見ないでぇ
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「アヤ! 連れてきたわよ!」
それから数分して戻ってきたリリアナは、後ろに誰かを連れていた。
その“誰か”はリリアナの背中に隠れてしまっていて見えない……が、それでも脇から覗いているその桃色の髪には見覚えが、というか、ユウシアが見間違えるはずもなく。
「あれ、リル?」
「ひぅっ!?」
リリアナの後ろに隠れたリルは、驚きの声を上げて覗く髪の毛を跳ねさせる。
「……えっと、なんで隠れてるの?」
「み、見ないでください、ユウシア様……今の私を見ないでぇ……」
「一体何が……それにリリアナ、さっき持ってたメイド服は――あっ」
リリアナは先程まで、自分達が来ているものの他に、手にもう一着メイド服を持っていたのだ。今はそれがなく、そしてリルはリリアナの後ろに隠れ、「見るな」と主張している。これはつまり……
「まさかリル……着てるの?」
「っ」
再びリルの髪が跳ねる。
「リルが……リルが、メイド服、だって……? しかもこんな、可愛らしく、そして微妙に際どくデフォルメされたのを……? ……ごめん、リル。超見たい」
「いっ、いけませんわっ! い、いいいくらユウシア様と言えど、こんな格好を見せる訳にはっ……!」
「うん、リルは恥ずかしいだろうけど……でも本気で、見たい。ちょっと抑えられないかもしれない」
そう言う間にも、ユウシアはジリジリと彼女達に近付き、更にはリリアナの体を回り込もうとしている。完全に見る気である。
そんなユウシアに気が付いたリルが声を上げる。
「ユウシア様っ!? 何をしているのですかっ!? そんな、回り込んでまで!」
そう言って、相変わらずリリアナの体を盾にするようにユウシアの反対側を取るリル。ユウシアは構わず後ろに回り込み、それに応じてリルの方も場所を変え――まぁつまりは、ユウシアの他にいた内装班には見られてしまう訳で。
「きゃー! リル様可愛いー!」
「うっそ、こんなに似合うの!? いや、私着るの恥ずかしくなってきたー!」
「なぁっ!? みっ、見ないでくださいーっ!!」
……幸い、と言うべきか、男は基本的に力仕事に駆り出されていてここにはいなかったので、ユウシアより先に他の男に見られてしまうという事態は避けられた訳だが。
女子達に見られたリルは顔を真っ赤にして、腕で体を隠す。
必然動きは止まり、その隙を見逃さないユウシアはもう一度回り込み――
「……おぉ」
メイド姿のリルを見て、小さく声を上げる。
「うっ……み、見られてしまいました……」
それに気が付いたリルが諦めたように項垂れるが、そんなことにはお構いなく。
「超可愛い」
ただ、ボソッと、一言。
「いや、うん。本気で可愛い。え? メイド服って神アイテムだったの? 可愛さ倍増なの?」
その可愛さにユウシア、最早戸惑いのレベルである。
「も、もうよろしいですか、ユウシア様……は、恥ずかしいですわ……」
「ごめんもうちょっとだけ。『お帰りなさいませ、ご主人様』とか言ってくれるともっと嬉しい」
……本気で、日本の――というか秋葉原あたりのメイド喫茶に出没しそうなオタクらしくなってきたユウシアだが、まぁ、仕方のないことだろう。考えてもみて欲しい。もしも、自分の好きな美少女が、フリッフリのメイド服を着て、羞恥心に顔を赤らめていたら――平静を保てる自信があるだろうか。少なくとも、ユウシアには無理だったようだ。
「……そ、それだけ言えば、もう許してくださいますか……?」
涙目で聞くリルに、ユウシアは頷く。
「許すってなんか語弊がある気がするけど、まぁ、うん。やめるって約束する」
「……分かりましたわ。で、では……えぇと、お、お帰りなさいませ、ご、ご主人様……」
「ぐふっ」
ユウシアは血を吐いて倒れた!
「えっ!? ユウシア様!?」
慌てるリルだったが、そんな彼女を連れてきたリリアナと、それを指示したアヤはというと。
「やっぱり、リル様の対ユウシア性能は抜群ね」
「うん。ユウ君にはリルをぶつけておけば大抵勝てるから」
何かを、勝った気になっていた。
「ではリル様、向こうで着替えましょうか」
「え? で、ですが、ユウシア様が……」
「しばらくすれば目覚ますと思うよ。そんなことよりリル、リリアナ、向こうでもうちょっと見せっこしよ! あたしもっと二人のメイド姿見たーい!」
女子三人が、そんな会話をしながら部屋を出て。
「……続き、やりましょう」
アヤが抜けた後、とりあえず内装班のリーダーにされていたシェリアの言葉で、皆もユウシアを無視して仕事に戻り。
「ユウシア、ちょっとこっちを手伝って――何があった」
資材の加工を行っていたゼルトが、全班の助っ人役であるユウシアを呼びに来て、血の中に倒れるユウシアに驚き――普通に作業する皆を見て大したことではないと判断する。
「貸すから……後片付け、よろしく」
「なっ、ちょっ……もう聞いていない……」
が、その直後にシェリアに倒れるユウシアの周りの片付けを押し付けられる。反論しようとしたが、その時には既に仕事に集中している風を出していて全く話を聞く気がない。
「……全く……おい、ユウシア、起きろ」
仕方ないとばかりに、ゼルトはまずユウシアを起こしにかかるのだった。
余談だが、なんだかんだでユウシアはすぐに目を覚まし、片付けも自分でしっかりやったらしい。
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