32話
「つ……着いた!」
着いた場所は戦乱高校から2時間ほどの場所にある倉庫だ。
少し前までは使われていたようだが、会社が潰れてしまったため潰れた倉庫だ。場所も小さい山の麓で人も寄りつかない。
なぜこの場所がわかったのかというと、相手が不良……つまりはヤンキーだからだ。
俺だって元はヤンキーのようなものだった。ヤンキーの考えることは安易に想像できた。倉庫、廃墟、候補はいろいろあったが、相手の高校付近にはこの倉庫しかなかった。廃墟も古い倉庫もすべて潰されていて残っていたのが、この倉庫だ。
ヤンキーというのは、自分達だけの場所を好み、尚かつ隠れ家として使える場所を選ぶ。そしてこの倉庫は最近潰れたばかりなので、物がたくさんある上にキレイだ。隠れ家としては申し分なかったのだろう。
あの頃の知識がこんなところで役にたつとは思わなかった。
入り口の近くまで来ると、見張りであろうヤツが2人立っていた。
見つからないように
木などに隠れてながら倉庫の裏に回る。
入り口は前の1つしかないらしく、他に侵入できそうな場所は窓しかなかった。
中のようすを確認するため、窓から顔を覗かせる。
中にはヤンキーが10人くらい見え、リーダーらしきヤツの近くに日向はいた。
手足を縛られているものと思ったが、縛られておらず、逃げられないように3人に囲まれている。
入り口から一番遠いところにいるので、助け出すだけ、みたいなのは無理そうだ。どちらにせよ日向をこんな目に合わせたヤツをただで済ますわけないので関係ないのだが。
でも人数的にこちら不利だ、なら奇襲を仕掛けるしかない。そのためには入り口のヤツを声を出させずに倒さなければならない。
今回俺に求められるのは、一撃必殺、先手必勝、そしてなにより速さだ。
この中の1つでも欠けたら作戦は失敗する。
つまり電撃戦だ。
覚悟を決めて行動を起す。
まず携帯のアラームを5分後に設定して入り口から離れた木陰に隠した。そしてそこから少し離れた場所へと移動する。
5分後に携帯が鳴り、見張りの1人が音の発信元に向かってきた。
「んっ? 携帯? 誰の……」
相手が携帯を拾った瞬間、後ろからタックルを仕掛け、倒れたところを馬乗りして行動を制限、声を出されては困るのですぐに鳩尾に拳を叩き込み眠ってもらう。保険のためにもう一発殴って完全に気絶させた。
少しして1人が戻って来ないのを不審に思った、もう1人もこちらにやってくる。
良い感じに入り口から離れたところで俺は飛び出しラリアットを決めてさっきと同様に鳩尾に1発入れた。
見事に見張りを倒したのはいいが、問題は中だ。
中で待機している相手に奇襲というのは難しい。むしろ不可能だろう。逆にこちらが奇襲に合うデメリットの方が大きい。一応もう1度裏に回って中の状況を確認した。
入り口付近に2人、中間地点に5人、日向の周りにリーダーを含めて3人だ。
1番の難関は中間地点だろう。入り口の2人は勢いでどうにかなるとしても、中間の5人を勢いで乗り切るのはまず無理だろう。だとすると最低2人は倒さなければならないだろう。そして最後は日向の周りだ。日向は後ろは壁、前と左右をヤンキーに囲まれている。手足を結ばれていないのが唯一の救いだが、助けだすのは容易ではない。
最後の3人は運に任せるほかないようだ。
日向の様子はぐったりしていた。いつもの笑顔はなく、アイツに一番似合わない泣き顔をしている。
俺は新たに日向を助ける決意をした。
入り口の正面に立った。ドアを開ければ後戻りは出来ない。
意を決してドアを開けた。




