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腐れチキン野郎ですが何か?  作者: ライノル
3/3

冒険者ギルド到着

ケンゴ達二名がクリスタルのある安全地帯に着いたのは一時間と15分後、ケンゴはLv4になっていた。


「へぇー、これがクリスタルとかいう奴ですか。」


「そうよ。破壊不可らしいけど、あんまり無茶な事はしないでね。」


「はいはーい。」


「クリスタルの使用者と触れていた人は一緒に移動できるようになってるから私に掴まっといてよね。」


そう言ってエーラはクリスタルに触れるが、ケンゴが一向にエーラに掴まろうとしない。


「……?どうしたのよ?」


「いや、テレポート系と言えば岩の中に転移しちゃって死ぬというオワタパターンが…」


「ないわよ。そんなことになるなら誰も使ってないでしょ。ちゃんとダンジョンの入り口の半径50m以内に転移するわ。」


「えと…その50mが人で埋められた場合は?」


「さぁ?そんなことになったことがないから知らないわ。」


「俺はここから頑として動かないことを決めた!!死んでも動かんぞ!……やっぱ死ぬのは嫌だから死にそうだったら動く!!」


「めんどくさいわねぇ…ほら行くわよ。」


へたりこんだケンゴの首根っこを掴んでエーラがずるずると引っ張る。


「嫌だぁぁ!俺はまだ死にたくないぃぃい!」


「はいはい、あんたゾンビで一回死んでるでしょ。男なんだからビビらない。」


エーラはずるずるとケンゴを引っ張ったままテレポートクリスタルに触れて『脱出』と口にした。


次の瞬間には二人の見る景色は変わり森の中に転移した。


「ほらね、そんなことなかったでしょう。」


エーラが振り替えるとそこには真っ青な顔をしたケンゴが地面に座りこんでいた。


「姐さん、マジでメンタルパナイっすわ…。」


「貴方が腐れチキン野郎なだけよ。」


ぐったりとしたケンゴを横目にエーラはスタスタと歩き出した。


「ちょっ、置いてかないで!!」


それからモンスターとの出現もなく森の中を15分程度進むと視界が開けて町が見えてきた。


「うわー…ベタな中世ヨーロッパ風な建物が並んでるー。って、中世ヨーロッパって衛生面がすこぶる悪いって聞いた気が…それにこの世界の病原体に俺って一切免疫がないんじゃ……アバババババババ!!」


「ゾンビって風邪引くの?」


さも深刻な事に気付いてしまったかのようにブルブルと痙攣するケンゴに冷静なエーラの一言が放たれる


「はっ!?そうか!俺って腐れチキン野郎…じゃなくて、ゾンビチキンマンだった!」


「分かったら立ち止まらないでキリキリ歩く!もう、ただでさえ面倒なのにこいつの性格のせいで更に面倒だわ!」


プリプリと苛立ちを露にするエーラが少し早歩きになり、ケンゴも慌てて着いていく。


町の中に入り周囲はだいぶ騒がしくなっていた。商売人たちの張り声や井戸端会議に洒落混む奥様方、何処かの裏路地から聞こえる猫の鳴き声、そんな雑音が町を包んでいる。


「思ってたより綺麗な町ですね。」


「世界システムの内の町システムを使ってるからゴミとかは勝手に浄化されてるのよ。それと、なんでいつまでも敬語なの?」


「他人には心の壁を張って対せよと心が叫んでるんです。で、町システムとは?」


「世界に町として認識させることで使えるシステムよ。ちょっとした手間のかかる儀式をすれば出来るんだから町システムのない町はほとんどないわ。細々とした機能はあるけど冒険者が間近にする機能なんて浄化ぐらいね。」


「なるほど。」


会話が途切れて数分経つとエーラがやや大きめのレンガ造りの建物の前で足を止める。


「ほら、ここが今後あんたが世話になる冒険者ギルドよ。看板の部分に竜と三本の剣が描かれているでしょ、それが冒険者ギルドのマークよ。」


エーラが指差す看板には確かに右向きの竜と交わった三本の剣が描かれている。


「それじゃ案内はここまでね。後は自分で頑張って。」


「いやいやいやいや、そりゃねぇよ、先輩!ちゃんと世話が出来ないなら金魚すくいなんてするんじゃないって言葉があるじゃないですか!」


「少なくともこの世界にそんな言葉はないわ。中に入って受付と数言話して後は受付嬢の説明を受ければいいんだから問題ないわよ。」


「初対面の見知らぬ人間に自分から話しかけろと!?俺に死ねというのか!」


エーラに突き放されたケンゴが駄々をこね始める。ギルドの中に入っていく人が何事かと一瞬目を向けるがお構いなしである。


「死んでくれるならそれが一番てっとりばやいわ。」


「冷てぇ!冷てぇよ!先輩!初対面の人間なんてよっぽど情報持ってないと話し掛けらんないよ!細胞レベルで研究しろって言うのか!?」


非常に面倒なケンゴにエーラが面倒そうな嫌そうな顔で答える。


「何よ、私とは普通に話してたじゃない。」


「いや、あの程度の剣速だったらどうとでもなるから怖くもないし…」


「格下に見られて訳ね…死ね、腐れチキン野郎。」


「謝るから!謝るから着いてきてよ!一人だとオロオロしちゃうけど二人以上だと割りと普通に話せるから!」


「……」


「こうなったら催眠術で…」


「分かったから止めなさい。」


ついにエーラが根負けした、というよりケンゴの脅迫に屈した。


エーラがギルドの扉を開け先行する。ギルドの中はガヤガヤという騒音に占められ、むさ苦しい男達が酒を酌み交わしている。


「おっ、エーラ!今日は男連れかい?」


入り口の近くにいた大柄の男がアルコール臭い息を吐き出してエーラに話し掛けてくる。


「違うわよ。ただのお守りみたいなものよ。」


エーラは大柄な男を軽くいなしながら奥へと進んでいく。ケンゴもオドオドしながらそれに付いていく。やがて受付嬢の前につくとエーラはケンゴの首根っこを掴んで前に出して受付嬢に話し掛けた。


「こいつの冒険者登録お願いできる?」


「あら、エーラ。こちらは彼氏さん?中々格好いいわね。」


受付嬢がケンゴの顔を見て微笑む。


「違うって。はぁ、こういう面倒臭い勘繰りされたくないから入りたくなかったのよ。私は国籍なしの身分なしの迷子を届けに来ただけよ。」


エーラは心底面倒臭そうにケンゴの簡単な説明をして、冒険者登録用紙を受付嬢に求める。


「はいはい、相変わらずせっかちね。もっと気楽に生きてもバチなんて当たらないわよ。」


「こういう性分なのよ。ほら、これにさっさと記入して。」


エーラが受付嬢から受け取った冒険者登録用紙をケンゴに手渡すが、手渡されたケンゴは数秒冒険者登録用紙を眺めると固まってしまった。


「…」


「どうしたのよ?」


「失念してたけど文字が読めない。」


「…あぁ。」


「ちょっと文字の一覧とかないかな?」


「あるわよ。一応冒険者登録用紙等は直筆でないといけないから簡単な説明と文字の表が書いてあるのが置いてあるの。」


受付嬢は引き出しから数枚の紙を取り出してケンゴに渡す。


「あぁぁ…あぁ…有り難うござざいます…。」


軽くパニクりながら数枚の紙を受け取ったケンゴは何事かを呟きながら紙を読み始める。


「文字が読めないと契約書で不利なことになって一生奴隷にされる。刺青入れた人達に絡まれて内臓売ることになる…。」


酷く震えながら読むこと一分、ケンゴは受付嬢に紙を返却した。


「…まさか覚えたとか言わないわよね?」


「覚えましたよ。命懸けでね。人間は命懸けで打ち込めば色々なんとかなるもんですから。」


「いや、それでも無理だと思うんだけど…」


エーラの突っ込みをスルーしてケンゴが受付嬢に話し掛ける。


「すみません、受付嬢さん、何か書くものを貸して貰えますか?」


ケンゴの言葉に唖然としていた受付嬢が意識を取り戻しインクを着けた羽ペンをケンゴに渡した。


ケンゴさらさらと書き込みを終えると羽ペンと冒険者登録用紙を受付嬢に返却する。


「えーと、ケンゴ キョウゴクさんでいいのよね?」


「はい。」


返事を聞いた受付嬢は先程とは違うインク入れに羽ペンを着けてカードのようなものにケンゴの名前を書き込んだ。


「…よしっと。これがケンゴ君の冒険者カードになるわ。」


「ありがとうございます。」


差し出されたカードを受け取りながらケンゴは受付嬢に礼をした。


「ずいぶん慣れるのが早いじゃない。これなら最初から私はいらなかったんじゃない?」


「何を言ってるんですか、話し掛けるときが一番緊張するんですよ。それに受付嬢さんの情報をある程度指紋等から知れたからこその態度ですよ。」


「…気持ち悪っ。」


「酷い!?」


エーラは全力でケンゴにドン引きした。


ちゃんと説明してたと思うけどステータスは世界のシステムでプラスされている能力値であって基本スペックとは別物だよ。

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