始まり恥まり
主人公になりたい。
この感情を持ったのは、たしか中学3年の6月ごろだっただろうか。
長年続けて来たサッカーを辞め受験勉強を始めた僕は勉強の合間の息抜きにと思い小説を読んでみることにした。
今までサッカーばかりで文学なんてものに全く興味のなかった僕は、学校帰りになんとなく寄った本屋でアニメ化決定と大々的に書かれている平積みにされていたライトノベルを手に取ると中を確認することなく買って帰った。
そして......はまった。
初めて買ったそれは異世界ファンタジーもので主人公がとにかく強くてかっこよかった。
息抜きで読み始めたはずのラノベは次第に量をまし趣味へと変わり、僕の受験勉強の妨げとなった。
結果、成績は下がる一方。
偏差値の高かった志望校を諦め競争率の低いあまり人気のない学校に行くことになった。
親にあきれ果てられ、担任の先生を失望させてしまっていたがそれでも僕はラノベを読むことをやめられなかった。
女の子が困っているときに救い出すことができる力!
挫折しながらもなお立ち向かっていくことができるその勇気!
相手を黙らせるかっこいいセリフ!
どれをとってもキラキラと輝いて見えて気持ちを高ぶらせてくれた。こんな風になってみたいと思わせてくれた。
だけどそんな感情が僕を苦しめていった。
どんなに頑張っても異世界に行けるわけでもない。
かわいい女の子を救い出すほどの事件が起こるわけでもない。
唯一主人公らしいところと言えば妹がいるくらいだった。
2か月ほどたち無事合格通知をもらっていた俺の高校生活がついに始まった。
ラノベの主人公と言えば高校生!
高校に入れば女の子と仲良くなったり、優しくしとけばとりあえずフラグが立ち、何かの事件に巻き込まれたり、女の子の特別な過去を知ったりできるイベントが起きる、主人公になれる......と思っていたが......。