33話
「血祭りだこらぁぁぁぁぁぁぁ」
まずは叫んで相手を怯ませ、その隙に2人の間を抜ける。
「あっ! 悪魔さん!」
日向が驚いた顔をした。でも、今はそれどころではない。
時間をかければ相手が冷静な判断を取り戻してしまう。その前に片をつけないと。
中間の内の3人が殴りかかってきた。2人の攻撃を完全に見切って、3人目は殴り飛ばした。ソイツは木箱の辺りまで吹っ飛び気絶。残りの2人が道を塞ぐように立ちはだかったが、ダブルラリアットで2人諸とも吹き飛ばす。気絶こそしないが、抜けることには成功した。
「この調子で残りのヤツも潰す」
気合いを入れ直し、日向の元へ向かう。
「今行くからな日向!」
「だっ……ダメです悪魔さん!」
日向が俺を心配そうに見ている。あんなことをしたのに心配してくれている。嬉しかった。
「大丈夫だから少し……待ってな!」
近くに来たヤツをとりあえず殴って、その勢いでもう1人に裏拳を決めた。
そしてリーダーらしきヤツがの所までこれた。
後ろにまだ何人もいるが、日向まではコイツしかいない。
「日向を攫ったこと地獄で後悔しやがれ!」
リーダー格のヤツに殴りかかる。今まで以上に大きく振りかぶり、中学のとき鍛えた豪腕を振るおうとする。これで日向に手が届く
―――はずだった
「な……に……」
やられたのは相手じゃなくて、
―――俺だった
俺の腹にはスタンガンが突きつけられている。
気絶こそしなかったが、うずくまってしまった。
「おい! コイツを痛めつけろ!」
リーダーから命令を下されたヤツらが俺を真ん中まで引き戻し、暴力を振るってきた。
圧倒的だった。
抵抗しようとしたが、スタンガンの痺れがまだ残っていて上手く身体を動かせない。相手はそんな俺を嘲りながら、殴り、蹴り、引きずり回し、罵った。
防ぐことも出来ないので一発一発が重い。狙っているわけではないのだろうが、鳩尾などダメージの
多く入る場所が何発も殴られる。中には俺以上に腕の太いヤツもいて、ソイツの豪腕はとてもすごかった。気絶しないのが奇跡と思えるほど身体を痛めつけられる。
「や……やめてください! 悪魔さんにひどいことしないで!」
日向の甲高い叫び声が響く。視界が霞んでよく見えないが、声からして顔をぐしゃぐしゃにして泣いているのだろう。
情けなかった。あの頃と変わらない自分がとにかく情けなかった。
手は届くのに助けられない。
ただ手をこまねいて見ているだけ。
悲しかった。
こんなことになりたくなかったから強くなったのに、実力が足りなかった。数が違うとかそういう問題じゃない。強ければ数にだって勝てるのだ、圧倒的な強ささえあれば、でも俺は弱かった。
でも俺にだってやれることはある。
せめて日向を安心させてやるくらいのことはしなければならない。俺はしばらく出さなかった表情、あのときアネキが見せてくれた笑顔を自分なりにしてみた。
日向は一瞬、驚いていたが、すぐに涙を流してしまった。
本当に情けない。
大切な人を守るどころか、安心すらさせてやれない自分が情けない。意識もさっきより薄らいでいて、気を抜いたら気絶してしまいそうだ。
「もういいぞ! 少し離れろ」
どういう訳かリーダー格が暴力を止めさせ、俺の元にやってくる。
「無様だなぁ~咲良。俺が誰だかわかるか?」
髪を掴まれ、上を向かされた。視界が霞んでしっかり認識出来ないが、どこかで見た記憶がある。でも思いだせない。
俺はまだ屈してないという意志を込めて、相手の顔に向かって唾を吐きつけた。
「なにしやがるくそがっ! 準様の顔に唾なんかつけやがって!」
「準? あの準か!?」
「そうだよ! やっとわかったか。てめーらコイツ好きにしていいぞ!」
俺の腹部に蹴りを叩き込んでから準は日向の近くへ戻り、準の部下がまた暴力を振るいに戻ってきた。
こんな状況なのに俺は驚いていた。まさか相手のリーダーが準だったとは、あのときと顔付きも体つきも違うし別人に見える。でも準なら俺の名前を知っているのも納得だ。俺を指名してきたのはあのときの復讐だろう。
日向はまだ泣きじゃくっているようだ。「悪魔さん」とか聞こえるからもしかしたら自分より俺を心配してくれてるのかもしれない。
優しいヤツだ。なんでこんな優しい子がこんな目に合わなくてはならないのだろう。日向ならこの世界を明るく楽しく生きていけたはずなのに、どうしてこうなってしまったのだろう。やっぱり俺と関わってしまったからだろうか。そうだとしたら本当に悪いことをした。俺と関わったヤツは不幸になるのがわかっていたのに、つい日向の優しさに甘えてしまっていた。
頼むから誰か来てくれないだろうか。
日向を助けて笑顔にしてくれるヤツが、来てくれないだろうか。
俺はどうなったって構わない。なんなら命だってくれてやる。だから誰か助けに来てくれ。




