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“元”暗殺者の転生譚!  作者: 浅野陽翔
夏休み、帰郷
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言い訳

 ラウラがいる。

 そのことは別に、不思議には思わなかった。ここは神域だ。神の力が及びやすく、分身体である目の前のラウラが現れることの出来る数少ない場。それに何より、ユウシアはまたラウラに会うことが出来ると何故か確信していた。

 だからユウシアは、自分の母代わりである彼女に笑顔を見せる。

「ただいま、ラウラ。……久しぶり、かな」

「はい。半年ぶりです、ユウさん」

 ラウラも笑顔を返しながら、ユウシアを抱きしめる。それに応えて抱き返すユウシア。

「……たった半年、なんだろうけどな。会いたかった。また会えて本当によかった」

 会話自体は、ついこの間もした。だが、声だけなのと実際に姿が見えるのでは全く違うのだ。

 ――と、そこへ後ろから、どこか暗い声が。

「……ユウシア様……実家に着いて早々浮気ですか……?」

 即座に離れるユウシア。凄まじい反応速度である。

「違う違う、ただの挨拶だから!」

「……ユウシア様は、挨拶でハグをなさる、と?」

「いや、これは特別な……」

「特別な方なのですね……ユウシア様の、特別な女性……」

「確かに特別な人だけど……あぁ、紹介しちゃった方が早い気がする!」

 そう言ったユウシアは、一つ咳払いをすると、ラウラを全員に紹介する。

「彼女はラウラ。俺を育ててくれた、母代わりみたいな人だよ」

「皆様、初めまして。ラウラと申します。いつもユウさんがお世話になっております」

「……本当に母さんみたいな……」

「うふふ」

 ユウシアの言葉に笑いを返すラウラ。皆はそんな二人――ではなく、ユウシアだけを見ている。

「……どうかした?」

 それを不思議に思い、問いかけるユウシア。それに、代表してリルが質問をする。

「あの、ユウシア様……母()()()、と……本当のお母様は……」

「……あー」

 なるほど確かに、あんな紹介をすれば、本当の母親はどうした、と不思議にも思うだろう。そのことは考えていなかった、と、天を仰ぐユウシア。どう誤魔化そう。

「……えーっと」

 まさか、転生したのでいません、なんて本当のことを言う訳にもいかず(リルにはそのうち話す予定だが)、悩むユウシア。しかし中々いい言い訳が浮かんでこない。

 と、見かねたラウラが口を開く。

「……ユウさんは、捨て子だったんです」

「「「「「え?」」」」」

 ハモる疑問の声。なんとユウシアも一緒に。

「十五年前のある朝のことです。目が覚めた私は、外から何やら泣き声が聞こえてくることに気がつきました」

(なんか語り始めた……)

 それはもうペラペラと、まるで事実であるかのように。

「何事でしょう、と家を出ると、家の前には籠が。その中には赤ん坊がいるではありませんか」

「まさかその子が……」

「……当然私はその子の親を探しますが、どこにも見当たりません。そもそもこの森は、凶悪極まりない魔獣の蔓延る魔の森。もしかすると、この子の親はもういないのかもしれない。そう思った私は、その子を育てることにしたのです。それが私とユウさんの出会いでした」

「そう、だったのですか……ユウシア様にはそんな過去が……」

(そうだったんだ……俺にはそんな設定が……)

 リルとユウシア、どこか似たような驚きを。とりあえずユウシアは生い立ちを聞かれたらその設定を話すことにした。

「それで、そこからはラウラが女手一つでここまで育ててくれたんだ」

 乗っかるユウシア。流れに乗るのは大事だ。

「そう、だったのですか……ラウラ様――いえ、お義母様。ユウシア様を育てて頂き、ありがとうございました。おかげでわたくしは彼と……」

「いえ。これからはあなたが、妻としてユウさんを支えてあげてください。リルさん」

「はいっ……!」

 決然とした瞳で頷くリル。

 と、そこへ、どこにその要素があったのか目を潤ませていたフィルが、ふとした疑問を投げかける。

「あれ……? ラウラさん、何故姉上の名を……それに姉上とユウシアの関係まで……」

「「あ」」

 忘れてた、とラウラ。

 ヤバ、とユウシア。

 えーと、と、今度はユウシアが言い訳を。

「実は、ちょくちょく手紙出してたんだよ。だから、ラウラは俺の身の回りで起きたことは大体知ってる。皆のことも伝えてあるし。特徴的だからすぐに分かったんじゃないかな?」

「そ、そうですそうです! えっと、リルさんの他には、赤髪の彼女がフィルさんで、黒髪のお二人は、髪の短い方がアヤさん、長い方がシオンさん……ですよね、ユウさん?」

「ん、正解。やっぱり手紙で特徴を伝えるなら髪だよな」

 それが一番分かりやすく、一番表しやすいのだ。

「……なるほど、手紙でしたか……ですがユウシア様、一応わたくし達の関係は極秘事項なのです。この際お義母様に伝えるのはいいとしても、手紙ではいつ誰に見られてしまうとも分かりませんので、注意して下さいね」

 ユウシアの言い訳にしっかりと誤魔化されたリル。軽く口を尖らせながらそう注意してくる。

「そうだな、ごめん。今後は気をつけるよ。……それじゃあ、そろそろ中に入ろうか」

「えぇ。そろそろ来るだろうと思っておもてなしの用意は出来ていますよ」

 二人の親子(?)に先導され、皆は中へと入っていく。

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