表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
102/217

破壊

 新シリーズの連載を開始しました。下にリンクが貼ってあるので、よければ。

「起動」

「……【集中強化】【第六感】【五感強化】【完全予測】【武神】――全開」

 本来、口にする必要のない言葉。しかしユウシアは、アランに合わせてそれを口にする。

(本当は、あまり使いたくはなかったんだけど……()()も、使うか)

 ユウシアは、短剣に一瞬目を向けて考える。

「それじゃあ、先輩、行きますよ」

「いいよ、いつでもかかって来な」

「……遠慮なく!」

 その言葉と同時に、ユウシアは駆け出す。アランの方へとまっすぐ――それだけであるはずもなく。

(【偽装】【隠密】)

 アランに向かって走っているのは、ユウシアが作り出した分身。本体は気配を完全に遮断して、一気に懐に潜り込む。狙うは、飛剣がほとんどない背後。

 上手く行けば、これで終わり――

 ガキンッ!

「……ま、そんなはずないですよね」

 ユウシアの短剣は、アランの飛剣の一本に完全に受け止められていた。

「よく気付きましたね。俺の気配に」

「……いいや、君の気配には気付けなかったさ。残念ながら、ね。でも、シオン先輩との戦いを見て、君ならこう来るだろうと思っていた」

「……なるほど、予測された訳ですか」

「そうだね。……でも、さすがに次からは通用しない」

「それは、こっちも同じですよ。一度見せた手が通用するなんて思ってない」

 状況は、ユウシアの不利だと言っていいだろう。シオンとの戦闘を見られていたということは、そのときに使った戦法は全て使えないということ。もっと言えば、今回のように多少改変したところで無意味。彼の引き出しの大部分が潰されたと言っても過言ではない。が、

「だったら、先輩との戦闘で使わなかった戦法を使えばいい」

「……へぇ。彼女と戦って、まだ全力を出していなかったのかい?」

 ユウシアはアランの質問にニヤリと笑みを返すと、短剣を弄ぶようにしながら全く関係のない話をする。

「ところで、アラン先輩。“影”って、攻撃系の属性に入ると思います?」

「いいや。影属性はあくまで支援系だよ」

「……そうですよね。でもね、こうは思いませんか? ()()()使()()()()()でもある、と」

「……? 一体何が――」

 訝しげに目を細めるアラン。ユウシアは彼の言葉には答えず、その足元に目を向ける。

「前、アヤにも言ったんですけど」

「これ、は……」

「やっぱりこういうのって、全部認識の問題ですよね」

 アランの足には、その下から――影から飛び出したナイフが、深々と突き刺さっていた。

「――っ、この程度の傷、でっ……!?」

 足を上げ、ナイフを抜こうとしたアランの体がその場に崩れ落ちる。

「本当は、毒なんてあまり使いたくはなかったんですけどね。即効性の麻痺毒です。熊だって簡単に動きを止められるような毒ですから、よく効くでしょう?」

「あ、がっ……」

 舌も麻痺してしまっているのだろう。アランはまともに言葉を発することすら出来ない。

「――っ!」

 しかし、まだ終わりではなかった。ユウシアは咄嗟にその場にしゃがみ込む。

「……なるほど。剣の制御は手放さないか……」

「ま、けられ、ない、んだ……ぼくは、ぜっ、たい、に、まけては、いけな、い……っ」

(……思っていたよりも、効いていない……もう喋れるなんて)

 そういったスキルでも持っているのか、単純にアラン個人の耐性か、それとも別の要因か……。それは分からないが、あまり効いていないというのならやることは一つ。

「直接トドメを……っ!」

 しかし、そうはさせないとばかりに、剣がアランのところへと向かおうとするユウシアの邪魔をする。

 思わず舌打ちをしながら、飛び交う剣を掻い潜り歩を進めるユウシア。しかし、思うようにアランに近付くことが出来ない。

「ぐ、うっ……」

 その隙に、アランはなんと麻痺状態から回復し立ち上がってしまう。まだ万全ではないらしく動きが鈍いが、それでも回復したのは間違いない。ユウシアは驚きに目を丸くする。

「この、程度で、僕に、勝とうなんて……甘いよ」

「……そうだったみたいですね。まさかあの麻痺から自力で抜け出す人がいるとは……」

 しかしこうなると、【毒生成】も使えないと考えていいだろう。これでは麻痺はほとんど効かないようなものだし、致死毒などもってのほか。睡眠毒はどうしても効果が表れるまでに時間がかかってしまう。

「……意表を突く策も、使ってしまった以上はアウト。となると……」

 呟きながらユウシアは、短剣をしまう。

「……なんのつもりだい?」

「いえ。だったらあまり見せていないようなのでも使おうかと。〔殲滅ノ大剣〕」

 ユウシアは大剣を生み出す。

「……なるほど、確かに少しだけ使っていたね。それに、ほとんど見せていない。僕には対策の立てようがない」

 アランは一度目を閉じ、開く。

「……だからどうした」

 そう言った彼の目には、怒りの感情が見て取れた。

「戦いの場では、全てが初見。対策など立てられないのが普通だ。僕はそんな戦いを教えられてきた。そんな中で戦ってきたんだ。……舐めるな」

「……舐めるな? ……本気で命のやり取りもしたことがないような子供が、よくもまぁそんなことを言えるな」

 それは、ユウシアとしてではなく、前世の、暗殺者としての言葉だった。

「――っ、ふざけるなぁぁぁあああああッ!!」

 アランの叫びと同時に、六本の剣がユウシアを取り囲み、一斉に襲いかかる。しかしそれを見てもユウシアは動じない。

「……滅す」

 それは、起句だった。彼の持つ〔殲滅ノ大剣〕、その真の力を引き出すための。

 ユウシアの髪が、真紅に染まる。それは、彼が取り込んだ赤のオーブと同じ色。

「これは、まずいッ! 皆さん! その場に伏せて、頭を守って! 早くッ!」

 ヴェルムの声が響くが、ユウシアはそれを意に介さず、大剣を構える。

「ハァッ!」

 一声、気合を入れて。

 思い切り振る。

 ただそれだけで、闘技場を“破壊”そのものが襲う。

 闘技場を覆っていた結界など簡単に破れ、至る所から瓦礫が飛び散る。

 当然、その中心近くにいたアランなどひとたまりもない。ユウシアを襲わんとしていた飛剣は全て木っ端微塵に破壊され、吹き飛ばされたアランは既に出来ていた瓦礫の山の奥深くに埋もれてしまう。

「ふぅ……」

 爆発したエネルギーが収束し、ユウシアの髪色が元に戻ったときには、闘技場は見るも無残な姿になっていた。

「……やり過ぎた」

 ユウシアは、一人呟いた。

 水晶武装オーブアームズ(笑)の真の力。髪の色が変わるってなんか好きです。

 ……え? 決勝より準決勝の方が内容濃かった? ……ハハッ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
他の作品はこちら

どこかゆる〜い異世界転移ファンタジー!
ぼっちが転移で自由人。

一目惚れ合いから始まる学園ラブコメ!
ひとめぼれ×ひとめぼれ
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ