31話
白鳥達はおそらく闇雲に探し回っているのだろう。でもそれじゃ人手も時間も足りない。
俺は何カ所か候補をあげ、目的の場所へ走りだした。
最初に来たのは学校から一番近い廃墟だ。めったに人が寄りつかないし、この場所自体を知らない人も多い。
早速中に入り、日向を探した。叫んでもいいのだが、もしここに日向達がいたら、犯人達に自分が来たのを伝えることになる。それだけは避けなければならない。
相手が2、3人程度ならなんとでもなるが、5人を越えたら俺だって対処出来ない。
そして誘拐じみたことをするくらいだから2、3人ということはないだろう。
それに犯人は俺を指名してきた。つまり俺と少しでも関係があるヤツだ。でも特定するのは不可能だ。中学のときヤンキーだった俺を知っているヤツはたくさんいるし、恨みがあるヤツだって何百といる。
思考を巡らせながら5分程探し回ったが、人っ子1人見あたらなかった。
次に来たのは携帯が落ちていたらしい場所だ。辺りの人に訪ねれば他校の生徒がどこの生徒かわかるかもしれない。
それがわかるだけでも大きな強みになる。相手の学校がわかるだけで少しは行動範囲を潰せるからだ。
辺りの人に手当たり次第に日向のことを訪ねた。でも時間が経ちすぎている。日向のことを見た人どころか、学生を見てない人の方が多かった。
時刻は12時を回った。まだ5月とはいえ、ずっと走っていれば汗がでてくる。でもそんなことを気にしている時間がない。
次に向かったのは日向の家だ。携帯で日向の携帯に連絡し、これから訪ねることを伝えた。
1時にはどうにか到着することができた。
玄関でチャイムを鳴らすと焦った顔の両親が出てきた。
ざっくりと俺と日向の関係を説明して、他に犯人から連絡がないか訪ねる。
「それが一度もないのよ! リダイアルしたんだけどずっと出なくて!」
収穫がないならここにいても仕方がない。両親にお礼を行ってから俺はまた走り出した。
両親は泣きながら俺に応対してくれた。それに見合うだけのことはしてやりたい。
それからは当てもなくなり、俺も闇雲に探すことになった。
刻一刻と時間がなくなってきて、俺にも焦りが生まれ始めた。
そのせいか盛大に転けてしまった。
携帯を見るともう4時……残り時間は1時間
足を動かそうとしたら棒のようになっている上に、鉛が付いているかのように重い。太ももを乱暴に叩いてみたが、痛いだけで力が入らない。
「くそっ! 動けよ! このままじゃ……日向が……」
拳を地面に叩きつけた。何度も何度も、手から血が出てきても気にせず叩いた。
「このままじゃ変われてねぇじゃねぇか! 他人が傷ついてるのをただ待ってるだけじゃねぇか! くそぉぉぉぉぉ」
誰に届くわけでもない叫びが響く。
周りの人達は迷惑そうに俺を見るだけ。
それでも構わず叫び続けた。
そのとき、ポケットの携帯が振るえた。
力なく携帯を取り出し、通話ボタンを押し電話に出る。
「もしもし! 咲良くん!?」
鳳だった。
「あのね! 相手の不良から連絡があって時間を6時まで伸ばしてもらえることになったの! それに咲良くんが探しに行ってくれて先生うれしかった!」
早口にいろいろとまくし立ててながら話している。ほとんど聞きながしていた。
いや、頭に入って来なかった。
俺の体はもう限界で日向が捕まっている場所にも全く当てがない。
もう、俺にできることは全部やりつくした。
鳳の期待はうれしいが、もう……俺にできることは何にもない。
「だからあきらめずにがんばって! 先生もがんばるから」
電話が切れた。
いくら時間が伸びたって探せなかったら意味がない。それに俺の身体には限界がきている。
もう……どうしようもないのだ。
思考も鈍くなり始め、考えることさえ無駄なことに思え始めた。
携帯をポケットにしまい、這いつくばって電信柱まで行き背中を預けた。
そして最後の悪あがきでさっきの電話の覚えている部分を思い出す。
相手に連絡が取れた。
時間が伸びた。
相手が不良だった。
んっ? 相手が不良?
俺は携帯をまた取り出しリダイアル機能で鳳に連絡した。
すぐに鳳が出たので早口に質問をした。
「さっき相手が不良だって言ったか?」
先ほどの電話の時の俺と違っていたので驚いたのだろう。
少し戸惑っていたがすぐに平静を取り戻したらしく答えが返ってきた。
「えぇ! 何でも戦乱高校の生徒だったらしくて、近所でもよく知られているらしいのよ。あれっ? 先生このこと言ってなかった?」
俺は返事を返さず電話を切り、頭に浮かんだ場所へ足を向けた。
戦乱高校は治安が悪く、学校の評判も悪い、中学時代悪さばかり働いていてどの高校にも入れそうにもない生徒への最後の砦とも言える学校だ。そのためほとんどの生徒が不良か学校への登校拒否の生徒ばかりだ。近所の人に迷惑をかけながらもどうにか経営できているのも、その不良生徒の最後の砦というところが大きいだろう。
ちなみに俺も最悪の場合はこの高校を受けることになっていたが、俺は準との一件以降特に目立った悪さはしていなかったため、どうにか今の高校へと入学できたのである。
「ったく鳳のヤツ! なんでこの情報を早く教えなかったんだよ!」
ついつい愚痴がこぼれてしまう。
さっきは動かなかった足も、俺の気持ちと一緒に希望を取り戻したように動いた。
時間は5時を回ったところ、目的の場所は少し遠いが、走ればギリギリ間に合う場所だ。
「待ってろよ日向!」




