29話
俺はいつも通りに学校に来て、クラスのヤツらに睨まれながら、ただ時が過ぎるのを待っていた。
いつもなら来るはずの日向が今日は来なかった。俺と関わるのをあきらめたのだろう。
良いことだ。俺なんかと関われば、逆にアイツが不幸になる。
俺みたいに暗い道を歩くより、明るく照らされた道を歩いてる方がアイツには似合ってる。
俺も、この生活に慣れ始めていた。
それにこれは罰なのだ。中学時代に散々他人に迷惑をかけてきたのに、高校生になってまともな生活を送ろうとした罰。
受けなければならない罰なのだ。
8時30分を過ぎたのに鳳が来ない。
少し遅れてるだけかと思ったら9時になっても来なかった。
「おい。他のどのクラスにも先生来てないぜ! なんか会議してるっぽい」
他のクラスを偵察しに行ってた生徒が帰ってきた。
でも会議といっても何を話し合っているのだろう。会議にしては長すぎるし、遅れるという連絡くらい入れるだろう。
何か―――大きな事件でもあったのだろうか。
他のヤツらは授業が潰れているため喜んだり、何があったのか自分なりに考察したりしている。
10時になった。
まだ鳳は来ていない。最初は楽しそうにしていたヤツらも少し静まり始めていた。
「みなさん……大変なお知らせがあります」
鳳が入ってきた。
でもいい話しではなさそうだ。俺も少し気になっていたので耳を傾けた。
「E組の日向自由さんが今朝から行方不明になりました」
衝撃の一言だった。クラスにも緊張がはしる。鳳が大まかな説明をしてくれた。
要約すると、日向が時間になっても登校して来なかった。担任が家に電話してみたところ、今日は朝の6時くらいに家を出たというらしい。
心配した両親がGPS機能を使って日向の居場所を特定し、その場所に向かってみると、道端に携帯が1つポツンと落ちていたらしい。近所の人に尋ねると何人かの他校の男子生徒に連れられてた。という目撃証言を得たらしい。このことから日向の両親が慌てだし、学校側も何かあったのでは? という考えに至ったらしい。
「それに……つい先ほど日向さんの携帯に連絡があったそうです……」
皆が鳳に注目している。鳳の深刻な顔から緊張が皆に伝わっているのだろう。
普段緊張なんてしない俺ですら、今は息を呑んでしまっている。自然と力も入っているかもしれない。
そして次に鳳の口から発せられる言葉は、誰もが驚く一言だった。
「……日向自由は預かった。17時までに探せなかったら……どうなるかわかってるよな……と言っていたそうです……」
鳳は手を顔にやって泣き始めてしまった。クラスの女子も何人か泣き始めているか。男子も怒りを覚えているようだ。
俺が日向に冷たくなったあの日から、クラスのヤツは日向と仲良くなっていた。
もしかしたらホントのクラスメートより日向のことをクラスメートに思っていたかもしれない。
でも俺の怒りはそれどころではなかった。
他のどの誰より怒っている自信がある。
いや、怒っているなんて生易しい。俺は生まれて始めて誰かのために、本気で激怒している。
歯を砕く勢いで噛み締め、手に爪が食い込むくらい強く握りしめ、身体も自然と震えていた。
ホントなら今すぐ立ち上がって、日向を探しに行きたいが、そんなことをしたら今までのことが無駄になってしまう。
そのときクラスの何人かが立ち上がった。皆「助けに行こう!」、「みんなで探せばすぐ見つかる!」などと言っている。
だが、鳳がそれを止めた。
「ま……待って! 先生方との話し合いで生徒は教室に待機。午後まで進展がなければ帰宅することになりました! なので皆さんは待機していてください!」
鳳が普段は出さない大きな声を出したので、立ち上がった生徒も止まった。
すぐに批判の声もあがったが、鳳に泣きながら頼まれて席に戻った。
「……先生は会議のため、また職員室に戻ります……あと咲良くん……あなたは職員室まで来てください……」
一瞬、驚いたが次には頷いた。
クラスのヤツらが俺を睨んでいる。日向にあんなひどいことをしていたから犯人と思われているのかもしれない。
確かにあんなことをしていたんだから、疑われて当然だ。
クラスのヤツからの鋭い視線を集めながら俺は鳳の後に続いた。




