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“元”暗殺者の転生譚!  作者: 浅野陽翔
夏休み、帰郷
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悪い癖

「っ!」

 ユウシアは、すぐさま木から飛び降りる。

 それを追うように、彼の前に立つ影。シオンだ。

 そして――

「……なるほど」

 ユウシアは小さく息を吐く。

「先輩、わざと気配を絶ちませんでしたね」

「えぇ。ユウシアさんが気配の大小で私達を判別していたのは分かっていたので」

 ユウシアがフィルだと思った右の気配は実はシオンで、実際はフィルは後ろにいた。ユウシアの居場所を捉えていたシオンはフィルにそれを伝えると自分はそこを離れ、わざと全く違う方向へ向かう。そして、ユウシアがフィルの対処に意識を向けているうちに自分は気配を絶ち、彼の背後へと向かったのだ。

「で、俺はまんまと引っかかったと……ただ、俺に奇襲を仕掛けなかったのは何故ですか? あれなら気付かれる前に一撃入れることも出来たと思いますが」

 そう。もう少し後なら話は別だが、少なくともあの時点ではユウシアはシオンの気配に気がついていなかったのだ。そのまま攻撃すれば当てられたはず。

「それではいつもと変わりませんから。『逃げ』に徹する相手との戦闘を考慮しているのでしょう?」

「……まぁ、それもそうですけど――っと」

 模擬戦の目的をしっかり達成しようとする、その真面目とも言える精神にユウシアは苦笑し――右に目を向ける。

「……すっかり騙されたぞ……」

 そこには、ジト目をユウシアに向けるフィルが。【偽装】の気配は少し大きめにしていたので、フィルでも察知することが出来ていたのだ。

「……なるほど、ニ対一、ね」

「おや、さすがのユウシアさんでも辛いですか?」

「ふふ……日頃の恨み……」

 フィルの身に何があったのか。語られることは、きっとない。

 ユウシアは小さく笑う。

「……いや、そんなことは――」

 ベルトポーチから何かを取り出すと、手を上に上げて――

「ないですよ!」

 その中に握っていたものを、叩きつける。

「っ、これはっ!」

「煙幕か!」

 そう。ユウシアは、最近試作していた、忍者よろしく煙玉を、しこたま持ち込んでいたのだ。

 ちなみに、五分の一くらいの割合で催涙ガス付きである。主原料は唐辛子。弱めにはしてあるが、その効果はまぁまぁ強く。

「ゴホッ、ゴホッゴホッ!」

「目が、目がぁぁあっ!!」

「……あ、二十パー引いた……まぁいいや、さらばっ!」

 ユウシアは簡単に逃げおおせたのだった。


++++++++++


「くぅっ……手も足も出なかった……」

「一撃当てるまではなんとか行ったのですが……まさか、森の中からの奇襲があそこまで……あぁ、奇襲コワイ……」

「……ユウシア様、何を……主にシオンさんに」

「うわぁ……トラウマ植え付けられちゃってるよ……」

 ははっ、と、ユウシアは乾いた笑いを漏らす。

 シオンの言う通り、あの後、逃げるユウシアに一撃入れることはなんとか出来た。しかしその後、木々に紛れて攻撃をし始めたユウシアは――まぁ、有り体に言うと、手が付けられなかった。

 頭上から降ってくるわ、いつの間にか落とし穴が仕掛けられてるわ、小石を何度も投げつけられるわ……終いには、草の揺れる音がしたかと思えば、その反対側から音もなく現れたユウシアに膝カックンされるわ。

「……ユウさんの悪い癖ですね。暇になると遊び始める……」

「んー……否定出来ないなぁ」

「……もういいです。今度は私がユウシアさんにやってやりますから」

「む、私もやるぞ!」

「子供みたいな決意固めてるんだけどこの人達。っていうか、ユウ君のやることが子供っぽいよね」

「アヤ、あとで倉庫裏」

「ごめんなさい調子に乗りました許して」

 体育館裏、みたいなノリで倉庫裏を指定したユウシアに、アヤが綺麗な土下座を決める。

 と、そんな様子に微笑を浮かべていたラウラが手をパンパンと叩く。

「はいはい、皆さん、おふざけは後にして夕飯にしましょう。今日が最後の夕飯ですから、リルさんと一緒にご馳走を作りましたよ」

「頑張りましたわ」

「楽しみすぎる早く食べよう今すぐ食べよう」

 手を小さくグッとするリルに、ユウシアは真顔で言った。

 ちなみに。豪勢過ぎて明らかに量の多い夕飯だったが、そのあまりの美味しさに腹がいっぱいになろうと食べるのをやめられず、全くもって余らなかったとか。


++++++++++


「……それじゃあ、ラウラ。また」

 ログハウスの外、森の開けた場所。ユウシアは、ラウラに軽くハグをしながら言う。

「はい。……時々は、またお話しましょうね。そして、また時間が出来たら帰ってきてください。いつでも、待っていますから」

「もちろん。今度からはちゃんと教会にでも行って話すよ。長期休暇のときは必ずここに帰ってくる。俺の故郷はここしかないんだから」

「……はい。皆さんも、また来てください」

 そう、リル達にも声をかけるラウラ。代表して、リルが口を開く。

「もちろんですわ。このようないいところ、来ない訳がありません」

「そう言って頂けると嬉しいです。私も、ユウさんも。今度は、この森でしか取れない食材でも用意しておきましょう」

 と、笑って言うラウラを見て。

(……あ、地球ソナリアから何か持ってくるつもりだよ、この女神様)

 ユウシアは察した。だって、この森でしか取れない食材とか、魔獣の肉以外にはほとんどないし。

 とまぁ、何はともあれ。

「それじゃ、行こうか、皆」

「お気をつけて」

 これで、帰省も終わり。もう少しで、学校がまた始まる。

 終わりが雑になりましたが、一応この章は終わりです。紹介するような人もほとんどいないので、今回は幕間はなし。次の幕間でまとめてやると思います。


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