真宵 ― 貴賓室の魔女 ―
懐かしい男性の声が聞こえてくる…切羽詰まった声を上げているが、その声は途中で止まる…
―いけない!抑え込め!真宵?!何をして!ま…
次に聞こえてくるのは周りにいた懐かしい女性の声…だけれど、それも、すぐに、止まってしまう。
―貴女なら大丈夫!絶対…解除できる。ね?自分を…
―お姉ちゃん…ごめんなさい、ごめんなさい…ふええええぇ…。
小さい女の子が私に抱きついてくる。そんなに泣かないで…私だってこの状況を変えるのに必死だったのだから。
…でも。過信した。皆が皆過信した結果の、事故、だった。言い方が悪い?…関係ない。
私はそう、思ってしまった。背負ってしまったから。
…それでも。私の、私たちの不覚は…私は忘れないから、恨まれてもいいから。
―いいんですかい?このまま魔法を使えば…姐さんは…
…いいの。
二人…違う。一人と一匹は心を重ねて心を…摘む。
『記憶の宝華』
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・・・
‐MAYOI‐
― 姐さん!姐さん!!姐御! ―
(どうしたのかしら。うるさいわね。)
見えない相手に悪態をついて目を覚ます。ここは…そうね。入学式が終わった後…午後になってそのまま、部屋まで戻れないと感じて、貴賓室を借りて休憩に入ったのだった。それにしても、嫌な夢を見たわ。私…九重真宵の3年前、か。忘れた訳でも忘れたい訳でもないけれど…改めて自分に架せられた十字架を認識する。私はまだ、折れる訳には行かないもの。と、ここで、一人で考えることをやめる。
(わざわざ起こしたのだから、何かあったのでしょう?見張りありがとう。起こしてくれて助かったわ。ジル。)
― 気にしねぇで下せぇ。あっしはマダマダ役に立たなきゃいけねぇ…。それよりも…誰か…というかこの気配はお嬢かと。ただ、少し前から気配が消えてますぜ。 ―
(そう。後は任せて…。)
…そう言って外側へ感知を掛ける…。範囲を広げていく…まだ見つからない。最大まで広げ…見つからない…と言う事は。うん。やっぱりもう私に気づかれているわね。30m…気配と『音』を消して2人近づいているわ。ジルの推理どおり…陽狐ちゃんね。…今は面と向かって質問攻めは避けたいものだけれど…。
(隠れようかしら。…ごめんなさい、ジル。貴方の力を借りるわ。)
― いいんですかい?姐さんはお嬢に ―
(いいの。)
― 姐御がいいならいいでさぁ。お好きにお使いくだせぇ。 ―
そういって、魔力残量を確かめる。…まぁ、大丈夫でしょう。今から魔法を使うと、対応されてしまうかもしれないわね…と、くすり、とひとつだけ笑みを漏らして。
「大仰なほうが、誤魔化せるでしょう。『虚偽申請の絶頂』。」
まったく意味が違うのだけれど、と思いながらも魔法を紡ぐ。部屋の中の状態を変化していないように見せかける結界の術。これで気づくことはないでしょう…。さ、準備して…。
「『土色の自画像―炸』。」
ふぅ、後はこのカードを置いて…このくらいにしましょうか。このまま窓の外に出て逃げてもいいのだけれど…とも思いつつ、窓際のカーテンに歩いていき…。魔法が紡がれる。痕跡は残さないよう、細心の注意を払って。
「じゃ、また…陽狐ちゃん。『有味無臭の影』。」
私の足から影に溶けるように消えていく。
‐YOUKO‐
私は帰る前にB棟を見学したい、と申し出た。結構な人数がA、B棟を見学希望していたみたい。意外とすんなりアカツキ先生から許可が出た…私の好きな『異世界語録』を引用して許可をくれたんだけど―
「すばらしい!『ウヌを知りワレを知れば百闘危うからず』という。見学して行きたまえ!」
―という感じだった。ああいう風に使うのね。ちょっとカッコいいかも。真宵姉様は、絶対にあちらから来ないと思う。でも、遠くない距離に姉様がいると思うと、いてもたってもいられなかった。帰り際に一緒に帰ろうと声をかけた手前、サクラちゃんも一緒。問題があるとすれば―。
「陽ちゃんごめんね、なんか私まで…。」
「見学は二人でやったほうが楽しいよ?ちょっと恥ずかしいけど。ココからは…静かにね?」
「う、うん。魔法を使ってる意味なくなっちゃうもんね。」
そう、魔法を常時使っていないと姉様に感知されるかもしれなかった。まず、私は足に魔力を展開して3ミリくらい空気を足集めて浮くという効果の魔法を発動。私一人なら今使ってる魔法を展開するだけでよかったんだけど…。サクラちゃんが一緒にいるとなると、話は別だ。サクラちゃんは気配を消すとか、そういう魔法を持っていなかったの。というわけで今は猫型機械の足と予定調和の誤射っていう魔法を発動中。前者はさっき説明した魔法だけど、後者の魔法はそれをサクラちゃんまで拡張する魔法。私に掛かればこれくらいの魔法を作り出すのは簡単!なんだけど、発動条件がちょっと恥ずかしい。私が連動させたい相手と手をつながないといけなかった。二つの魔法の連続発動になっちゃったから、燃費もばかにならないし…。
ま、私としてはそれを差し引いても、サクラちゃんに来てもらった意味はあると思ってる。ちょっと感情的になりやすいの自分でも判ってるから、第3者がいたほうが感情的に成りにくいかなとも思ったしね。B棟を姉様の魔力の残滓を辿る様に、棟内を散策していく。もうちょっと先…かな。ココは…貴賓室?
「いい?開けるよ?」
「うん。」
私は貴賓室の扉を開ける。手がちょっと震える…何を、いまさらっ!と思って一気にあけちゃった。
『ガラン!どっ!』
ヤバ、力が強すぎた?中には魔力の主が高そうなソファに座っていて。思わず駆け寄っちゃう。
「姉様!ってあれ?…寝てる…?」
「陽ちゃん急ぎすぎだよ。あれ?お姉さん…寝てるの?」
何なのかしら。思ったよりも熟睡してるわね…。怪しい…と言うよりおかしい。姉様が仮に魔法の使いすぎで休息していたとしても、『ジル』…あいつまで寝てることはありえない…私もそうだからわかる。注意深く姉様を観察する。違和感は…あった。息をしていない…上に、魔力の動きが人と、ちょっと違う…?罠、かしら。手をかけた瞬間に石化とか…嫌よ?念のために、サクラちゃんも対策しておこっか。
「サクラちゃん。ちょっと下がってもらえるかな。」
「う、うん。いいけど…?」
サクラちゃんを後ろに下げて、私は集中を始めた…。エキシビジョンのときと同じ…空気を集めて固めて、震わせるイメージ。ただ今回は全身を覆うイメージ…で…。
「二重『振動鎧』っ…。」
私の周りの空気がふいいぃん、という音を響かせ始める。魔法防御、物理防御も高めの空気振動の衣をまとっていた。この魔法のいいところは敵の攻撃を振動で大きく減衰できること。弱い魔法ならレジストできる。ただ、弱点は魔力を使い続けるので、燃費が悪いことだった。そのまま…恐らく人形であろう姉様に指を掛ける。とたんに、真宵の形状だったものがパン、と弾けて崩れ去る。弾けた姉様の破片を掬う…言い回し嫌だな…泥、か…。泥人形の魔法に炸裂要素付与…かしらね。姉様の人形…の奥に置いてあったカードを見る。…いらっとするわね。結果的に用心のしすぎだったわ。仕方がないけれど。ふぅ、と息を吐き魔力の循環を止めた…空気の鎧が霧散する。魔法を解いたことで問題ないと判断したのかな、サクラちゃんが近寄ってきた。
「陽ちゃん大丈夫?それメッセージカードだよね、何か、ってあぁ…。」
サクラちゃんが覗き込む。そこにはカードで『残念。はずれなの。』と書かれていた。この小バカにしたような仕掛は…きっとまだまだ魔力に余力があるのでしょう。魔力がココで途切れているからこの部屋にいたと思ったけれど…姉様なら魔力の痕跡も残さずにココから立ち去ることくらいはできそうよね…トラップにしてはあまり威力がないけれど、私を足止めできればいいのだから…魔力も回復しきってないのに常時発動の魔法を二つも…もう魔力も限界に近いわね。これ以上姉様を探すのはやめたほうがよさそう。
「…ふう。サクラちゃん、かえろっか。」
「うん!」
そうして私たちは貴賓室を後にしたのでした。
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‐MAYOI‐
明らかにチョイスする魔法を間違ったと後悔するけれどもう遅い。目の前で見ていたいなんて思わなければよかったわ…っ!
(陽狐ちゃんと…サクラさんって言うのね。ふ、二人ともゆっくりし過ぎよ!早くかえりなさい…はやくっ!)
― 姐さん、キャラが崩れてるっ、クレバーに、クレバーにですぜ! ―
そ、そうね。冷静に…
『がらがら、ぴしっ』
扉が閉まった…1…2…3…も、もう大丈夫…?大丈夫よね…?!限…界…っ!
「…ふぅっ!」
への字に曲がっていた眉毛…。それが元に戻ると同時に大きく息を吐く。有味無臭の影が解除されてしまう。魔力の限界だった。恐らく虚偽申請の絶頂で魔力を使いすぎたのでしょうね。非常に有用だから、修めたけれど…燃費が悪すぎる。その上、常時魔力を消費する有味無臭の影…完全にオーバーワークだった。休憩だけでは動けるまで時間がかかる…これ以上無駄なことは、できない。
― さすが姐さん! ―
(おべっかは止しなさい!…歩くのもつらいのだから…20分…休むわ。10分でジルも準備なさい…警戒は…必要ないわ。)
― 姐さん、まさか…まぁいいや、待ってますぜ。 ―
そういって、再び休息に入る…今度はただの睡眠ではなく精神世界へと潜る為…。九重家に伝わる秘術のひとつ、それを行うためだった。九重家には自身の精神に怪物や妖怪を住まわせる風習がある。妖魔術師と呼ばれる家系だった。精神にすむ怪物、妖怪は常時宿賃として、『妖術使用法』を渡す。実際にアヤカシから魔力などを受け取ることもできるけれど、そのためには自身の精神空間に怪物と私を両立させ、必要な力そのものを賭けて戦わないといけない。勝利したときに力を得られるが…負けてしまったときは賭けた力を失う…。過剰に受け取ると暴走する、という難点もあるから、できるだけ避けたい行為では有ったのだけど…。そう考えながらも精神は深く…深く。自身の意識の深淵へと…そこは黒い空間。私は自身の意識の中で生身の体で降り立つ。そこには一匹の怪物がいた。
「生身で降りてくるたぁ…。相当つらいんですかい?」
言葉にならない、怪物の声。それを感覚だけで理解できる。
「ええ。…魔力が足りないわ。ジル。あなたの力を半分、賭けなさい。私はオールインよ。」
「ほう。いいんですかい?今の状態で姐さんが負ければ…」
そう。全賭けは、ある意味禁忌。残っていれば回復もするけれど、全てを明け渡してしまえば、精神の怪物に全てをゆだねてしまうことになる。人格の入れ替わりですめばいい。ただの妖怪になって、辺りを死の世界…校舎が石化や土妖術の餌食になるレベルの事が起こる。…ジルに限ってそんなことは無い。というのは簡単だけれど、保証は無いわね。
「…いいの。この流れも何度も繰り返して…成長がないわね。私たちも。」
…理論上、負けは無いのだけれど。思考を冷やす。油断は無い?奢りは?…不意な事は必ず起こる。…いいわね。冷たい思考と湧き上がる情熱。これが私。
「あっしはただでもかまやしねぇが…契約だから仕方がねぇ…。行きやすぜ!姐御ォ!」
かちん…わざと言っているわね。本気が出せるよう、にかしら。意識を思考モードから一瞬で戦闘へ切り替える。不十分な魔力?でなければこんな事しない…。決して怒っていないけれど、意識が白く染まる。
「いいでしょう。欲深き化け物に私の全力を魅せてあげる…。毎回毎回…姐御はやめなさいと言っているでしょう!こぉんのフェチモンスターが!『帝釈廻天-槍』!」
…決して怒ってはいないわよ?予想以上の魔力が光を喰らう重力の刃を槍に変化する。ほとんど全開で魔法を唱えた漆黒の槍。そのせいで魔力不足…『拘束移動』に魔力を回せない。恐らくだけど、この状態のまま使える魔法は1つね…。私は根元を持ち地面を蹴る。そのまま視線を隠しジルへと突っ込む。
「はっ!様子見に回す魔力もねえんですかい!舐めすぎだぜ姐御!」
ジル…目の前の怪物バジリスクキング。這って歩くはずの砂色のモンスターが私の背丈の半分もある怪物…は予想以上に早く体を真上へと翻し…妖気と魔力を放つ。
「『石化の魔王眼』だ!綺麗に散ってくだせぇ!」
生半可な魔力ではない…正に魔王の瞳という名にふさわしい威力。黒の世界が一瞬真っ白に染まるほど…視線を合わせるまでも無く魔力を受けた部分は石と化すほどの力を持っていた。しかし、その光は私には届かない。
「『闇の盾-衣』。ふふ、便利よね…光を吸収するこの力…。」
闇の盾を全身に展開する…。陽狐ちゃんの振動鎧と理論は同じ…だけど、物理防御と光の吸収に特化された衣。これと帝釈廻天の先端、大きく開いた槍の部分で全身を覆い、光を全て吸収する。
「これで条件はイーブンかしら?」
ジルの魔光を吸収し、魔力は全開時の4割近くとなっている。これなら対等に戦えるわね。…と思ったのだけれど。やっとジルが本気になったみたい。雰囲気が違う…。
「はっ!そんな尽き掛けの魔力で勝っても嬉か無いんでさぁ!さぁ、ハンデはやりやした。こっからが本当の戦いですぜ!姐御!」
ぞくり、と背筋が凍る。…見下されているわ。
かつてのジルは傲慢不遜だったと聞く。鹵獲されるまでに何十人も犠牲にしてやったとは本人の弁。眉唾だと思っていたけれどこの圧力…本当だったと再認識しちゃう。力の無い者だったら腹も立つのだけれど。王者クラスの妖…ゾクゾクと背筋の冷え具合に対して闘志が燃え上がる。後でジルに聞いたのだけど…この時の私はわくわくしてるように見えたらしいわ。
「上等…行きますわっ!」
目に物見せてあげる。足に魔力を集める…少しだけ妖力を加えることで発動するのが拘束移動だった。実は妖術スキルのひとつ、だからこそ口に出す事無く発動が可能。私のお気に入りの術ね。音速は超えていないけれど常人に反応できるスピードではない。無言でジルの背後に回って槍の一閃。でも、これは伏線。多分だけど回避されるんじゃないかしら。
「ははっ!いいねぇ…こうでなくっちゃいけやせんぜ!だが姐御…それは悪手ですぜ!『土色の自画像―石・滅!』」
「っ!そんなっ!」
当たれば切り裂く威力の重力の槍…でもそれはメコォ、という音とともに、振りぬかれる。泥人形…と思ったときには遅く槍の先は灰色に染まりぼろぼろと崩れていく…石化に破滅の力を混ぜている…石化破壊っ!ぎりぎり予想の範囲内…けど、まだ伏線が必要ね。手を離し後ろへ飛びのく…予定通りであれば…。
「…もういっちょ!『土塊発破!』姐御でもこれは避け切れませんぜ!」
「くっ!し、しまっ!」
地面がいっせいに炸裂し…直撃を受けた足の、闇の衣が吹き飛ばされてしまって…同時にビシ、っという音が足から伝わる。石化は…まだ、足首、までね…。でも…魔力に焦点を当てた爆破だったのか、闇の衣も石化を相殺するのが限度で大半が霧散していた。ジルに気づかれないように、周りを見回す…よし、何とかなりそう。さぁ、後はこの演出で…。身体を動かそうとして、動かせない私に気づく。
「か、体が動かせないっ?!」
「爆発に仕込んだ『石化影』でさぁ、これでも相当なレアスキルでしてねぇ…影を魔力で石化させ、頭ン中に魔力が流し込まれているでしょう?その誘いに乗った瞬間が、姐さんの最期。でも姐さんは瞳も満足に動かせない…違いやすか?」
頭の中が弄られる感覚…。必死に耐えているけれど、この時点でジルは私を詰んでいると思っているのでしょう。ジルが笑っているのが感覚でわかる…ここで使う妖術スキルなど私達二人にはばればれ。
「さ、言い残すことは有りやすか?『誘惑石化―続』。」
「ふあああぁぁっ!!ジ、ル、さまぁ…」
身体の中の血液が沸騰する感覚…。蕩ける顔に反し、自分の身体を強張らせる…完全に意識はジルの虜になってしまっていた…意識にか霞がかかって、血液の熱が引くとともに全身が石と化して行く…電源が落ちる感覚…潮時かしら。隠していた魔力を開放して、ジルの周囲に重力がうねる空間を展開して。
「この手間で負けたら洒落に成らないわね。『闇の盾-収束』。」
「なっ!完全石化状態ですぜ?!こんな状況で魔法が使えるわきゃねぇ!」
まぁ、普通はそう。ここまで相手を誘導したのだから、私としては当たり前なのだけれど。
「ばかね、人形の真後ろで有味無臭の影を使ったのよ。妖術スキルは…」
「『切り札だから無詠唱で使ったほうがいいですぜ』とはあっしの言い草でしたね。いや、お見事でさぁ。あっしの負けです。魔力も妖力も好きに使ってくだせぇ…。」
魔力を妖術スキル『泥人形劇』でさも戦っているように演出し有味無臭の影を使いあらかじめ隠れるという2段構えを悟られないように攻め立てる、という算段だったのだけど、うまくいってよかったわ…。影がある場合、有味無臭の影は魔力のみで発動できる単純な魔法なのだけれど、実は、影の無い場所でも妖術スキルとして発動が可能な珍しい術だった。
「情けを掛けられてこの展開…私も精進が足りないわね。」
目が覚める。ちょうど、20分だった。感覚を確かめる…魔力も妖力もほぼ全開。立ち上がる…身体が軽い…。でも、今日はもう戦わないほうがいいわね…。私は貴賓室を後にする。
「陽狐ちゃんに気づかれなくて本当に良かったわ。」
― はっ、早く謝らないから、謝りづらいんでしょう?なんなら、あっしが姐さんの代わりに… ―
(いい、と言っているでしょう?それにしてもあのソファ、ふかふかだったわね!実家に居るときもあんなに身体が沈むほどいいソファなんてなかったもの!いいわぁ、これからも使いましょう!勿論誰も居ないときに、許可を取って、ですが。)
― 姐さん…また素が出ていますぜ… ―
そんな内在する怪物と会話をしながら後者を後にする。割と休憩で使うようになったから、いつも貴賓室で寝ている魔女が居る、といううわさが立って、貴賓室の魔女、と呼ばれるのはもう少し後の話。
「さぁ、次は誰と誰の物語なのかしら。…私もまだ、強くならないといけないわ。」
その独り言は、虚空へと消えて。
急いで書きすぎた、改稿するかもしれません。