26話
「なんだてめーまた来たのかよ」
「えっ?」
日向が驚いた顔をした。クラスにいたヤツらもこちらを向いている。
「いつもうっとうしいんだよ! 悪魔さん悪魔さんって!誰が悪魔だよバカが!」
思いっきり怒鳴りつけた。表情も怒りを露わにするように眉間にしわを寄せ、眉を少し曲げる。
「えっ……あっ……えっと……」
日向は何が起こったのかわからず、口をパクパクさせている。
でも俺は止まらない。さらなる罵倒をぶつける。
「お前と知り合いだと思われるのが嫌なんだよ! これから一切俺に近づくな! 話しかけるな! わかったらとっと失せろ!」
日向の頬に涙がつたった。とてつもない罪悪感に駆られたが慰めも謝りもしない。
少ししても日向が固まったまま動かなかったので、俺は自分から教室を出た。
教室の中からは日向を慰める女子の声と、緊張の途切れた生徒の息の吐く音だけが聞こえた。
次の日から俺は徹底的に日向から距離を取ることにした。
昨日あれだけのことを言ったから、もう来ないと思っていたが、日向は朝一番に謝りに来た。
でも俺は無視をする。
しつこく謝ってきたので、教室を出ようとしたら、白鳥がすごい形相で俺の腕を掴んだ。
「どういうことだよ咲良! なに日向さん泣かしてんだよ!」
初めてみる白鳥の表情だった。目を思いっきり吊り上げ、俺の腕を潰すんじゃないかってくらい強く握っている。
「お前には関係ないだろ。痛いから手を放せ」
冷たく返した。
「ふざけんな!」
白鳥が俺を突き飛ばした。身体をロッカーにぶつけたが大した痛みはない。
「何が関係ないだ! 同じ文芸部だろうが! なんで急に日向さんに冷たくなってんだよ!」
今度は胸ぐらを掴まれた。何度も揺さぶられたが、俺は表情を変えない。
無表情で白鳥の言葉に答えてやる。
「急にじゃない。前からうっとうしかったんだよ。今までは友達がいないとかいってたから、ただのお情けでつき合ってただけだ」
「てめぇ」
白鳥が感情を抑えきれなくなったように腕を振り上げた。
その拳を俺に叩き込む。何度も何度も叩き込んできた。
反射的に殴り返しそうになったが、どうにか自制した。
でもずっと殴られているわけにもいかない。途中で拳を受け止めて、白鳥の身体に一発拳を入れた。
本気で殴ったわけじゃないが、鳩尾を狙ったので、白鳥はうずくまっている。
周りのクラスメートは素知らぬ顔で傍観するだけ。
今の俺には都合がいい。
俺は教室を出た。




