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親バカ

「あぁ……もう、死んでもいい」

 運ばれてきた料理を綺麗に平らげ、ガイルはそんなことを言い出す。

「いやいやいや、なんで急にそうなるんですか……」

 思わずツッコむユウシア。確かに美味しいし、“娘の手料理”という事実が更にその価値を引き上げたのも、まぁ、分からないでもない。だが、さすがにそこまでは――

「……妹の給仕で、妹の手料理を食べる……こんな幸福があるだろうか」

「隠せよ! シスコン隠せよ! 初めて会った頃の硬い感じはなんだったんだよ!」

 ――あるらしい。仮にも王子相手に雑な口調でツッコむユウシアに店員と客の視線が集まるが、当のハイドが全く気にしていないのを見て、仕事や食事に戻る。それでいいのか。

「あぁ……リリアナ、立派になって……」

「ラムルさんに至ってはもうキャラが分からないよ!」

 この人は一体どんなキャラで通したいのだろう。とりあえず親バカであることは確定していいと思う。

「……いや、しかし、まさかリルの料理の腕がここまでとはな。小さな頃から練習していたのは知っていたし、その頃は味見させてもらったりもしていたものだが、最近はそういったこともなかったからなぁ……。こう言っては何だが、王城の専属の料理人を超えていると思うぞ」

 と、リルの料理の腕を絶賛するガイル。ハイドやラムルも頷いている。今彼女は調理のためここにはいないが、後で時間があったら伝えておこうか、とユウシアは考える。きっと喜ぶだろう。少し照れているところまで目に浮かぶ。

(可愛い)

 想像で愛を再確認するユウシア。最早手遅れか。病気レベルである。

 閑話休題。

 ガイルは、そんなユウシアの考えを見抜いたかのように一瞬苦笑すると立ち上がる。

「さて、それでは私達はそろそろ失礼しようか。どうやら既に満席のようだし、いつまでも占領する訳にもいかんからな。それに、私達がいては他の客もゆっくり出来ないだろう」

「そうですね。リリアナの仕事っぷりをもう少し見ていたいところではありますが、お暇しましょうか」

「ユウシア、俺もエキシビションマッチには参加することになっている。その時はよろしく頼むぞ」

 ガイルに続くように、ラムル、ハイドがそれぞれの言葉と共に立ち上がる。ハイドのエキシビションマッチ参加は普通に初耳である。

「そうですか。では、引き続き学園祭をお楽しみ下さい。――行ってらっしゃいませ、旦那様方」

「うむ」

 店員モードで見送りの言葉をかけるユウシアに、ガイルは満足げに頷くと、教室みせを出て行った。


++++++++++


 それからしばらく。

「ユウシア、そろそろ交代だ」

 戻ってきたゼルトが、ユウシアにそう声をかける。

「ん? あぁ、もうか」

 仕事をしていると――それが忙しいと特に、時が経つのはあっという間なもので。ラインハルト達の宣伝の効果か、彼らが戻ってきても尚、客足は減るどころか増え続け、お昼時の今など外には行列が出来ている有様だ。

「……いや、ある程度落ち着くまでは俺も残るよ」

「確かに客も多いが、店員が増えたからと言って回転率が上がる訳ではないだろう。多すぎる店員など却って邪魔なだけだ」

「それもそうか……分かった、後は任せる」

「あぁ」

 既に着替えているゼルトに仕事を任せ、自分は制服に着替える――ことはなく、宣伝も兼ねてこの格好のまま外へ。途絶えることのない客足に小さく笑いながら、邪魔にならない場所に立つ。

 そうして数分。

 逆ナンパを軽くあしらっていた――本当に逆ナンパなんてものがあるとは思っていなかった――ユウシアのもとへ駆け寄ってくる人影が。

「申し訳ございません、ユウシア様! お待たせしてしまいましたか?」

 リルだ。彼女もメイド服から着替えていない。

「いや、俺も今来たばっかだよ」

 実際は数分経っているが、このやりとりは定番だろう。

「そうですか、良かった……」

 ホッと息を吐くリル。ユウシアはそんな彼女の頭に手を置く。

「ユ、ユウシア様?」

 突然のその行動に目を白黒させるリル。ユウシアは彼女に構わず撫で始める。

「いや、なんとなく」

 ゆっくりと撫でながら適当に答えるユウシア。いや、事実ではあるのだが。

 突如発生した甘い空気に、通りかかった男二人組がペッと唾を吐くような動作を。もちろん本当にやるようなことはしないが。ちなみに、【偽装】はしっかりしているので、周りからはリルの姿は違って見えているだろう。ユウシアに関しては、別に顔が見られたからと言ってどうということはない。

「あの、ユウシア様、そろそろ……う、嬉しくないことではありませんし、周りの皆様からはわたくしとして認識されていないことは分かっているのですが……その、それでも周囲の視線が……恥ずかしいですわ」

 顔を赤らめ、若干俯きながら言うリル。

「ん、あぁ、そっか。ごめん。それじゃあ、そろそろ行こうか」

 ユウシアは頭を撫でる手を止めると、それをそのままリルに差し出す。

「はい!」

 リルは嬉しそうに笑うと、その手を取った。

 ラムルさんは普通にキャラあんま掴めてないです。だってそう何回も出すつもりなかったし。まだそんなに出てないけど。

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