1話
1話
外から鳥のさえずりが聞こえてくる。
カーテンの隙間から俺の部屋に光が差し込み、太陽が自分の存在を主張している。
どうやら朝のようだ。
眠たい目を無理やり少し開け、時計を確認するとまだ七時。
まだ寝れる。
俺がベッドの上で二度寝の態勢に入ると、下の階からアネキの声が聞こえてきた。
「竜也起きろ~」と言っているようだが、俺は無視して二度寝することにした。
階段を上がって来る音が聞こえる。
アネキが起こしに来たのだろう。
俺は絶対にまだ起きまいと少し身構えながら二度寝の体制を貫く。
ガチャと、ドアが開き、アネキが俺の部屋に入って来た。
「竜也。今日は入学式でしょ。こんな日ぐらい早く起きなさい」
アネキがやんわりとした口調で言ってくる。
だが、俺は無視して二度寝の体制のままだ。
今日が入学式だろうが、卒業式だろうが俺には関係ない。
ギリギリまで布団の中で寝るだけだ。
「起きろって言ってるでしょ!」
突如俺の鳩尾に衝撃が走る。
「ぐはっ……いきなりなにしやがる!」
余りの痛みに飛び起きた俺は鳩尾を抑えながら、今出せる最大限の声にドスをきかせて言ってやった。
「起きないアンタが悪いんでしょ」
アネキは俺に全く怯えることなく、詫びをいれるでもなくニコニコしている。
俺の鳩尾に肘を入れたことをなんとも思っていないのだろう。
だが俺だって男だ。
すぐに反論しにかかる。
「それにしたって起こし方っつーもんがあんだろ」
「そんなもんないわよー」
アネキは俺の鳩尾に肘を入れ、俺が起きたことに満足したのか俺の反論をまともに取り合うことなく楽しそうに俺の部屋を出て行ってた。
俺ももう何を言っても無駄だと悟り、仕方なく制服に着替えて食卓へ向かう。
下に行くとすでにアネキの姿はなく、テーブルの上に一枚ずつ野口(千円)とトーストが置いてあった。
アネキがいないのは部活のためだろう。
驚くことに家のアネキはバスケ部でエースらしく、強豪校とは言えないものの、そこそこな実力を持っている部活でエースを張ってるんだからすごいものだ。
朝食と思われるトーストを食べようと手を伸ばすと、皿の下に紙が挟まっていたので、俺はそれを手に取り読んでみる。
「お昼はその千円でどうにかしてね! お姉ちゃん部活で帰り遅くなるから」
と書かれていた。
アネキの帰りが遅いのはいつものことである。
ちなみに家の両親は仕事で海外に行っていて日本に居ないため、今は俺とアネキの二人暮らしだ。
基本的な家事はすべてアネキがこなしており、俺はたまに言われたことを手伝うだけ、それでどうにか今までやってきた。
俺は千円に感謝しアネキを恨みつつ、置いてあった千円を財布にしまい、ポケットにねじ込んでからトーストを手に玄関へ向かう。
靴を履こうとしていた時、手紙を捨て忘れていたのを思い出し、一度食卓へ戻る。
アネキ、以外とこういうのうるさいからな。
テーブルの上に置きっぱなしにした手紙を取る。
「んっ? なんだ?」
さっきは気づかなかったが、まだ何か書いてある。
「入学式がんばんなさい。しっかりするのよ」
俺は寝起きにあんな仕打ちを受けたのに、アネキに少し感謝しつつ、次の文を読む。
あんな姉でも少しはいいところがあるものだ。
「って言っても無理でしょうね。お願いだからお姉ちゃんに迷惑かけないでね。竜也の愛する 舞 より」
前言撤回。
やっぱりアネキは最悪だ。
「ふざけんなぁぁぁぁぁ」
さすがの俺もブチギレた。
手紙をびりびりになるまで破り続け、最後にそれを思いっきりばら撒いてやった。
本人がいない今、せめてもの俺に出来る反抗である。
「何が竜也の愛するだ! 俺は全然アネキなんか愛してないし、これからも愛するつもりはねー」
その後もしばらくアネキへの怒りを爆発させたあと、俺は朝から不快な気分で学校へ向かうことにした。
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