36話
日向と一緒に学校に戻ると、みんなが一斉に集まってきた。
クラスメート、先生達。みんなが日向を出迎えに走ってきた。
残念ながら日向の両親は自分達でも日向を探していたらしく、車を使って遠くまで行っていて、ここにはいないようだ。
「日向さーん」
「心配したんだよ」
「大丈夫だった?」
皆、同じようなことを日向に尋ねた。
俺なんかには目もくれず、日向に抱きついたり、隣のヤツと手を繋いだり、みんな幸せそうだった。
「どうやって逃げてきたの?」
大衆の中の1人がそんなことを尋ねた。
「逃げてきてません。悪魔さんが……咲良竜也さんが私を助けてくれました!」
名前を呼ばれて一瞬驚いてしまったが、みんなも違う意味で驚いていた。
俺が日向を助けたからだろう。
皆、一様に「あの咲良が!」、「不良だって人でしょ?」などと話し始めた。
当たり前だろう。日向に対してひどいことをして、事件に興味なさそうに教室を出たのだ。疑われて当然である。
俺が何も言わず立ち去ろうとしたら、日向に腕を掴まれた。
「どこ行くんですか悪魔さん!」
「どこって、家だ。俺が助けたなんて言ったって、今みたいに混乱させるだけだ。それにこの場に俺は必要ないだろ。みんな……日向を待っていたんだ。俺じゃない」
「そんなことありません! 悪魔さんは私にとってヒーローです! 私を助けてくれた正義の味方です!」
なんかこっぱずかしいことを力説されてしまった。
でも、今の日向の力説のおかげか、みんなが俺を称えはじめた。
「すげーな! 咲良」
「アイツヤンキーなんかじゃないんじゃね?」
「俺はわかってた。咲良は良いヤツだって」
少し前までの俺なら、都合のいいヤツらだと笑い飛ばしただろうが、今回は違っかった。
純粋に涙が出た。
報われた気がした。
中学のときは、誰かを守ったら、忌み嫌われた。良いことしたはずが、悪いことになっていた。
でも、今回は違かった。みんなに誉められ、認められた。うれしかった。
「えっ! あっ……悪魔さん どうしたんですか えっと……とにかく……えいっ!」
日向が心配そうに俺を見ていた。そして次の瞬間、俺を胸に抱いてくれた。
泣いている子供をあやすように頭をゆっくり撫でながら、大丈夫、と何度も言ってくれた。
みんなに見られていて恥ずかしかったが、涙は止まらなかった。今までの涙が一斉に出てきたように止まらなかった。それでも日向は泣き止むまで抱いていてくれた。
その後も大変だった。何があったのか先生に問い詰められ、途中泣き出した鳳を宥め、教室では泣きながら日向に抱かれたことを冷やかされながら、何があったのか聞かれ、今日だけで同じ話を何回するんだってくらい話した。
夜の9時を過ぎた頃ようやく俺達は解放され帰路についた。
教室までカバンを取りに行って、2人で校門に向かって歩く。
人影が見えた。それも2つ。そのうちの1つがものすごい勢いでこちらに向かってくる。
「咲良ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「うおっ! 何しやがる白鳥!」
白鳥だった。手を大きく広げて来たかと思ったら、そのまま首を絞められた。
どうにかそれを振りほどき、2人で笑い合った。
「ったく! 遅いんだよお前は! 最初から俺らと一緒に探せってんだ!」
「うっせー! 結局日向を助けたのは俺だったじゃねぇか」
「なんだとー」
久しぶりのやりとりだ。しばらくまともに話してなかったから、とても新鮮に思える。
「仲いいわねぇ~、自由ちゃんも助かってよかったわね!」
もう1つの人影、アネキもやってきた。
「まったく。お姉ちゃんには、俺には関係ない、なんて言ってたくせに、結局自分で助けちゃうんだから」
「うるせー。俺の考えを最初からだいたい見抜いていたくせに!」
「あっ! バレてた?」
「たりめーだ」
アネキとの会話も新鮮だった。俺が作戦を始めてからはアネキとも、ろくに話してなかったから、こんなやりとりは久しぶりだ。
「むー! みなさんばっかり盛り上がってずるいです! 私も混ぜてください!」
日向も輪の中に入ってきた。これで元通りだ。何もかもが元通り。
「よーし! このままどこかでパーティーしようぜ!パーチー!」
白鳥がいつものうざいテンションでそんなことをいいだした。
「無理だ」
「無理ね」
「無理ですね」
俺らの答えは一緒だった。
白鳥は残念そうに、肩を落とした。
「なんでだよ~」
「日向の両親のとこに日向を連れてかなきゃならんだろ。心配してたのは俺らだけじゃない」
「あっ! そうか!」
このまま4人で日向を家まで送った。
帰り道で日向になんで急に冷たい態度を取ったのか聞かれ、黙ってようとしたのに白鳥にも尋ねられ、結局すべて話してしまった。
2人は驚くと思っていたのに、呆れたように肩を落とした。
「なんて不器用なヤツなんだ」
「不器用すぎます! 悪魔さん」
「こういうヤツなのよ許してあげて」
俺が会話に加わる前に全員に不器用認定されてしまった。
楽しく話していたらあっという間に日向の家に着き、白鳥の家は反対だったらしく、日向を送り届けたあと、ダッシュで帰っていった。
俺達も10時には家に到着し、飯も食わずにベッドに入って寝た。




