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契約精霊

『なんか、なんだろうこの感じ! 地味っぽかったのに! 最初物凄く地味っぽかったのに凄かった! 最後の最後で魅せてきましたね! シオンさんもシオンさんでこう、何て言うんですか? 安定感? そう、予想を裏切らない感じ! 分かりますかね? 分かりますよね! むしろ分かれ!』

 なんという横暴な実況か。……いやまぁ、分かるかと聞かれれば、分かる、と答える他ないのだが。

『ふっふっふ……次からもこの、いや、これ以上のクオリティを求めたいところですね!』

(プレッシャーをかけるでない実況)

 ユウシアの口調がおかしなことになっている。

『はてさてそんな訳で続いては……まぁ皆分かってるか。ドン! シェリア・リィル!』

 どこまでも軽ーい紹介と共に現れる――なんとなく、どことなくげんなりした様子のシェリア。

「特技。…………特技……」

 ……というか、何やら虚ろな瞳でブツブツと呟いている。そして、それをしっかりキャッチする、ユウシアの優秀な聴覚。【五感強化】は、若干抑えつつも常時発動中である。

(あれ、特技魔法って言ってなかった? ……披露するような魔法がない、とかか? いやでも、シェリアの戦う姿は美しさすら感じるとかなんとかどこかで聞いたと思うんだけどなぁ……)

 あくまで、風の噂的なあれではあるが。ただ、彼女が魔法を使い美しく戦う姿は、とても容易に想像出来た。……まぁ、リルには敵わないだろうけど、なんて思ってしまうのは、ユウシアがユウシアだからである。仕方のないことなのだ。

 そんな馬鹿な想像はさておき、シェリアは一頻り考えたあと、詠唱を開始する。

「『繋ぐは氷、氷の精霊。其は何よりも気高く、何よりも尊き女王なり。総ての氷を司り、絶対零度を以て全てを断罪する者なり。我と契約せし女王よ、我が声に応え、今ここに姿を現さん』〔サモン・アイシクル・クイーン〕」

 詠唱を終えた途端、ステージ上で巻き起こる猛吹雪。

「っ……!」

 ユウシアは思わず目を覆ってしまう。

 そして、吹雪が収まり、視界が回復するとそこには――

「……あら。これはこれは、また多くのヒトが……シェリア、一体どういう用件です?」

「ん……特に用件という訳ではないわ。けど、魔法を見せろって言うから……」

「全く……私は見世物ではないのですよ?」

「分かってる……けど、あなた以上に美しい魔法を私は知らない」

「…………仕方ないですね。今回は乗ってあげましょう」

 そう、シェリアとどこか気心の知れたやりとりをするのは、白銀に透き通る長髪と、抜けるような白い肌を持った美女。

 彼女は小さくため息を吐くと、こちらを向いて優雅に一礼する。

「初めまして、ヒトの子らよ。私は氷の女王・オリガ。シェリアの契約精霊です」

 その言葉にざわつく会場。

 魔法を使うときの媒介となる精霊は、強大な力を持つとごく稀に、自我を持つことがある。もしも自我を持った精霊と出会い、心を通わせることが出来たなら、その精霊はとても強い味方になってくれるだろう。――が、まず自我を持つ精霊自体がレア中のレア、ほとんどいない上に、精霊は自我を持つと基本的に人に力を貸さなくなる。その理由は判明してはいないが、人間にはその強大な力を扱いきれないからだとか、人間ごときに力を貸すことが馬鹿馬鹿しくなったからだろうとか諸説あるが、何分サンプルが少なすぎるため、解明には至っていないとかなんとか。

 ともあれ、とりあえずそんな訳で、心を通わせ契約した精霊を呼び出す〔サモン〕は、その魔法自体がレアなのだ。更には、シェリアの詠唱の内容やオリガという名らしい精霊の口ぶり、オリガ自身の気配からすると、彼女はその自我を持つ精霊の中でも特に強い力を持つらしい。

(……何故それを、武闘大会でやらなかったのか……)

 そう疑問に思うユウシア。ここまで強力な助っ人がいるのなら、少なくとも予選程度なら楽に突破出来ただろう。

 そんな考えを見抜いた訳でもないだろうが、オリガとシェリアが話を続ける。

「……それにしても、まさか初仕事が見世物だとは思いませんでしたよ、シェリア? これではなんのためにこの一ヶ月必死に修行したのか分かりませんね」

「それは……仕方ないわ。一番の見せ場になるところは夏休み前に終わっちゃったから」

「武闘大会なるものがあったのでしたね。そのときに私を召喚出来ていれば……全く、我が契約者ながら不甲斐ない」

 どうやら、武闘大会のときはまだ〔サモン〕を使えなかったらしい。精霊と契約するだけではなく、その魔法自体も高難度なのだろう。

「だって……いえ、いいわ。とにかく、魔法の披露はこのくらいでいいわよね」

 そう言って、チラ、とエルナを見るシェリア。エルナはコクリと頷くと、

『いやぁ、素晴らしい目の保養になりましたね! 綺麗×美しいとか最高かよ! という訳で、シェリアさんでしたー!』

 その言葉に、拍手をしつつも思わずジト目を向けてしまうユウシアであった。

 ……あの、シェリアさん、お一人で尺取りすぎじゃないっすか……?

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