22話
22話
昼休みになった。
いつものように日向が弁当を持ってきて、白鳥もすぐに俺の席にきた。
昼休みになっても朝の噂は続いている。先生たちも特に行動を起こしていない。というよりは下手にことを荒立たせることをしたくないのだろう。クラスメートは授業中こそこそと俺の方を見ては目が合うと怯えたようにすぐに目を逸らす。その態度に今日俺は何度も苛立ちを感じた。そしてクラスの奴らは今まで以上に俺から距離を取り始めていた。
なれ合うのは嫌いなので俺としては問題ないのだが、日向たちに迷惑をかけるのはやっぱり嫌だ。特に日向は今部活を作ろうと必死なのだ。そんな状況なのに俺なんかにかまっていると部活づくりの印象に響く、でも俺がそんなことを言ってもさっきのように日向は俺は悪くないと弁護するだろう。自分のことを、部活づくりを犠牲にしてでも俺を庇うだろう。日向はそういうやつだ。でも俺としては俺が退学になっても構わないのでどうにか部活を成立させてやりたい。
そんなことを考えていると日向が暗い雰囲気を壊すように大きな声を出した。
「さぁ! 食べましょう!」
「うるさいぞ」
「それはないだろ咲良……」
日向がいつもの笑顔で両手を合わせいただきますをした。
白鳥も自分の弁当をつつき始め、俺もコンビニの弁当に手をつけた。
たわいのない会話をした。白鳥がボケて俺がツッコミ、日向が笑う。ここ最近のいつもの光景だった。
昼食を取り終わっても会話を続けていたら、教室に青山が入ってきた。
明らかに俺らの方へ近づいてくる。
俺は誰からでもわかるように青山を威圧した。殺気を放ったといってもいいかもしれない。
「なんかようか」
思いっきりドスを効かせた声をだす。
「えぇ。ちょっと話があるの。着いてくれる」
青山も挑発気味で返してきた。
「あぁ」
勢いよく席を立った。
俺は一緒に席を立とうとした日向と白鳥を手で制し止めた。
「俺一人で行く。悪いが待っててくれ」
二人は不満そうだったが、俺は反論を聞かず、青山を促した。
青山はにやりと笑うと俺を無視して歩き出す。
「いくぞ」
場所は体育館裏にした。人気もなく、誰かに話を聞かれる心配がない。
今回のような場合には、うってつけの場所だった。
最初に話を切りだしたのは、青山だった。
「どう? クラスメートからヤンキー扱いされるのは」
「やっぱりお前だったか。だが残念だったな。生憎ああいったことには慣れてる」
わざと憎たらしい顔をしながら言ってやる。
心の中では本気でコイツをぶん殴りたいと思っている。だが、青山の挑発に乗って問題を起こしてしまったらそれこそ問題だ。アネキにどやされ、下手したら学校を退学。そしておそらく俺と関わっていた日向の部活創立ができなくなってしまう。俺一人がつらい目に合うのは構わないが他人を巻き込むのは嫌だ。
「そうでしょうね。でも私たちの狙いはそこではないの」
青山も負けず劣らず憎たらしい顔をする。
「ほぅ。じゃあ何が狙いなんだよ」
「それも言わなくても直にわかるわよ。今日の放課後にでもね」
腕を組みながらまたわかったようなことを言ってきた。
いったいコイツの狙いはなんなのか? なんでコイツは部活創立で勝てると思っているのか、今の俺には全くわからない。でもここで脅迫に怯えても仕方がない。そんなことをしたら青山たちの思うつぼだ。俺は極めて冷静に答える。
「なら今言っても同じだろ」
「いいえ。あなた達の絶望した瞬間がみたいし、今は言わないわ」
いやらしいヤツだ。わざわざこちらに苦しむように仕向けるなんてろくなヤツじゃない。
でも、俺が言えたことでもないか。
「あぁそうかよ。なら放課後まで待ってやる」
もう話すことはないので、背をむけて教室へ帰る。正直コイツと一緒にいると無性に腹が立つ。
俺は正々堂々と戦わず、回りくどいことをする奴は嫌いだ。大抵そういう奴は自分は何もしないで他人を使って他人を傷つける。それが良いやつでも悪いやつでも関係なくだ。
俺が背を向けても止める様子を見せないということは青山ももう話すことはないのだろう。
青山とは逆の方向へ足を向けた。




