チーム分け
エルナの声に合わせ、姿を現した少女達。――彼女達の水着姿が素晴らしいのは、もはや自明の理なので置いておこう。とりあえず、医務室に搬送される人が数名いたとだけ言っておく。原因は貧血による失神だ。でもって、貧血の原因は鼻血である。大量の。その原因は――言わずもがなだろう。
『ふふんっ、この程度で倒れるなんてまだまだですね!』
一番最初に赤い幸福を噴出した人が何か言っている。
『このあとが本番なのに、見られないだなんてなんてもったいない! 安心してください、あなた達の分まで楽しんでおきますから!』
実況、変えた方がいいのではないか、と思うユウシア。この人は色々と危ない。
『さてさて、それでは早速チーム分けと行きましょう! えっとですね、海とか関係ないビーチバレー的なの、って言いましたけど、実際ルールは普通のバレーボール準拠なので、人数は一チーム六人+交代一人の七人となります! それを四チームで二十八人! これで丁度ですね! ちなみにくじはこちら!』
と言ってエルナが取り出したのは、腕を入れる穴が開いているだけの、なんの変哲もない箱。
『この中に入っている紙に、A~Dの文字が書いてあります! 言わなくても分かるとは思いますが、Aを引けばAチーム、Bを引けばBチームですね! 試合の組み合わせですが、A対B、C対Dから行います! では、エントリーナンバー順に並んでください!』
実にシンプルで分かりやすい分け方である。
エルナの指示に従い、出場者達が並んで次々にくじを引いていく。
『Cチーム!』
『Dチーム!』
『Dチーム!』
『Aチーム!』
『Aチーム!』
『Aチーム!』
『Cチーム!』
++++++++++
『C!』
『D!』
『A!』
『D!』
『D!』
『A!』
『Cうんちょっと待って?』
残り七人――イザベラ、シオン、アヤ、シェリア、ニーナ、リリアナ、リルのみとなり。
エルナは、思わず流れを止めてしまう。
「どうされました?」
次に引くはずだったイザベラが、目の前のエルナに小さく首を傾げる。
『はぅっ、綺麗……じゃない! ……えっと、まだBチームが一回も出てない気がするのは私だけですか? A、C、Dチームが既に出来上がってしまっているように見えるのは私だけですかっ!?』
「……奇遇ですね、エルナ先生。私もそう思っていたところです」
と言いながら、くじを適当に引くイザベラ。――やはりというかなんというか、引かれたのは、
『……Bですね』
「そうですね……まだ誰もいない」
「時にはそんな偶然だってあるでしょう。――ふむ、やはりBチームですか」
いつの間にかいたシオン、話しながらくじを引く。エルナとイザベラが驚きで固まっているが、気にしない、気にしない。
「……シオン、急に現れるのはやめなさいと何度も……」
と、慣れたようにシオンを注意するイザベラ。
「ユウシアさんにもよく言われますが、染み付いた癖はどうしようもないんですよ」
それにシオンはため息混じりに答える。
――どこか親しげなこの二人、実は同級生、というかクラスメイトなのだが、繋がりはそれだけではない。
シオンの実家であるアサギリ家。国の暗部を一手に引き受ける暗殺一家である他にも、伯爵家としての顔も持つのだが――イザベラの実家、フォルベーナ家も同じ爵位を持ち、更にこちらは諜報部隊としての顔も持っていた。
表と裏、互いに似たような顔を持つこの二家。アサギリ家は標的の情報を得るため、フォルベーナ家は国にとっての危険人物の排除を直接依頼するため、深い繋がりを持っていた。
当然仲もよく、シオンとイザベラも幼い頃よりよく会うことがあった。いわゆる幼馴染というやつ。気心の知れた仲なのだ。
閑話休題。
イザベラはシオンの直す気のあまりなさそうな態度に、苦笑して肩を竦める。
「ほら、シオン。次の邪魔になるから行くわよ」
「えぇ」
イザベラの言葉にシオンが頷き、Bチームの場所へと向かう。
次、アヤだが――
「……これ、引く意味あるんですかね?」
『言わないでください。あと一応引いてください』
「はーい」
当然、B。
シェリアもB、ニーナもB、リリアナもB。リルも――
「B、ですわね。……Bチーム、全員Sクラスのような気がするのですが……大丈夫なのでしょうか?」
『大丈夫じゃないと思います。でもどうしようもないんで諦めましょう』
パワーバランスなんてなかった。
『さ、もうさっさと行きましょう! Aチーム対Bチームの試合は十分後に行います! 選手の皆さんは、体を暖めるなり作戦会議をするなり自由に使ってください!』
結構前だけど、評価のやり方を知らない人が結構いるみたいなのをちらっと見た気がするので。
このちょっと下らへんにあります。評価したかったけどやり方知らなかった! みたいな人は是非。最悪、他の誰かの作品でもいいんで評価してあげてください。