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怪我

 百話目。多分記念すべき百話目。そこで投稿遅れるって……いや、ホントすみません。

「魔力欠乏症だってさ」

「へ?」

 初めての、全スキル全開という状態で限界を迎えた体に鞭打って、医務室に行くのを断り闘技場を出たユウシア。そこに待ち構えていたアヤが、ぶすっとした表情でそう告げる。

「あたし。元々魔力なんてほとんどないのにね」

「いや、うん、それが?」

「……もし今ユウ君に魔力補充してもらっても、魔力回路がやられちゃってるから、魔法が使えないって。やっぱり〔エーテル・マギ〕の体への負担が大きいみたい」

「つまり」

「三位決定戦、出れないかも……」

「あぁ……まぁ、無理はしないほうがいいし。棄権しな」

 そう言うと、さっさと寮へ向かおうと歩き出してしまうユウシア。そんな彼の肩をアヤが掴み、ブンブン揺さぶる。

「その対応は酷くない!? 塩対応反対!」

「ちょっ……やめ、ホントに、体限界だから……うあっ」

 衝撃に耐えきれなくなり、その場にくずおれるユウシア。

「わっ!? ユ、ユウ君、大丈夫!? 医務室連れて行こうか!?」

「だ、大丈夫、大丈夫だから……部屋で休めば治るから、今は解放してほしいです……」

「あ、う、うん……あの、送るよ?」

「平気……アヤこそ、医務室で休んでな。じゃあ、また明日」

「えっと、また明日……」

 ユウシアは、覚束ない足取りで寮へと向かうのであった。


++++++++++


「痛っつつ……先輩、結構本気で殴ったな……?」

 寮の自室にて、服を脱いで上半身裸になり、シオンに大太刀の鞘で殴られた左肩を診るユウシア。

「うっわ、酷い痣出来てるし……っていうか、軽くヒビ入ってるんじゃないか? これ」

 痛々しい肌と、痛みそのものに思わず顔を顰める。

「……とりあえず、包帯でも巻いておこうか……こういう怪我に効くような薬って持ってたっけな……まぁ、なければ作ればいいか」

 いつだったか、リルのために解毒薬を調合したユウシア。その関係から、普通の傷薬や、病気などの薬も軽いものなら調合することが出来た。

「えーと、薬箱薬箱……」

 どこに置いたっけ、と、部屋の中を物色し始めて少しして、扉をノックする音が響く。

「ユウシア様、わたくしです」

「リル? 開いてるよー」

「はい、お邪魔しますわ」

 と、そんな会話をした直後、ユウシアは気が付いた。

 自分が今、上を何も着ていないことに。

「わーっ! ちょっ、やっぱ待った! ストップ!」

 慌てて止めるユウシアだったが、時既に遅し。

 玄関には、しっかりとユウシアの姿を目にして、顔を真っ赤に染めたリルの姿が。

「……えっと」

「…………」

「……あの、リルさん?」

「……………………ハッ! い、いえ、あの、えっと、も、申し訳ありませんっ!」

 放心状態だったリル。ユウシアの呼びかけで我を取り戻し、謝りながら目を手で覆う。……が、時折指が開き、その隙間から、チラチラ、チラチラ。

(……バレバレなんだけどなぁ)

 と思うユウシアだったが、

(でもまぁ、可愛いから放置で)

 実にバカップルっぽい自己解決を果たした。

「――こほんっ」

 ユウシアが小さく咳払いをする。

「それで、リル。なんでここに?」

「あ、はい。えぇと……その……」

「?」

 口ごもるリルに、ユウシアは首を傾げる。そんな彼に、リルは顔を赤らめたまま一言。

「……ユウシア様、服を着て頂けないでしょうか……」

「!? ごっ、ごめんっ!」

 完全に忘れていたユウシア。慌てて服を着るのであった。

「……うん、本当にごめん」

「いえ、その……嫌、ではなかったというか……むしろ嬉しいというか……」

 気まずそうな顔をするユウシアに、リルはもごもごと。

「…………そのうち、お互いにあんな姿を見せることになりますし……」

「ぶふっ」

 リルが小さな、本当にとても小さな声で付け足した言葉に、ユウシアは思わず吹き出す。

「……えっと」

「あっ! あ、あの、も、申し訳ございません……変な意味では……」

「いや、うん。そうだよな。結婚するんだもんな……」

 正直、そういったことを考えていなかったユウシア。意識してしまい、妙に恥ずかしくなる。

「そ、それでさ! 結局、なんでここに?」

 ユウシアは少し大きな声を上げて無理矢理話題を変える。

「あ、はい。あの、ユウシア様が医務室へ行くのを断ったと聞いて……怪我をされていたようですし」

「あぁ……いや、医務室行く程じゃないかなぁ、と」

「……本当ですか? 少し見せて下さい」

 有無を言わせぬ迫力に、思わず頷いてしまうユウシア。

「――って、脱ぐことになるんだけど」

 ユウシアが思い出したように言うと、リルがまたもや顔を赤くする。が、

「うっ……し、仕方ありませんわ。ユウシア様の体の方が大切ですし……そ、それに、慣れておかないといけませんし……」

「……あの……はい」

 やはり妙に恥ずかしいユウシアだが、頷くとゆっくり上を脱ぐ。

「すー……はー……はい、見せて下さい」

 一つ深呼吸をしたリルが、ユウシアから目を逸らさないようにしつつ言う。

「怪我をしたのは……ここ、だな」

 左肩を前に出すユウシア。

「これは……ユウシア様?」

「……えっと、何? なんか怖いんだけど……」

「『医務室行く程じゃないかなぁ』ではありませんわ! 酷い怪我ではないですか! これでは、動かすだけでも痛みが……少し、ベッドに横になって下さい!」

 怒鳴りながら詰め寄るリル。ユウシアをベッドに半ば強引に寝かせると、その左側に立つ。

わたくし、治癒魔法は得意なんです。必ず治してみせますわ!」

 そう張り切るように言うリル。ユウシアは思った。

(可愛いなぁ)

 ……とりあえず、ユウシアの怪我はリルの頑張りにより完治したことだけ言っておこう。

 やはりバカップル。リルもユウシアと似たようなことをちょくちょく考えてます。

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