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“元”暗殺者の転生譚!  作者: 浅野陽翔
オーブ集めの旅へ
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アサシンウルフ

 このシリーズでも、やっと戦闘シーンですよ。そうは呼べない程描写少ないし、すぐ終わるけど。

 その日の夜。

「――囲まれた」

「えっ?」

 野営のためのテントを張り、その横で火を焚いて、近くの川で捕った魚を焼いて食べた二人。

 腹を満たし、のんびりしていたところで、ユウシアがおもむろに立ち上がり、そんなことを言った。

 不思議そうな顔をしてユウシアを見るアヤを尻目に、ユウシアは周囲をゆっくりと睥睨する。

「……ユウ君?」

「魔獣の群れだ」

「なっ……」

 再び不思議そうに声をかけてきたアヤに、端的に状況を伝えるユウシア。状況を認識したアヤは、思わず絶句する。

「数は……十三、かな。気配はそこまで大きくないけど、あまり気を張っていなかったとはいえ【第六感】で気づけなかったってことは……多分、アサシンウルフだ」

 アサシンウルフ。宵闇に溶け込むような黒い体毛をした狼の魔獣だ。夜行性で、日中は巣穴で眠っていることが多い。戦闘力こそ高くないものの、常に群れで行動し、気配を消すことに長けている魔獣であり、野営時に、最も注意すべき魔獣の一体に数えられている。

「ユウ君……十三体って、大丈夫なの……?」

 心配そうに聞いてくるアヤに、ユウシアは微笑んで答える。

「大丈夫。あの森・・・にいた魔獣達に比べれば、こんなの屁でもないさ」

 そう言いながらユウシアは、いかにも旅装といった見た目のマントの陰から短剣を取り出す。大して良くもなく、かといって悪くもない、ごくごく普通の短剣。だがユウシアは、これを使って凶悪な魔獣を何体も狩ってきたのだ。

 ユウシアが短剣を構えると同時、数体のアサシンウルフが飛びかかってくる。既に気づかれていることを悟り、強攻策に出たのだろう。

 アサシンウルフがユウシアとすれ違うたび、鮮血が舞う。

 ユウシアは軽く短剣を振るうだけ。それだけで、アサシンウルフの急所を的確に突いていく。

「仮にも暗殺者アサシンの名を冠するのなら、常に冷静でいないと。気づかれたのなら一旦引いて、また機を待つ。それが正しいやり方だ」

 魔獣相手に説教をしながら、一体、また一体と斬り、突き、抉る。命を奪うその動きに躊躇はない。

「――ラスト」

 そう呟いたユウシアは、言葉通り最後の一体であるアサシンウルフを殺さずに、足の腱を断つ。

「……さて、アヤ」

「へっ?」

 その虐殺劇を見ないようにと目を瞑っていたアヤだが、いきなりユウシアに呼ばれ、素っ頓狂な声を上げてそちらを見る。

「せっかくだから、スキルの確認しようか。【魔導の極致】。気になんない?」

「って、言われても……私、魔法とか何も知らないんだけど……」

「あー……そっか、それは考えてなかったな……。どうしよう?」

「いや、私に聞かれても……」

 困ったように考える二人。周りの魔獣の死体は、いつの間にか消えている。

 ユウシア達は無視していたが、これも魔獣によるもの。地中に住むタイプの魔獣が、上にある生物の死体に気づき、自分の住処へと引きずり込んだのだ。自然の摂理である。

 閑話休題。

「んー……俺も魔法は使えないから、教えるってことも見せるってことも出来ないんだよな……」

 考えながらユウシアが漏らしたその呟きに、アヤが意外そうな目を向ける。

「え? ユウ君、魔法使えないの?」

「何でそんな意外そうなのさ……」

「ユウ君なら何でも出来そうだったから?」

「そんな訳ないじゃん……」

 当然のように言い放つアヤに、ユウシアが呆れたように言う。

「魔力は馬鹿みたいに多いけど、魔法の才能が悲しい程にないらしい」

「宝の持ち腐れ?」

「そういうことだな。残念ながら」

 本当に残念そうに肩を落とすユウシア。しかしすぐに立ち直り、少し考えるようにしながら口を開く。

「多分、ラウラの力があるからいけると思うんだけど……俺にも調べられるか、試してみてもいい?」

「うん」

 許可をもらったユウシアは、ラウラにされたようにアヤの額に触れる。そしてそのまま、どうすればいいのかよく分からないので、魔法、魔法、と念じてみる。

 と、そんな雑な感じでも出来たようで。

 ユウシアの頭の中に、アヤの魔法に関する情報が流れ込んでくる。

 それを確認した途端、複雑な表情になるユウシア。

「どうしたの? ちゃんと出来た?」

 問いかけてくるアヤに、ぎこちなく頷く。

「うん。まぁ、出来たんだけど……」

「じゃあ、何でそんな顔してるの? ダメダメだったりする?」

 ユウシアは、そんなことはないんだけど、と首を振って続ける。

「魔法適性は、【魔導の極致】を持ってるだけあって、相当高いかな。他の人のを知らないから断言は出来ないけど、スキルの説明を信じるなら、多分常人の数十倍は軽く超えてる」

 ユウシアのその説明に、嬉しそうにガッツポーズをするアヤ。

「――でも」

 しかし続く言葉に、動きを止める。

「魔力がほとんどない。多分、初歩中の初歩みたいな魔法でも、一回しか使えないんじゃないかな」

「何でユウ君と真逆なの!?」

「そんなこと言われても……ん? 真逆……?」

 アヤの言葉から何かを思いついたかのように首を傾げるユウシア。そのまま目を閉じて少し考え、口を開く。

「魔力を渡せるような道具――魔石なり魔導具アーティファクトなりがあれば……」

 ユウシアのその言葉を聞いてアヤも彼が何が言いたいのか分かったようで、興奮気味に声を上げる。

「ユウ君の無駄に多い魔力をもらって、私も魔法使えるねっ!」

「無駄は余計だけど、まぁ、そうなるね」

 アヤの推測をユウシアが首肯すると、未だ興奮状態のアヤがユウシアの手を引っ張る。

「そうとなれば善は急げ! 早くセリドに行って、そういう道具を探そうよ!!」

「夜が明けたらな。明日には着くから」

「はーい……」

 しょんぼりとしながらテントに入っていくアヤを見ながらも、見張りとして残――

「……あっ、こいつ忘れてた。ほっ」

「キャインッ!」

 ……見張りとして残るユウシアであった。

 説明回(?)はこれで終わり! 多分! そろそろ物語が動――く、って程動かないかな。しかし、そろそろ新ヒロインが出る予感……。

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