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元ヤン君と天使な彼女  作者: Rewrite
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8話

 8話



 四時間目の授業は地学だ。

 担当は臼井うすいとかいうヤツで名前通り髪が薄い。

 まるでハゲるために生まれたような人間だ。

 俺が窓の外を見ながら眠気に身を委ねて睡眠をとろうとしたら、臼井のヤツが注意してきた。


「咲良! ちゃんと授業受けんか!」

「すんませーん」


 俺が適当に謝ると逆にそれが気に触ったのか、臼井がチョークを振りかぶる。

 その瞬間みんな一斉に頭を伏せた。

 臼井は今まで何回かチョークを投げたが、一発も狙ったヤツに当たらなかった。

 だから狙われている俺以外全員が頭を伏せている。


「くらえぇぇぇぇ」


 教師あるまじきことを言いながら、チョークを投げてくる。

 俺は動かない。

 動けば逆に当たりやすくなる。

 結果的にやはり俺には当たらなかった。

 いや、教室にいるヤツには当たらなかった。


 なぜなら…チョークは廊下に飛んで行ったからだ。


 普通ならありえないが、臼井はその固定概念を壊すほどの腕の持ち主だ。

 どうせならその力をもっと他のことに活用してほしい。

 廊下から誰かの悲鳴らしき声が聞こえた。

 臼井が慌てた様子で廊下へ向かう。

 教室の奴らも一様に近くの奴らとなにがあったというように会話している。

 俺は自分には関係のないことなので大人しく机に突っ伏して昼休みまで仮眠をとることにする。


「さあ。寝るか」


 俺がそう言って寝る体制に入ろうとしたところ、すぐに臼井が戻って来て「お前のせいで関係ない生徒に当たってしまったではないか!」と俺に責任をなすりつけ始めた。

 さすがにクラスの奴らも「それはないだろ」といった顔をしている。だが、言っても意味がないことをみんな知っているので誰も口にしない。


「いや、俺関係ないだろ?」


 無駄だとは思うが一応反論しておく。


「いや、お前のせいだ。お前が責任をもって保健室に連れていけ」


 仕方なく俺が席を立つと白鳥がドンマイとジェスチャーしてきた。

 だが俺は授業がサボれるのでラッキー、と思いながら廊下にでる。

 教室を出るとそこには、女生徒が倒れていた。

 人形みたいな女の子だ。

 つまり―――この前のヤツだ。

 俺はとりあえず辺りを観察する。

 彼女は壁を背にして気絶していて、額にはチョークの粉が付着していた。

 どうやら臼井の投げたチョークは額に当たったらしい。

 そして俺は一つの結論に至った。

 悲鳴が聞こえてきたことから、彼女はチョークを避けようとした。

 避けた先は壁で頭を打ち、痛がっているところに追撃のチョークに当たって再び頭をぶつけた。

 おそらくこんなとこだろう。

 臼井は保健室とか言っていたが、そこまですることはない。と俺は判断した。

 彼女の側に膝をついて、彼女の柔らかそうな頬を叩く。

 起きない。

 少し力を入れて叩く。

 起きた。やっと起きた。


「うー、頭がいたいですぅー」


 彼女は頭を抑えて、顔を少ししかめながら、顔をあげた。


「よう。目覚めも気分はどうだ?」

「あっ! 悪魔さん」


 彼女が俺に気づく。


「なんでここに悪魔さんが?」

「学校だから」

「いや、そうゆうことじゃなくてですね」


 当たり前のことを言ったつもりが、少し呆れられてしまった。

 くだらない冗談はやめて本題に入ることにする。

 あぁ。めんどくせー。


「臼井の投げたチョークに当たった。それでお前は壁に頭ぶつけて気絶した」


 説明が面倒だったので、必要最低限の説明をなるべく短くまとめて言った。

 さっきのなんでここに居るかには答えない。

 話すのがめんどうだ。


「そうだったんですか。わたしはまたドジを…」


 落ち込んでしまった。

 おそらくホントのことだから仕方がない。

 でも、今回のことは悪いのは臼井とコイツの運なので別にコイツは悪くないと思う。

 適当に慰めようかと思ったが、言葉が浮かばなかった。

 それほどまでに、俺のコミュニケーション能力は貧困なのだ。

 慰められなかったが、彼女はへこたれなかった。

 次の瞬間には、この前の笑顔に戻っていた。


「また悪魔さんに助けられちゃいましたね。ありがとうございます」

「あぁ。ホントにな。気をつけろよ」

「はい!」


 柄にもなく、彼女を心配しているようなことを言ってしまった。

 彼女と関わるとなぜが調子が狂う。

 いつものひねくれた自分でいられなくなる。


「どうかしましたか悪魔さん?」

「いや、なんでもない」

「そうですか?」


 どうやら少し間、黙ってしまったみたいだ。

 彼女はまだ少し心配しているようだが、もう一度、念を押すと安心したみたいだっだ。


「じゃあ。もう教室に戻るわ」


 俺が背を向けると、彼女は俺の制服の裾を掴んだ。

 今日はやたら裾を掴まれている気がする。


「悪魔さんはさっきわたしをお前って呼びましたよね?」

「それがなにか?」


 疑問に疑問を返した。名前を知らないんだから仕方がないだろうに。


「私には日向ひなた自由みうという両親にいただいた素敵で大切な名前があります!」

「だからなんだ?」

「名前で呼んでください」

「はあ!?」


 驚きはしたもののどうにかすぐに冷静さを取り戻す。

 名前の件は断ってもよかったが、この前のように不毛な会話になるだけだろう。

 ならこちらが大人になって折れるしかない。


「わかった。日向。これでいいか?」

「はい」


 また笑顔で返事してきた。

 笑顔がよく似合うヤツだと思った。

 少し見とれてしまいそうになったが、頬を叩いてすぐに気を持ち直す。

 そして今度こそ戻るために口を開く。


「じゃあな」

「また今度です。悪魔さん」


 彼女は後ろを向きながら手を大きく振って走って行った。

 あんなに走って転ばなきゃいいが。

 ―――あっ!転んだ。

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