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会議

 新学期が始まり。

「さて、唐突ですが、毎年恒例、学園祭の時期がやって来ましたよ!」

 教壇に立つヴェルムが、開口一番そんなことを。

「……先生、毎度のことですが、前もって言いましょうよ……で、いつですか?」

「半月後です」

「……普通、もっと前から準備しておくものでしょうに……」

「まぁ、まだ準備を始めていないのはうちのクラスだけちょっと待ちましょうユウシアさん笑いながら拳を握らないでください」

 殴っていいよ、と、クラスメイトのほぼ全員が思った。

「えっと……そう、そうです。ほら、Sクラスである皆さんへの試練ですよ。半月の間に、出し物を決めて、完璧に準備を整える。目指すは売り上げ一位ですよ! ……あ、ちなみに、売り上げ一位になると商品として、修学旅行の場所が高級リゾートになります。ついでに言うと、修学旅行は二ヶ月後。売り上げ一位になれなかった場合は北の山脈で地獄のサバイバル旅行です。毎年怪我人続出です。僕も引率で付いていかなければならなくなるので、なんとしてでも一位を目指してください」

「ほら、早く! 出し物決めるよ!」

 ……真顔で言い切るヴェルムに、珍しくアヤが立ち上がった。どうしてもサバイバル旅行は避けたいらしい。

 ちなみに、北の山脈というのは、この国の北端に広がる山脈のことで、魔の森のように強力な魔獣こそいないが、とても険しいことで有名だ。地球で最も高いエベレストをあっさりと越える標高の山も多いとか。中には標高一万メートルのものもあるらしい。地獄である。

(ていうか、そこでサバイバルって……食料あるのかね)

 毎年やっているからにはなんとかなるのだろうが……とりあえず、ユウシアもやりたくなかった。

 そして。

 最高の出し物をしよう、と、意気込むアヤに。

『おーっ!!』

 クラスが、団結した。


++++++++++


 それから三十分。

 とりあえず、何も決まってない。

「んー……何すればいいんだろ?」

「いや、司会しっかりしようよ……先生、去年の売り上げ一位のクラスはどんなことを?」

 首を傾げるアヤにユウシアがぐったりとツッコミを入れ、参考までにヴェルムに問いかける。

「えぇと、確か……飲食店でしたかね。あまり詳しいことは覚えていない……というか、大体のクラスが飲食店になってしまうのですが。中でもあのクラスは、生徒の中に高級レストランの跡取りがいたということで、ずば抜けていたと思います」

「なるほど……でも、それ以外に浮かばないのも確かなんだよなぁ……」

「ユウ君、司会変わらない?」

「え? あ、今更?」

 バトンタッチ。

「……で、金を稼ぐという意味だと、やっぱり飲食店以外には浮かばないんだけども。何か他にある?」

 と、聞いてみるが。

 皆考えるものの、意見は出ない。

「出ないか……じゃあ、とりあえず飲食店という方向で、何を出すかなんだけど……」

「料理に関しては姉上に任せれば負けはないと思うぞ」

「リル様の料理……あれは、美味しかったわね、本当に……」

 そのリリアナの言葉に同意するようにユウシアとアヤが頷く。

 クラスメイト達は思った。

(王女様の手料理食べたことあるの!?)

 と。

「なるほど、リルさんの料理ですか……まだ小さい頃、練習で作った料理なら食べさせてもらいましたが……才能の片鱗を見ましたよ、えぇ。そうですか、あれから更に上達しているとなると……久しぶりに、食べたいですねぇ」

 ヴェルムが思い出すように言う。王女の料理、ますます気になるクラスメイト達。

「んー……先生、調理室は使っても?」

「構いませんよ」

「それじゃあリル、簡単にでいいから何か作ってもらえるかな」

「お任せ下さい」

「よし。じゃあ移動しよう」

「あ、何人か残って他のこと決めた方が――って、もう行ってしまいましたか……僕も行きましょう」

 先生としての威厳など、とうの昔に丸めてゴミ箱に捨てた。主に生徒達が勝手に。


++++++++++


 簡単に作れるもの、ということで、とりあえず玉子焼きを作ってみたリルだが。

「勝った」

「これは勝ちだ」

「売れないはずがない」

「法外な値段ふっかけても売れる」

「リゾート確定」

 クラスメイトの反応である。もっとあった。もっと色々あったが、とりあえずリルを褒め称えまくっていた。

「……まぁそういう訳で、味に関しては問題なんかどこにもないと。ただ、他なんだよな」

「他、ですか?」

「うん。リルの料理なら売れる。それは間違いない。でも飲食店っていうのは、味だけじゃない」

「……サービス、ですか」

「そう。飲食店っていうのは接客業だから。ただ美味しいものを出せばいいってものじゃない。いくら味がよくても、店員の態度が悪かったり、店自体が汚かったりしたら、来たいとは思わないだろう?」

「そう、ですわね……」

「それに、どうせやるなら、そっちでもトップを取りたい。とりあえず料理は完璧だしな」

「そんな、ユウシア様、わたくしの料理なんてまだまだですわ」

「いいや。間違いなく完璧だよ。リルが作るんだから」

「……ふふっ、そう言って頂けると嬉しいです。ですが、お義母様には敵いませんから」

「そうかな? ラウラも褒めてたけど」

「そうなのですか? では、わたくしももう少し自信を持ってもいいのでしょうか」

 なんて、話をする二人に。

「自信を持つのはいいと思うんだけどさ、早く出し物決めない?」

 アヤがため息まじりに言った。勇気? いいや、慣れただけだ。

 武闘大会? あぁ、どんどん先延ばしになってますね。いや、時間軸的には冬休みあたりの予定なんですよ。ただ、学園祭三学期は遅いかなぁと。学園祭をやらない選択肢はない。詰めればこの章で学園祭と修学旅行両方とも……キツイかなぁ。いやでも、学園祭さっさと終わらせて……考えときます。


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