押し付け
お久しぶりです。短いです。
当然のように美味しかったリルの料理を食べた、その翌日。
「食料を確保出来たのはいいけど、ずっと肉オンリーは辛いよなぁ……」
「そうですわね……昨日は私達が採ってきた野草で付け合せを作りましたが、もう残っていませんし、いつもそう都合よく見つかるとも限りません」
ユウシアとリルは、今後の食事についての相談をしていた。……テントの中で、暖まりながら。
(……これ、ここに来た意味ない? ……まぁいいや)
環境に適応するためにわざわざ雪山にまでやって来たはずなのに、こんなぬっくぬくしていていいのだろうか――いや、きっといいのだろう。と、ユウシアは自己完結した。
「んー……ちゃんとした生息地でも見つかればいいんだけど、少し厳しいか?」
「昨日見つけたものも全てバラバラの場所にありましたから……このような過酷な場所にあるとは思えませんわ」
「……バランスの取れた食事って、いいものだったんだな」
「あの、まだ達観するには早くないですか……?」
早い。
「まぁいいや、なんとかなるでしょ」
「いや、思考放棄も早くありません……?」
早い。とても。
「よーし、暇だし遊ぼっかなー」
「切り替えもはっやーい……」
はっやーい。とても、とっても。
「まぁ、冗談はさておくとして……皆に混ざるとしようか?」
「皆様に、ですか? そういえば、皆様は何をしていらっしゃるのです?」
「ん、あぁ、先生が話す前に連れてきちゃったから、分かんないか。ほら、ここに来た第一目標は、過酷な環境に慣れるためなんだけどさ、流石にずっとサバイバル生活だけしてればいいって訳でもないんだ。俺達は、騎士になるために、なった時のためにこうしてここに来ている。と、いう訳で、まずはマッピングをするんだそうだ」
「マッピング……ですか?」
「そう。魔の森でフィルや先輩にもした話だけど、やっぱり地形の把握っていうのは大事だ。俺や二人みたいに覚えるだけでもいいけど、地図という目に見える形に直せば、その場にいる人はもちろん、そこに来たことのない人にもそこがどんな場所かが伝わる。それに、複数人で作ることで情報のすり合わせも出来るし、その人数分だけ視野も広がることになる。以上が俺の思うマッピングの利点。これこそ、人によって感じ方、考え方も違うけどな。……あと、ここでそれをやる利点としては、単純に足場の悪い中探索する練習っていうのもあるかな。まぁ、それは昨日の食材探しも同じだったけど」
「ユウシア様……既に大凡把握しているのですか?」
「ん? この修学旅行の内容について? それだったら昨日先生に大体説明されたから。最終日の予定まで、事細かに。……多分あの人、面倒な雑務は俺に押し付けてサボるつもりなんだろうなぁ。まぁ、そうはさせないけど」
ユウシア、悪そうにニヤリと笑う。……実際、昨日説明された段階で今日の監督役を押し付けられそうになったのだが、「リルと食糧事情について話したいから」と断ったのだ。いつの間にか食事全般の担当になっていたリルである。
「さて、それじゃあ俺は……えっと、逃げ切れなかった山頂部のマッピングに……」
「……それだけは、押し付けられてしまったのですね……」
「あはは……」
どこか乾いた笑いを漏らすユウシアであった。
あっついんだけど。