異世界にて目覚めました。
楽しんで読んでいる振りをしても無駄だからな!心のなかでマジ文才ないわぁとか思うんだろ!だから俺は引きこもっとく!
人というものは一説というより一般的には猿の同類が進化してきたものだと言われている。
物を掴むために発達した手や、二足歩行するために進化した足、他にも色々あるが話したいことの要点だけ伝えると生物が進化するのには理由があるということだ。
環境が変わってだとか、棲みかを追い出せれてだとかそんな理由は多数あるが、必要性があったからというものが大部分である。
では、生物がもっとも必要性を感じる時はいつか、それは恐怖を眼前にした時だ。
恐怖を感じる者は他より進化しやすい。そんな理の元に臆病者の人間がこの世に産まれた。
これはそんな少年の転生物語である。
* * * * * *
「…丈夫………てる?」
少年、怯極 犬子は水面下にいるかのように鈍く響く声を微かに聞き取った。
段々と覚醒していく意識を感じながら高音の女性らしい声を聞き取り、理解しようとする。
「冷たい…。これは駄目ね。とりあえず」
声の主が自分の手に触れるのを感じとる、人の温もりに心が暖かくなる。
「燃やしておきましょう。」
そう、燃えるように暖…か…く……って
「まだ生きてますよ!?」
「えっ!?キャッ!!生きてた!?火消さなきゃ!!!」
トダバタと暴れて火を消そうとするケンゴに驚愕した少女は己の持っていた大きめのリュックから水筒を取り出してケンゴに水を掛け、消火する。
息も絶えだえなケンゴは一応消火されたことに落ち着きを取り戻して火に焼かれ黒く焦げ付いたTシャツの袖を触りながら周囲を見回す。
薄暗い洞窟のような見覚えのないような場所に何故こんな場所にいるのかと意識を失う前に何があったか記憶を探る。
「む……思い出せないな。」
別に記憶喪失とかいう訳ではなくすっかり頭から抜けているような感覚であったが、記憶力は悪い方ではないので不思議な気分であった。
「いやー、ごめんね。体も冷たいし心臓の動く音も聞こえなかったから死んでるのかと思ったよ。ていうか、そんな状態でどうやって生き返ったのか不思議なんだけど…。」
少女が申し訳なさそうに後頭部を触りながらケンゴに謝罪する。少女の生き返るという言葉を聞いたときケンゴは微かに自分は死んだことがあるという記憶が沸き上がった。
それ以外の記憶は戻らないがその記憶は事実だという謎の確信があった。
「ここは?」
「ん?ここはアウサルのダンジョンの中だけど…貴方はなんでこんな所に?何の装備もなしにダンジョンに潜るなんて自殺でもしにきたの?」
「…ダンジョン?」
「もしかして何処かに頭でも打った?ダンジョンのことを忘れるなんてよっぽどよ。ちょっとステータス開いてみて。混乱の状態異常にかかってるかもしれないわ。」
次々と日常の中ではゲームの話くらいでしか使わない単語の数々にケンゴの頭にいくつものクエスチョンマークを浮かび上がらせた。
そもそも死んだ記憶があるのに姿を同じくして生きている理由が分からない。これが赤ん坊にでもなっていたなら転生という概念が本物であったと認めるのみなのだが、生命力溢れる少女が目の前にいるのを見ては死後の世界なんてことも信じられない。
「ここは地球じゃないんですか?」
「だからアウサルのダンジョンだって言ってるでしょ。ほら、さっさとステータス開いて。」
「ステータスを開く…?」
「…本格的な記憶喪失かもしれないわね。ステータスオープンって口にするか念じれば開くから。」
自分はゲームの世界に入り込んでしまったのかと思案し始めるが、少女が促すように視線を向けるのでステータスオープンと口にする。
すると、目の前に薄く青い半透明なプレートが現れた。
* * * *
名前 ケンゴ キョウゴク
種族 チキンゾンビマン
Lv 1
HP 15
MP 8
STR 6
INT 3
DF 5
MDF 3
称号
『転生(?)者』『進化する者』
スキル
逸脱者Lv1 アイテムボックス
* * * *
ケンゴが動き出すには数秒の時を要した。ケンゴが最も注目したのは種族の欄である。
「ゾンビチキンマン……腐れチキン野郎…orz」
ケンゴは膝をついて崩れさった。精神的ダメージ999である。
「ちょ、どうしたの!?変な称号が着いてたの?」
「いや…種族名が…」
ケンゴは未だ腐れチキン野郎から立ち直れない。
「種族名も覚えてないなんて本当に記憶喪失みたいね。」
憐れみの視線がケンゴに注がれる溢れる涙が止まらない。
「どんな種族名だったの?クズ人間とか?」
「…ゾン……キ……ン」
「えっ…?」
「ゾンビチキンマンです…。」
「ゾンビ…ってモンスター!?騙したわね!!」
少女が飛び上がりケンゴに懐に差していた剣を向ける。剣を向けられたケンゴはその事実を認めると恐怖を覚えた。
「剣…刃物…斬られる…腕を斬られたら…斬られたら…」
少女はブツブツと何事かを唱えるケンゴに苛立ちを覚えてケンゴに斬りかかる。
「油断してたわ、ダンジョン内の中でも安全地帯だけはモンスターは近寄らないって話だったのに!」
「就職に影響が出て周りから無職と蔑まれるじゃないかぁぁー!!」
全く可笑しいベクトルの恐怖を感じたケンゴは素早い動きで少女の剣をかわす。
生前のケンゴは極度の臆病者で些細なことでも気にし始めたら止まらなくなり努力のベクトルが恐ろしいほど真上に上がりそれこそ命懸けで恐怖を回避してきた。例えば駅のことであるが、ある日友人達と改札を通り抜ける時に引っ掛からないかと心配になり新幹線より速く走って目的地に行ったりとおよそ常識というものを母親の腹の中に置いてきたようなことをするのだ。
「くっ…全然当たんないっ!」
ケンゴは次々と繰り出される少女の剣撃を右へ左へと避け続け次第に残像を作り始める。
「これは…!暗黒魔法の『ドッペラー』!?こんな初級ダンジョンにこんな奴がいるなんて!?」
「「「させない!俺の就職活動の邪魔はさせないよ!!」」」
「しかも、意味分かんないこと口にしてるのが更にムカつく!でも、この強さ…間違いなくB級以上のモンスター。…命に掛けても奴を倒すか一度撤退してギルドに報告しなきゃたくさんの犠牲が出る…。」
少女がそう言った後ピタリとケンゴ動きが止まった。
「い…命を掛ける?ば…馬鹿な事を言うんじゃない。」
ゆるりゆるりと近づいてくるケンゴに少女は後ずさる。
「ここまでなの…」
異様な雰囲気を醸し出しながら近づいてくるケンゴに少女は命の危機を感じた。
「あんたが死んだら呪われちゃうかもしれないじゃないか!もう一回考えよ。お兄さんと一緒にもう一回考えてみよ!」
「……あなた何がしたいの?」
ケンゴの奇妙奇天烈な行動に少女はふと疑問が口から出てしまう。本来ならモンスターとの戦いにおいてモンスターと会話してしまうことは動揺を生んでしまうため極力しないことが鉄則である。
「老後まで保証された生活をしたいです。」
「……」
「……」
ケンゴのその言葉を皮切りにお互い閉口した。
すんません…虚勢はりました…。駄目な作者が書いてますけど頑張って読んでください…。