくれると思っていたわ」


 そう言うと女性は、胸に手を当て、どこか得意気な表情で、


「私はエリザベートよ。娘達がいつも世話になっているわね、ユウシア。ガイルの手紙で知ってから、ずっと会いたかったのよ! ――それとフィル、お久しぶり」

「私はついでか、母上。……まぁいいか、久しぶり。ディルク兄上もな」

「うん。久しぶり、フィル。会いたかったよ。……もちろん君にもね、ユウシア君」


 ニッコリと笑うのは、先程の男性――ディルク。

 ユウシアは、なんの心構えもないまま義母(仮)と義兄(仮)に囲まれ、盛大に顔を引き攣らせるのだった。

 久しぶりで勝手を忘れた結果、結構説明が多くなったような……。多分、本文中での人物の紹介としては、私の作品の中でもトップクラスの長さだと思います。下手したら登場人物紹介パートよりも長い。

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