6話
6話
携帯からアラーム音が鳴り響く。
まだまだ寝ていたいところだが、携帯のアラームが起きないとアネキがまた肘を入れに来る時間帯だとうるさいぐらいに教えてくる。
「もう朝かよ。早すぎんだろ」
俺はなんだかんだ言いながらも身体を起こす。
窓からは今日も嫌というくらいまぶしい日差しが差し込んできている。
カーテンを開けると俺を太陽の日差しが襲った。
すぐにカーテンを閉じると下の方からアネキの声が聞こえてきた。
「竜也ー起きなさーい! また肘打ちくらいたいー?」
案の定今日も起きなかったら肘打ちを入れに来るつもりだったらしい。
アラームをしておいてよかったと思う瞬間だ。
でも、それでも部活もやっていない俺にしたらこの時間帯に起きるのは早すぎる。
今の時間は七時で家から学校まで三十分なので家は八時ぐらいに出ればギリギリで遅刻せずに学校に着く。
なので朝飯のことを考えても俺は後三十分は寝られるのだ。
だが、アネキはそれを許してくれない。
「今、起きた。着替えて下行くわ」
今日はあれから一ヶ月が過ぎ、今日は五月十日。
ゴールデンウィークも終わり次の長期休暇は夏休みだ。なんて考えながら俺は制服に着替えてカバンを手に食卓へ向かう。
朝食を食べていると、アネキがいつもの質問をしてくる。
「あんたいい加減1人ぐらい友達作ったら?」
毎日この質問を朝と夕の食事中に聞かれる。
俺はあれからも友達を作らなかった。
作ろうともしなかったが、相手も俺と目が合うとすぐに視線を逸らす。
初日となにも変わらなかった。
変わったことと言えば、みんなが俺の近くすら通らなくなったくらいだ。
つまり初日以上に俺は恐れられていた。
特に何かしたわけでもない。
おそらく俺の態度や顔つきから、ヤンキーとでも思われているのだろう。
「しつこいなー、いいんだよ。俺は一人がいいんだ」
俺はいつものように素っ気なく返す。
この質問に対する俺の決まった答えだ。
それに今の状態から友達を作るのは不可能だろう。
仲良くなるために話す前に逃げられる、何かをする前から何もできないことがわかっている。そんな状況で何をどうしろというのだろうか。
答えは簡単。
あきらめて現状を受け止めその状況に慣れること。これが俺が中学時代に学んだ人との最初減の付き合い方だ。
「まったく。少しはお姉ちゃんを安心させなさいよ」
「勝手に心配してるだけだろうが。先に出るぞ」
俺は食器を片付け、カバンを持ち、玄関に向かおうとする。
「ちょ…待ちなさい!」
アネキが俺の制服の裾を掴んできた。
玄関へ向かおうとしていた俺の足が強制的に止められる。
「なんだよ。俺が友達作らないのが気にくわないのか?」
「違うわよ。今日はお姉ちゃん部活休みなんだから、一緒に登校しなさい」
アネキは部活がないとき、やたら俺と登校したがる。
理由はわからない。何度聞いてもはぐらかされてまともに取り合ってくれないのだ。
学年が一つ違うため、去年は別々に登校していたが、同じ学校になるとやっぱり一緒に登校したいらしい。
「嫌だ! こんな歳になってアネキと一緒に学校だなんて恥ずかしいだけだ」
だが、俺は拒否した。
恥ずかしいものは恥ずかしい。
それに学校でまで俺の時間をアネキに取られたら俺はいつ一人の時間を過ごせるというのか。
「なんか言ったかしら?」
アネキが指を鳴らしながら俺に問いかけてくる。
アイアンクロー一歩手前の合図だ。
ここでもう一度アネキの望まぬ答え、つまり否定をしたら右手が突きだされるだろう。
正直、少し怖いがここで負けては男がすたる。
俺は胸を張ってアネキを見返した。
「だから、い・や・だって言ったんだ」
「よっぽどお姉ちゃんのアイアンクローが恋しいみたいね」
アネキが右手を前に突きだして、徐々に俺に接近してくる。
俺はいつでも避けられるよう、腰を低くして自分に回避の精神を心がける。
「ふん、そう何度もくらうかっ…」
アネキが痺れを切らして、俺の頭に手を伸ばしてきた。
大丈夫。何度も見てきた技だ。
来るとわかっていて、避けるイメージさえできていれば簡単に避けられるはずだ。
そして俺はイメージ通りに避けようとしたがーー
次の瞬間には、アネキがニコニコしながら俺の頭に指を突き立てていた。
「そう何度もなんだって?」
リンゴぐらい簡単に潰してしまえるんじゃないか、と思うくらいアネキの力は強かった。
「わ……悪かった。お……お願いですから放してください」
あまりの痛さに耐えきれず、すぐに謝る姿勢をとった。
「それでよろしい。やっぱり竜也はお姉ちゃんがいないとダメねぇ~」
笑顔でそんなことを言ってきた。
反論したいが、したらまたアイアンクローをくらうだけだろう。
でも俺も男だ。
もう一度アイアンクロー覚悟で反論する。
「そんなことは!」
「そんなことは…何?」
笑顔でアネキが聞いてくる。でも目は笑っていない。
「いえ、なんでもございません!」
反射的に謝ってしまった。我ながら情けない。
昔からアネキにだけは勝てやしない。
一生のうちに一回ぐらいは勝ちたいものだ。
「さぁ行くわよ!」
アネキが玄関へ向かったので、仕方なしに俺もそれに続いた。




