28話
放課後また鳳に呼び出された。今回は俺だけだ。昨日の放課後からの日向への暴言についてだ。
無視しても良かったが、明日になれば同じだ。どうせ呼び出しを食らう。なら今日行ってしまった方が楽だ。
「どうしちゃったの咲良くん? どうして日向さんにあんなこと言ったの?」
「もとからうっとうしかっただけだ。それ以外に理由はない」
鳳は悲しそうな顔をした。哀れんでいるわけでもなく、同情とも少し違う。
本当に心から悲しそうな顔をしている。
鳳が生徒達から人気があるのは、たぶんこういうとき、生徒の気持ちになって考えてくれるからだろう。普通の教師なら話し始めから俺に怒声を浴びせているだろう。
「そんなことないんじゃない? 咲良くん、日向さんと居てとても楽しそうだったわよ」
「楽しそう? 笑わせるな。迷惑だっただけだ」
「そんなことないわよ。先生、咲良くんとても楽しそうに見えた。日向さんも咲良くんといて楽しそうだった。先生思ったもん。お似合いの二人だなって」
先生は聞き分けがない子供に話しかけるよう、ゆっくりと気持ちが伝わるように話している。
でも、その優しさに甘えてはいけない。
ここで俺が折れればすべてが台無しになる。
「そうですか。話はそれだけか?」
冷たく返す。ヤンキーらしく、他人を傷つけるように。
「うん。でも何かあったら先生に話してね」
鳳はにっこり微笑んだ。でも俺は笑わない。
職員室を後にした。
あれから三日がたった。今でも日向は毎日暇さえあればF組に来て、話しかけてきた。
謝ったり、昨日あったことをただ話したり、とにかくいろいろ話しかけてきた。
でも俺は取り合わない。話しは完全に無視。途中で席を立つこともあった。その度、日向は悲しそうにするが、すぐに次の話題に変えて俺の機嫌を取ろうとする。
白鳥もあれから呆れたのか俺に話しかけなくなった。いつも俺に傷つけられた日向をアネキと一緒に慰めている。
クラスでも俺の悪口が増えた。今まではただ傍観してただけだったくせに、一丁前に人様の悪口は言えるらしい。
アネキともあれからろくな会話をしていない。最低限の会話はするが、夕食のときの会話もなくなり、朝起こしに来ることもなくなった。
青山ともあれっきりだ。別に会いたいわけじゃないので構わないのだが。
これで正真正銘あのときの俺に戻った。
他者から忌み嫌われ、存在事態を否定された……あのときの俺に……
別に誰も恨んじゃいない。何がどうであれ、いずれはこうなっていただろう。
文芸部の方は俺がいなくなり、日向が俺に虐められていた。という解釈になったため、悪くなっていた文芸部のイメージは、逆に日向を同情する生徒から応援され始めていた。
このままいけばガーデニング部との部活創立争いも勝つことができるだろう。
文芸部は作られ、日向にも友達が出来て、日向は楽しい高校生活が送れることだろう。
これですべてが丸く収まる。
―――はずだった―――




