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ジャグリング

『ま、ず、は! 参加者の皆さんに自己PRをしていただきます! PR内容はなんでもよし! 名前、誕生日、好きなものに趣味特技、身長体重スリーサイズ! ここで出したのはあくまで一例です! 言いたくなければ言わなくてもいいし、他にアピールポイントがあるならじゃんじゃか出しちゃってください! ――あ、でも、特技を披露するのは少し待ってくださいね! 後で特技審査あるので!』

 と、捲し立てるように言うエルナ。それを聞いて、参加者達はコクリと頷く。

『では! 早速いってもらいましょう! エントリーナンバー一番、メイさん、お願いします――』


++++++++++


『――はい、ありがとうございます! ……これで全員分終わりましたかね? 大丈夫ですか、忘れられちゃったよって人いませんか?』

 と、参加者を見て問いかけるエルナ。見たところ、全員気のすむまで話したようだ。

 ……それにしても、と、ユウシアは考える。

(中々凄かったなぁ……身長はまだしも、エルナ先生が言ってた体重やスリーサイズまで当然のように話す人いるんだもん。プライバシーも何もあったもんじゃない……それに、言ってる人大体何故か必死そうだったし……)

 どこか目が血走っているようにも見えたユウシアである。……あれは、怖かった。

(でもやっぱ、何より凄かったのはリルだよな)

 ユウシアの思考回路はリルが中心になっているらしい。何を考えていても、どこをどうやってかリルの話題に帰結するのだ。ユウシア、もしもリルに振られでもしたら――万に一つもないだろうが――ショック死するんじゃなかろうか。

 ちなみに、リルの何が凄かったか、というと。

 自己PRのとき、彼女はこう言ったのだ。

「体重とスリーサイズは――」

 と、前置きし、「まさか言うのか? 王女様、言っちゃうのか!?」と興奮気味の観客達に向かって、

「うふふっ……女の子の秘密、ですわ」

 そう、少し恥ずかしそうに、台詞は媚びたようなものだというのにそんなこと態度にはこれっぽっちも出さずに。

 ユウシアの隣の三人組は、口を揃えて言っていた。

「「「天使だ」」」

 と。ユウシアは深く頷いておいた。

 と、ユウシアがそれを思い出していた間にコンテストは進み、先程エルナが言っていた特技審査、シオンの番だ。エルナの言う「目玉の子達」は何故か終盤に固められていたので、ここからはほぼ知り合いのみ――いや、イザベラは見逃してしまったようなので知り合いのみになるだろう。

 そう考えている間に、シオンの特技披露の準備が整ったらしい。壇上には、一直線に並べられた十個程の藁人形。そしてその先には、何故かヴェルムが、頭にリンゴを乗せ、猿轡を嵌められた状態で椅子に縛り付けられている。涙目で何かを訴えているが、残念、少なくともユウシアには聞こえなかったし、これから聞こえる予定もない。

 そして、藁人形を挟むようにして反対側に立つのはシオン。腰に大太刀を差した状態で、目を閉じている。

 それを見て、シオンがやろうとしていることを悟ったユウシア。彼は思った。先生、ドンマイ、と。ついでにちょびっとだけ、ザマァ、と。

「――行きます」

 シオンは小さく、しかし何故かよく通る声で言うと、大太刀に手を携え――

(速い……!)

 きっと、ここにいるほとんどの人間には消えたように見えただろう。それだけの速度で、シオンはヴェルムのいる先までを一気に駆け抜け、その一瞬の間に間にある藁人形とヴェルムが乗せているリンゴを一刀両断してみせた。

 華やかさも、可愛らしさもない。だがそれはとても美しく見えた。

 巻き起こる拍手の中、シオンはクールに一礼すると去っていく。

 それと入れ替わるようにして現れたのはアヤだ。彼女は会場を包む嵐にギョッと目を丸くし、シオンが去っていった方を見ると苦笑する。

「うえー、この中でやるのかぁ……」

 苦々しげに呟くアヤ。……彼女、先程の自己PRの際に、特技は芸だとか言っていたのだが……大丈夫だろうか。色々な意味で。

(魔法にしておけばよかったのに……【芸達者】持ってるし間違ってはいないけどさ)

 なんて思うユウシアだが、時すでに遅し。アヤは申し訳程度の魔法要素で〔アイス・ブレイド・ダンス〕を使うと――生まれた五本程の氷剣を掴み、ジャグリングし始めた。

 申し訳程度に起こる拍手。

「ふふふ……まぁまぁ、これからだよ」

 なんて、ニヤニヤと笑いながら言うアヤ。彼女はもう一度魔法を使い、氷剣を倍の十本に増やす。

(普通に凄い)

 特に魔力の流れなんかは感じられないので、魔法で操っているわけではないようだ。純粋に氷剣の生成のみにしか魔法は使っていない。

 なんて思っている間にも、氷剣は次々に増えていき、いつしかその数は五十を超える程に。なんかもう、何がどうなっているのかさっぱり分からない。とりあえず、数の問題かジャグリングの最高地点が無駄に高い。

「む、流石にちょっと辛い……それじゃあ、そろそろフィニッシュ!」

 そう言うとアヤは、投げた氷剣を操作して空中で止めていき、氷剣の集まる中心で〔エアロ・ボム〕を発動する。その衝撃で氷剣は砕けちり、降り注ぐ氷の破片。太陽の光を反射してキラキラと輝くそれはとても綺麗だ。

「ありがとうございましたー!」

 元気に頭を下げるアヤ。

 先程にも負けない程の拍手が巻き起こった。

 待って、本気でこれ終わらない。……いや、ミスターコンはほぼ全カットの予定だから丁度いいぐらいか?

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