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インテリメガネ

 どうも。一日ぶりです。こっちしか読んでない人は二日ぶり。いやね、忙しくって。うん、ごめんなさい。

 え? ストックはどうしたって? はっはストックあったのなんていつだよオイ。欲しいわ。

 さて。

 お化け屋敷を出たユウシア達、今度はミニゲームセンター的な、もっと言うと縁日的な出し物をしているクラスにやって来ていた。その名も「レッド・レゾリューション」。なんかカッコいい感じではあるが……。

(赤……覚悟……まさか、赤字覚悟なんて言うんじゃないだろうな……)

 残念、正解である。

 まぁ、一応ゲームをするのにお金を取られるのだが、クリアした時に得られる景品が、無駄に豪華なのだ。希少な魔獣の素材だったり、高級食材だったり、貴重な魔導具アーティファクトだったり……騎士学校なだけあって、武器やなんかまで置いてある。

 と、そんな中。

「……あ、あれ……」

 と、リルが一つの景品を指差す。

 その先にあったのは、シンプルな木製の、しかしその先端には美しい水色の宝石が埋め込まれた短杖。

「……あれは?」

 それを見て、リルに問いかけるユウシア。それに彼女は、短杖から視線を外さずに、半ば独り言のように答える。

「……見ただけで分かります。おそらくあれは、魔力との親和性が非常に高いユーフィリティアの木の枝から削り出した物……先端の宝石は、水属性の魔力を飛躍的に高めるアクエルでしょうか……それに、製作者自身の技量も相当……いえ、あの紋章は……! 魔導具アーティファクト製作に関して今後これ以上は現れないとされる逸材、ウォズマ・フラスタインの……!?」

「……ええと、つまり?」

「…………わたくし達王族ですら、手に入れるのは難しい……いえ、目にかかることすら出来ないかもしれない程の……最高級の短杖、ですわ」

「そんなものが、景品に?」

わたくしの見立てが、間違えていなければ」

「おおう……」

 ゆっくりと頷くリルに、ユウシアは感心を通り越して呆れ気味の声を出してしまう。そりゃあ、そんなもの置けば赤字覚悟も当然である。というか、よく予算足りたな。何があった。

「ほう、よく知っているじゃないか」

 と、そんな二人に後ろから声をかけてくる者が。振り返るとそこには、眼鏡をかけた、いかにもインテリっぽい男が立っていた。

「誰かインテリメガネだ!」

「心の声がっ!?」

 今日イチの驚き。

「……ごほん、失礼。僕はルイン・テーリ。名前に入っているからといってインテリと言われるのはあまり好きではないから、そこは注意してほしい。ちなみに、このクラスのリーダーなんてものを押し付けられている。初めまして、ユウシア君」

「あれ、俺の名前を?」

「それは知っているさ。君は今、この学校で最も有名と言っても過言ではない。そちらの彼女は初めて見るが……君の恋人か何かかな?」

 と、リルを見るルイン。【偽装】により姿を変えているので、第一王女だとはバレていないのだ。

「えぇ……まぁ、そんなところですけど……」

「ふむ……何か事情があるのかな? なるほど、一応このことは胸の内に留めておくとしよう」

(何だこの人、無駄に察しがいい)

 ユウシアの好感度が少し上昇した。

 と、そんなことはどうでもいいとばかりに、リルがルインに話しかける。

「あの……先程、『よく知っている』と……ということは、つまり」

 それにルインは頷くと、

「ご想像の通り、あれはウォズマ氏の作品だ。素材についてもご名答。水属性を得意とする魔術師であれば、あれ以上の杖はないだろう」

「お高いんでしょう?」

「そうだな、ざっと聖金貨で十枚といったところか」

「ぶふっ」

 若干ふざけつつ聞いたユウシア、その答えに思わず吹き出す。

 平民ではまずお目にかかれない聖金貨、それを十枚も。またもふたり暮らしの夫婦換算になるが、百年生きていける。もちろん、寿命は考えずに、だが。ひとり暮らしだったら死ぬまで遊んで生きられるのではないだろうか。

「そんなものどうやって……と、思っただろう? 実は、ここにある景品のほぼ全ては買った物ではなく自分達で発見したり採集した物なんだ。実質仕入れ値はゼロということになる。赤字覚悟とは言うが、それはあくまで商品価値がそれだけあるということだ」

「はぁー……」

 感心したような声を漏らすユウシア。

「それは凄い……なぁ、リ」

 リルの方を向きながら、そういえば名前出せないじゃん、と途中で止まるユウシア。だが、わざわざ名前を呼ぶ必要もなかったらしい。

「…………」

 何故なら、リルはこちらにはこれっぽっちも意識を向けずに、ただただうっとりとした目で短杖を見つめていたのだから。

「……欲しい?」

 今度は、こちらに意識を向けさせるため手を軽く握ってやりながら問いかけるユウシア。

「えっ? あ、え、ええと、その……はい」

 小さな声で、小さな動きで頷くリル。

「そっか。……ルインさん、あれ、どうすれば貰えます?」

「ほう、あれを取る気か。あれはこの店でも最高の景品だ。ここにあるゲームを全て、最高得点でクリアした上で、その中で一つも記録が更新されなければ、学園祭終了後、必ず進呈しよう」

「全てのゲームで最高得点……ですね。分かりました」

 ユウシアは、多分これまでの――前世を含めた人生で、最も本気を出す。全ては、愛する彼女のため。

 このリア充めが。

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