7話
7話
三十分程かけて学校に着いた。
道中は最悪だった。
アネキの知り合いがみんなアネキに声をかけ、アネキがやたらと俺を紹介して俺が怯えられ、アネキが弁解をして、最後は俺の笑い話をしてその場を和ませようとする。
この繰り返し。
まだ一日が始まったばかりだというのに俺の精神は完全に疲弊しきっていた。
それでもどうにか学校についたのだ。
これで一旦アネキから解放される。
下駄箱でアネキと別れ、自分の教室へ向かう。
大きくため息をつきながら教室に入ると、クラスのヤツがいくつかのグループを作り、談笑している。
もちろん俺はそのグループに入るつもりがない。
自分の席に座って担任の鳳を待つことにする。
「オッス! 咲良元気してるかー」
誰か話しかけてきたようだが、俺は無視をする。
俺に友達はいない。
「おい。無視はないだろ無視は」
スルー。
「しょうがない。俺の存在に気づいてくれないならあきらめて…」
やっとあきらめてくれたらしい。
そうだ。それでいい。さっさと、どっか行ってくれ。
「あきらめてズボンを脱ぐしかないか」
目の前の相手はベルトに手をかけ始めた
「なんでそうなる!」
我慢しきれなくなった俺はついツッコミを入れてしまった。
「やっと俺を見てくれたか」
勝ち誇ったような顔で俺を見てきた。
ちなみに手は俺の脇腹をつついている。
そして後悔しても、もう遅い、とばかりにその相手は話しかけてくる。
「まったく、なんで毎回無視すんだよー」
「前から言ってるだろうが、俺は誰ともツルまない」
このさっきから俺の脇腹を執拗につついてくるのは、同じクラスの白鳥彩斗
他のヤツは俺を怖がって話しがけないどころか、近くを通りもしないが、コイツは違う。
ことあるごとに俺に話しかけてくる。
うっとしいことこの上ない。
「そんなこと言わないでさ、俺と仲良くしようぜ!」
親指を立てながら決め顔で言ってくる。
なぜだかわからないがすごい腹が立つ。
俺は少しイラついた口調で返事をする。
「断る!」
「そ…そんな…」
俺の即答が心により深くダメージを与えたのか、白鳥が絶望したような顔をした。
「やっぱり…ズボンを脱がないと俺と友達になってくれないんだね」
白鳥はまたズボンのベルトに手を伸ばし始めた。
「だからなんでそうなる!」
周りのヤツらが俺たちを変な目で見始めた。
俺はクラスのヤツと関わりを持ちたくないが、変な目で見られたいわけじゃないので対策を打つ。
「わかった。友達になってやる」
「ホ……ホントか?」
「あぁ」
「よっしゃぁぁぁ!」
何が嬉しいんだか白鳥はガッツポーズをとる。
「だから俺を気遣って普段は話しかけないでくれ」
「あぁ」
そう言って、白鳥は自分の席の方へ回れ右をする。
よし! 作戦は成功だ。俺は心の中でガッツポーズ。
あいつがアホで助かった
俺がこれでこれからは平穏な日々がくる。と喜んでいたら、白鳥がすごい勢いでこちらを振り向いた。
「ってそれ友達じゃないじゃん!」
「ちっ! 気づきやがったか、バカだから気がつかないと思ってたんだが」
「そりゃ気づくわ!」
そんなくだらないやり取りをしていると、丁度いいタイミングで鳳が教室に入って来た。
これで白鳥から解放される。
「おはよーたまちゃん先生」
「たまちゃん、おはよー」
クラスのヤツらが鳳に挨拶をしている。
ちなみに「たまちゃん」とは鳳のあだ名だ。
鳳が来たので白鳥も自分の席に戻る。
いつも通りの朝のHRを終え、いつも通りの授業が始まる。
またいつも通りの学校が始まった。




