分担
マイページの自己紹介で若干開き直り始めました、私です。「ぼっち。」の方で言った時間変更が実行される時も近い……。(さりげなく宣伝していくスタイル)
話を終え、下に降りてきたユウシア達。それに気が付いたリルが駆け寄ってくる。
「ユウシア様……大丈夫だったのですか?」
「うん。大したことじゃないってさ」
間違ったことは言っていない。水晶武装の同時使用さえしなければいいだけの話なのだ。
「そうですか……よかった」
ホッとしたように息を吐くリルを思わず撫でながら、ユウシアは皆に目を向ける。
「……話があります」
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南部に現れた魔獣の群れ。ユウシアにはそれが、少しずつ北へと向かっているように感じられた。
このまま放置すれば、森を出て、国中に広がってしまうかもしれない。それは絶対に阻止しなければならない。
魔獣の討伐。普段ならユウシアでもどうにか出来ただろうが、今回に関して言えば、スピードが要求される。いくらユウシアが強くとも、一人で出来ることなどたかが知れている。
「――だから、皆にも手伝ってほしい」
そう、頭を下げるユウシアに、
「……もう。今更何言ってるのさ」
「その通りだ。全く、余所余所しい」
「いい修行になりそうです」
呆れたように、腹を立てたように、そして既に決定したかのように。思い思いの言葉を返す。
「ユウシア様。私は……いえ、私達は、いつ、どんな時も、あなたの力になりますわ」
真っ直ぐにユウシアの目を見つめながら、リルが言う。
「皆……ありがとう」
もう一度頭を下げたユウシアは、一度大きく息を吐いて気を取り直すようにすると顔を上げる。
「それじゃあ、分担を決めよう」
「分担……ですか?」
ユウシアの言葉に首を傾げるリル。
「そう、分担。あれから三日……ってことは、多分、あの群れもいくつか北上して来てると思う。だから、手分けして潰す」
リルは、「なるほど」と呟いて頷く。他の皆も納得したようだ。
「それと、今回はラウラにも手伝ってもらうからな」
「だと思ってました。……本当は、人にあまり干渉するのはよくないのですが……可愛い息子の頼みですから、特別です」
皆には聞こえないように言うラウラに、初めて「息子」と言われた若干の恥ずかしさに顔を背けながら、小さく「ありがとう」と返す。
「まず……そうだな、俺は南部、フィルと先輩はよく知っているはずの北部を。ラウラは……東部かな。出来れば終わり次第西部に」
「これが試験代わりといったところか」
「腕の見せ所ですね」
「む、反対側まで行かせますか。まぁいいですけど」
「あはは……えっと、それで、アヤとリルだけど……魔法かぁ」
ユウシアは、三人の反応に――というか、主にラウラの反応に小さく笑うと、他の二人の配置を考え始める。森の中、というのは、魔法はいまいち扱いづらいのだ。
「ラウラは一人で平気だとして」
「ちょ」
「俺も多分一人でも……」
「無視ですか……と、いうか。ユウさん、今、水晶武装使えませんよ?」
「……へ?」
初耳である。
「えっと、ごめん、今なんて?」
いや、聞き間違いかもしれない。そんな希望を込めた質問にラウラは、
「ですから、過剰に負担がかかった反動で、ユウさんはあと数日は水晶武装使えません」
「おーまいが」
なんて、ふざけたように言うユウシアだが、中々に深刻な問題である。ユウシア本人は多数を相手にするのには向いていないのだから。
「と、なると、一体多に向いた魔法使いがいた方がいいのか……」
「じゃあ、あたしは北部だね。どうせリルはユウ君とがいいだろうし」
「「え?」」
迷いの無いその言葉に、思わず首を傾げるユウシアとリル。
「……いや、まぁ、義父さんにもああ言った以上、リルとは出来るだけ一緒にいたいけど……」
リルには傷一つ付けさせないと、そうガイルに約束したのだ。
「でも、そうだな。リルは俺が守る。そう言ったんだ」
「ユウシア様……」
「うん。ユウ君はそうでなきゃ。それじゃあフィル、シオン先輩、早速行きましょ」
「よし、さっさと終わらせて私達も西部に向かおう」
「そうですね。ラウラさんももう行ってしまったようですし……一人相手に負けられません」
そう言うと、さっさと出て行ってしまう三人。
「行動早いなぁ……よし。俺達も負けてられない。行くぞ、リル!」
「はいっ!」
二人は手を取り合うと、魔の森南部――この森で、最も危険な魔境へと駆け出した。
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