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“元”暗殺者の転生譚!  作者: 浅野陽翔
オーブ集めの旅へ
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駄女神誕生

「……ユウ君? どうしたの?」

 いきなり大声を上げて飛び上がったユウシアに、少女が不審そうな目を向ける。

「えっ? あ、いや、なんでもないよ? うん、なんでもない。……とりあえず、ちょっと待ってて」

「あ、うん」

 呆気にとられたように頷く少女を尻目に、ユウシアは唐突に聞こえた女神様の声に向かって話しかける。

『……えっと、ラウラ、だよな?』

『はい。ユウさんの大事な大事な女神様ですよ』

 ラウラの声は、自分の中から聞こえたように感じた。だからユウシアも自分の中に話しかけるようにしてみたのだが、正解だったようだ。

 ただとりあえず、

『ラウラ、そんなキャラだったっけ?』

『お話出来なくってユウさん成分が足りてないんです』

『なんだそりゃ……話してないっていっても二、三日じゃん……』

『それでも、ですよ。まぁ、ずっと中から見てたんですけどね』

(そういえばそんなこと言ってたような……俺にプライバシーはないの?)

『ないですね』

『はいそこナチュラルに心を読まない』

 無言のコント(?)を繰り広げたユウシアは、はぁっ、とため息を吐いてからラウラに質問する。

『……それで? 何でラウラ、話せてるの? ここって神域なの?』

『神域ではありませんね。そこの川の水が聖水のようでして。それにユウさんが触れたことで、お話ぐらいなら出来るように……まぁ、顕現することはさすがに出来ませんが』

 水に触れる。先程不本意ながら川にダイブしてしまったときのことだろう。

『それじゃ、この水持ち運べばラウラと普通に話せるようになるとか?』

 ふと頭に浮かんだ疑問をそのままラウラにぶつけてみるユウシア。しかし、頭の中からラウラが首を振る気配が伝わってくる。……とても変な気分になる。

『それは出来ません。ここからある程度離れてしまうと、ただの水になってしまいますから』

『へー。そういうものなんだ』

 頷きながらそう返すユウシア。

 と、隣の少女から声が飛んでくる。

「……あの、ユウ君、さっきから空を見つめながら頷いたりコロコロ表情変えたりしてるけど……大丈夫? いろんな意味で」

「あっ」

 すっかり少女の存在を忘れていた。確かに、傍から見ると自分の挙動はおかしかったかもしれない、と反省する。

「……まぁ、うん、大丈夫。大丈夫だから、あとちょっと待っててほしい」

 だからといって、やめたりはしないのだが。

 微妙な表情をしながら頷く少女を見てから、ユウシアは改めてラウラに問いかける。

『それでラウラ、さっきのお任せあれっていうのは?』

『あぁ、忘れてました』

(忘れちゃダメでしょ……)

 と、ユウシアは内心愚痴る。まぁ、これもラウラには筒抜けなのだろうが……。

『うぅ……ごめんなさい……』

 筒抜けだった。

『……まぁいいよ。間違いは誰にだってあるし』

『ユウさん大好きです!』

 コロコロと態度を変えるラウラに、ユウシアはもう一度ため息を吐く。この女神様、幼児退行が進んではいないだろうか。

『……えっと、それで、ですね。彼女の言語能力についてですが、私の力で解決出来ますよ?』

『……りありー?』

『りありーりありー。ユウさん、彼女と額を合わせてください』

「はっ?」

 思わず間の抜けた声を上げるユウシア。そのまま隣の少女に目を向ける。

 首を傾げる少女。

(……額ってあれだよね? おでこだよね? それをくっつけろと? 顔超近くなりません?)

 ラウラが言ったからにはなんとか出来るのだろうが、さすがに初対面の相手とそんなことは出来ない。と、葛藤するユウシア。

 訝しげな表情の少女。

「むぅ……」

 目を閉じてうんうん唸りながら考えるユウシア。ちらっ、と少女に目を向ける。彼女は何が何やら全く分かっていないらしい。分かる要素がなかったのだが。

 やがてユウシアは、諦めたようにふぅー、と息を吐き、少女に向き直る。何故か正座で。少女もなんとなく正座する。

「えー、こほん」

 ユウシアはわざとらしく咳払いをして、説明――もとい、言い訳を始める。

「えっと、今からすることは決してやましいことが目的なんじゃなくて、あの、この世界で生きるために必要っていうか、つまり君のためであって全く他意はないっていうか、えっと、詳しいことは説明出来ないっていうか、しづらいっていうか、だからといって説明出来ないようなことをする訳じゃないっていうか――」

「ユウ君」

「はひゃいっ!?」

 全く要領を得ない言葉に怒りでも受けたのかと身構えるユウシア。しかしそんなことはなく。

「〜っていうか、って多くない?」

「あっはい、すいません」

 コテン、と頭を倒しながら聞いてくる少女に素直に謝るユウシア。

「それで、よく分かんなかったけど、私のためなんでしょ? 何する気か分かんないけど、私は大丈夫だよ」

「えっと……わ、分かった」

 おずおずと少女に近付くユウシア。遅い。とても動きが遅い上に、どこか挙動不審だし、顔も真っ赤である。初恋の相手とやっと結ばれて、初デートの最後の方にどこかいい雰囲気になったときの気の弱めな男子高校生のようだ。例えが細かい。

 そんなユウシアの様子にしびれを切らした者が一人。

『まどろっこしい、です!』

「うわっ!?」

 ユウシアの中に入った女神様は、彼の体を少しなら操れるようで。

 無理に動かされて体勢を崩したユウシアの体は、そのまま少女を押し倒し、ラウラの希望通り額を合わせ、しかし勢いが衰えることはなく――

「「んっ!?」」

『あっ!?』

 唇を重ねてしまう。

 ユウシアも少女も、いきなりのことに動くことが出来ない。

 そんな中、元気なのは。

『そんなっ!? ユウさんのファーストキスは私が貰うはずだったのに!!』

 場違いにも程がある発言。

(許すまじ、駄女神ッ!!)

『ひぃっ!?』

 この後しばらく、ラウラが口を開くことはなかったという。

 例えが細かった。絶対細かすぎて伝わんない。

 さて、ユウシア君、(多分)お互いに初めてだった訳ですけども、どうするんでしょうね?

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