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大成功

「――第三位。五学年、シオン・アサギリ」

「はい」

 決勝戦を終え、翌日。

 武闘大会が行われていた第一闘技場では、閉会式と共に表彰式が行われていた。

 学園長であるヴェルム直々に、武闘大会三位の証である銅のメダルを首にかけられるシオン。会場を拍手が包む。

(銅メダルなんだ……。一位二位は金銀になるのかな?)

 地球と同じ色であるそれを見て、ユウシアはそんなことを考える。地球ソナリアと対を成すというこの世界(ファナリア)。共通点が所々に存在する。

「第二位。三学年、アラン・レイノルズ。怪我の為、残念ながらここにはいませんが、皆さん、盛大な拍手をお願いします」

 そう言うヴェルムだが、起きた拍手は盛大とは程遠い散発的なものだった。

 昨日、ユウシアとの試合の後に起きたアランの暴走。比較的すぐにラウラの手で遮断されたものの、試合終了直後ということもあって見ていた者は多かったのだ。この状況も、仕方ないと言えるだろう。

(別に、アラン先輩が悪い訳でもないんだけど……)

 彼が暴動に出たのは、オーブの影響があったからだ。セリックのときもそうだったし、ラウラにも頼まれたことだし、どうにかヴェルムに掛け合って処分は避けてもらいたいところである。

「第一位。一学年、ユウシア」

「はい」

 返事をし、壇上に上がるユウシア。

「まさか、こうもあっさりと優勝してしまうとは思いませんでした。いい意味で期待外れです。……おめでとう」

「ありがとうございます」

 言いながら頭を下げるユウシアに、ヴェルムが手に持っていた金メダルをかける。

「!?」

 その重量に、思わず目を丸くするユウシア。

「ふふふ……驚いたでしょう。純金製のメダルです。売れば聖金貨一枚は下らないと思いますが……あまり売ってほしくはないですね」

「せっ……夫婦生活十年……」

「相場はそうですが。君のお嫁さんはお姫様ですよ?」

「いやまぁ、それは分かってますけど……。いざというときのために取っておきます」

「君がそんな状況に陥る未来が見えない……。まぁ、そうしておいてください。売られないことを祈ります」

 ユウシアはヴェルムの言葉に「頑張ります」と返し、元の場所に戻る。

「半年後に行われる五国間学生武闘大会のメンバーは、今ここにいる二人にアラン君を加えた三人となります。皆さん、もう一度、盛大な拍手をお願いします!」

『ワァァアアアア!!』

 闘技場は、大きな歓声と拍手に包まれた。


++++++++++


「あれ……どこ行ったんだろ」

 閉会式も終わり、闘技場を出たユウシアは、リル達の姿が見当たらず首を傾げる。

「おっかしいな……いつもは向こうが早くても待っててくれるのに」

 別に、待ち合わせようとか言っていた訳ではない。自然とそうなっていたのだ。

「どこかで道草でも……いや、もしかして何かあったんじゃ……?」

 探そうと振り返ったユウシア。その視界を、真っ白の何かが覆う。

 ――と、いうか。

「へぶっ!」

 ユウシアの顔面に直撃する白い何か。ピッタリと張り付くそれを剥がすと、

「ぴぃっ!」

「……ハク?」

「ぴぃぴぃっ!」

 嬉しそうにパタパタと飛び回るハク。アヤに預けていたはずなのだが……。

「皆はどうした?」

「ぴ」

 短く返すハク。一応知能のとても高い竜なので、平気な顔をしているということは、特に何かがあった訳ではないようだ。

「んー……先に帰っちゃったのかな。じゃあハク、俺達も帰」

「ぴーっ!!」

「うぐぇっ」

 フードを咥えられ、引っ張られるユウシア。首が締まる。

「なんだよハク……帰るなって?」

「ぴ」

「今は駄目? じゃあいつになったら帰っていいんだ?」

「ぴー……ぴぃ!」

「夕方になったら? 閉会式は午後からだったしそこまで時間はないけど……それまで待ってろって?」

「ぴぃっ!」

「……分かったよ、仕方ないなぁ」

 当然のように意思の疎通をしているユウシア。なんとなく、分かったのだ。


++++++++++


 そして、夕方になり。

「ハク、もう帰っていい?」

「ぴ!」

 ハクの許しも出たので、寮に帰ってきたユウシア。寮内に入る前に、ハクが飛び立ち、一足先に部屋へと戻っていく。

「なんだよ、忙しないなぁ」

 ユウシアは小さく呟きつつ、寮に入り、部屋へと向かう。

 扉の鍵を開け――

(……開いてる?)

 開けた感触がなかった。

 ユウシアは、反射的に【第六感】を使用して気配を探る。

(……一、ニ、三……四人? ……いや、違うな。かなり気配を隠すのが上手い……全部で五人。扉を開けてすぐのところにいる……けど、ハクも一緒か?)

 人の気配が五つ。そして、ハクのものらしき小さめの気配が一つ、人の気配の内の一つのすぐ近くにあった。

 ともあれ、開くしかないと判断し、ユウシアは腰の短剣に手をかけつつ勢い良く扉を開く。

 その直後――

『優勝、おめでとう(ございます)!!』

「ぴぃぴぃっ!!」

 パァンッ!

「……へ?」

 複数人の声と同時に鳴る音。……クラッカーの。

 キョトンとした表情を見せるユウシアの前には、リル、フィル、アヤ、リリアナ……そしてなんと、シオンの姿まで。

「サプライズ大成功だね、リル!」

「はいっ!」

 未だ状況に追いつけていないユウシアを尻目に、アヤとリルがハイタッチ。

「さ、ユウシア様、入ってください!」

「あ、うん……」

 ユウシアは、リルに手を引かれるまま、部屋へと入っていった。

 男を入れるなんて無粋なこと、誰がするかってんだい!

 という訳で、次回、女の子達によるパーティーをお届けする予定です。多分第三章最終回です。長かった。

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