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“元”暗殺者の転生譚!  作者: 浅野陽翔
夏休み、帰郷
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共同作業

 魔の森東部。いち早く持ち場へと到着したラウラは、現在使えるだけの女神としての力をフルに活用し、索敵を開始する。

 今のラウラは分身体だ。だが、制限を受けているとはいえ、その力はいくら広大でも、森一つ――まして、その四分の一程度、補うのは容易い。

「……なるほど。確かに、南部に生息しているはずの魔獣の反応がありますね。それも、かなりの数……この分だと、北部にも進出しているでしょうか」

 閉じていた目を開き、ラウラはひとりごちる。

「とはいえ、女神の敵ではありません。〔ジャッジメント〕」

 そう唱える、ただそれだけで。

 音もなく、ラウラの索敵範囲から先程捉えた反応が、全て消失した。

「さ、次行きましょ」

 まるで何事もなかったかのように、ラウラは西部へ向かう。


++++++++++


 魔の森北部。アヤ、フィルの二人は、焦ることなく、慎重に歩を進めていた。

「あ、そこ、根が出っ張っているから気をつけて」

「はーい。案内がいると楽だね」

 フィルの後ろを歩くアヤが、フィルの言葉に軽い調子で返す。

 と。

「――二百メートル程先に、ここにはいないはずの魔獣の群れを発見しました」

 どこからともなく現れると、そう報告するシオン。斥候として、気配を消して周囲を調べていたのだ。

「……どうしました?」

 二人の反応が無いのに気付き、首を傾げる。それに二人は口を揃えて、

「「心臓に悪いです!」」

「またこのパターンですか」

 ユウシアによく言われているやつだ。今回ばかりは仕方ないだろうとも思うのだが、言わぬが花というものか。

「……まぁ、いいでしょう。この付近には、他にはこれといっておかしな所はありません。他に探すにしても、まずは先程目付けた魔獣達を倒してからですね」

 シオンの言葉に頷くと、アヤ達は彼女について魔獣のいる場所へと向かった。


++++++++++


「リルッ!」

「はい!」

 魔の森南部。ユウシアの呼びかけに応え、リルは詠唱を開始する。さすが、と言うべきか、素早い詠唱だ。

「『繋ぐは水、水の精霊。汝、その激流にて、全てを喰らい、飲み込み、我が敵を排除せよ』!〔アクア・サーペント〕!」

 空中に生み出された大量の水が集まり、大蛇の形を取ると、ユウシアが魔法のあまり効かないものや、素早く、回避される可能性のあるものをある程度間引きした後の魔獣の群れに突き刺さり、大口を開けて飲み込んでいく。

「……さすがの破壊力だな」

 それを離れたところから眺めながら、思わず呟くユウシア。

「水属性の高位魔法です。あまり攻撃には向かない水属性ですが、それでもこの魔法は他属性の高位魔法にも迫る破壊力がありますわ」

「へぇ、そうなんだ。ちなみにリル、魔力の方は?」

 これだけの規模の魔法だ。魔力消費も大分大きいだろう。

 リルは、何かを確かめるように自分の手をチラリと見ると、

「そう、ですわね……残り、三、四発といったところでしょうか」

「三発か……微妙だな。あぁでも、いざとなれば俺の魔力を使うことも出来なくもないか?」

 残り回数と、前回の様子から見積もった魔獣の群れを比較し、足りなさそうだと判断したユウシア。しかし、場合によってはユウシアの有り余る魔力を使うことも出来ない訳ではない。アヤはユウシアから分け与えた魔力を保存しておくために魔導具アーティファクトを使用しているが、それが無くても、触れている必要はあるが他人の魔力を媒介に魔法を使用することは出来るのだ。

「つまり、夫婦の共同作業ということですわね……」

 ポッ。

 なんてやっている場合ではない。

「はいはい、今はそういうのいいから、次行くよ」

「……もう、ユウシア様のいけず」

 ぷぅ、とリスの様に頬を膨らませるリル。

「可愛い」

 普段は心の中で思うだけのことが、つい口を衝く。

「そんな、可愛いだなんて……照れますわ」

「あ、えっと……うん、次行こう、次!」

 そのあからさまな照れ隠しに、リルは微笑みながら元気よく「はい!」と返した。

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