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強そう

 さてさて。

 それから数日が経過し、メイド服に続いて、執事服の方も完成した。

「ん、俺が試着?」

「えぇ。衣装製作班こっちには男子いないし。こういうときのリーダーでしょう?」

「いや、確かにいつの間にかリーダーにされてたけど、そういうものじゃ……まぁいいか」

 リリアナに完成した服の試着を頼まれたユウシア。彼女の言葉に小さく肩を竦めて返す。

「あとは、人によって着こなし方も違うだろうから、大まかな性格別にあと二人頼んでるわ。まとめて見たいから、これ着たら教室に来なさい」

「了解」

 リリアナはユウシアに服を渡すと、部屋を出ていった。


++++++++++


 それから少しして、執事服を着たユウシアは教室に入る。

 与えられていたのは、まずは基本として、シャツにジャケット、ズボン、革靴。上着の形状はいわゆる燕尾服だ。それから、カラーステイ、ウェストコート、タイ、ポケットチーフ、手袋、そしてモノクル。これらはご自由にどうぞということらしいが、とりあえずユウシアは全装備。モノクルもなんとなくの雰囲気付けだ。もちろん伊達である。

 さて、教室に入ったユウシアを迎える第一声は。

「ふあっ……」

 そんな気の抜ける声。見ると、声の主であるリルが、隣にいたフィルにもたれかかっている。

「……姉上、どうした……?」

「い、いえ……なんでもありませんわ」

「? ……そうか」

 よくは分からないが大丈夫そうなので、ユウシアはとりあえずリリアナの元に歩み寄り――

「ねぇ、なんで皆いるの?」

 微妙に不機嫌そうに問いかける。

 そう。今この教室には、フェルトリバークラスの生徒ほぼ全員が集められていたのだ。こんな大人数に見せるつもりではいなかったのだが……。

「もう作業もほとんど終わって暇だって言うから」

「いや、それにしたって……まぁいいや。それで、問題はない?」

 服を見せるために軽く手を広げて聞くユウシア。リリアナはそんな彼を上から下までじっくり見ると頷く。

「……そうね。燕尾服だから裾のバランスが難しかったんだけど、心配なさそう。モノクルは大丈夫?」

「ん? あぁ」

 モノクルが落ちないか、という質問だと気付き、ユウシアはその場で軽く飛び跳ねる。

「ご覧の通り」

 そう言うユウシアにリリアナは満足げに頷くと、他の面々に感想を求める。

 それにアヤが真っ先に、

「強そう」

 と答える。

「……強そうって……」

「だってほら、モノクルとか凄い強そうな雰囲気出てない?」

「いや、うーん……」

 分かりそうで微妙に分からない。でもちょっと分かる。

 そんなどうでもいい思考をしていると、教室の扉が開く。

「あれ、ゼルト」

 そこから入ってきたのは、ユウシアと同じく執事服を着たゼルトだった。

「ユウシア……お前も実験台にさせられていたか」

「いや、実験台って……」

 うんざりしたように言うゼルトに、ユウシアは苦笑する。

 ゼルトは、ユウシアと同じような組み合わせながらも、おかしくない程度に着崩していた。ちなみにモノクルはない。ユウシアも気分次第で外す気ではいるが。

「なんかちょっと表には出せない仕事とかしてそう」

 相変わらずのアヤのほわっとした感想。

「表には出せない仕事……それは俺よりもユウシアだろう……」

 まぁ、確かに。と頷くユウシア。何せ彼は暗殺者――一応“元”のつもりでいるが――なのだから。ちゃんと貴族の息子の護衛とりまきをしているゼルトとは正反対である。

「うん。とりあえず、ゼルトも問題はなさそうね。あとは彼だけど……」

 頷いたリリアナの言葉に、ユウシアは首を傾げる。

「彼?」

「えぇ。アヤ曰く『イケメン首席』の」

「……あぁ、どこぞのラインとは訳の違う」

「おい! 貴様今私を馬鹿にしたな!? したんだな!?」

「はぁっ……ラインリッヒ様、少しは落ち着きをですね……」

 流れるようにラインリッヒを煽るユウシア、それにあっさり乗っかるラインリッヒ、ため息まじりに窘めるゼルト。そんな彼らを無視して、三度扉が開く。

 その瞬間教室を取り巻く黄色い歓声――は、別にないが。さすがに騎士を目指す者となれば落ち着いている。だが、少なからぬ女子生徒が頬を染める。

 扉から入ってきたのは、言わずと知れたイケメン首席、ラインハルト・グランシス。そんな彼の格好は――

「ホストだ」

 そんなアヤの呟きに、ユウシアは全力で首を縦に振る。

 上着の前は開き、ウェストコートはそもそも着ず、タイも着けずにシャツの上の方のボタンを開け、手袋もない。あとは多分カラーステイもない。モノクルは言わずもがなである。

 そんな、着崩しに着崩したラインハルト君だが、謎に似合っているのだから不思議なものだ。

「いやぁ、あまり窮屈なのは好きじゃないからこうしちゃったけど……平気だったかな?」

 そう、リリアナにニッコリ笑って聞くラインハルト。普通の女子なら、そこで赤面でもしそうなものだが――

「……そうね、いいんじゃないかしら? 多分それで平気なのはあなただけだと思うけど」

 ラインハルトの姿をじっくり見分したあと、リリアナは頷きながらそう答える。そのどこにも動揺は見られない。

「そうか。それならよかったよ」

 それを受けたラインハルトも、至って普通の様子なのだから、彼の言動が別に意識してのことではないことがよく分かる。

(いつだか……っていうかついこの間も、女ったらしだのすけこましだの言われたけど……それ全部ラインハルトに言うべきだよな)

 ユウシアが思ったそれは、多分、口に出せば男子の全員と女子の一部が揃って肯定したことだろう。

 めんどいんで定型文やめました。

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