15話
15話
俺は日向に連れられて今有名ファーストフード店ウィックまで来ていた。
ハンバーガー、ポテトを主な商品としたファーストフード店でサイドメニューも充実していて学生の財布にも優しい価格の有名店だ。
俺もアネキが休日の部活の日によく自分では料理できないので使う。
「こんなところでよかったのか?」
変に面倒なところを言われても困るが、日向のことだからもう少し面倒なことになると思っていた俺は少々拍子抜けである。
「はい! 初めてなので楽しみです!」
「初めて!?」
日向の口から驚くべきことが放たれた。
こんな有名ファーストフード店に来たことない奴なんてこの世に居たのか、と本気でおもってしまった。
「はい。両親がああいうのは栄養バランスに悪いと」
「そういうもんか」
納得である。
日向の昼食を覗いたところバランスのいい、弁当だとは思ったがそういう意図があったのか、と今になって納得した。
日向の両親はどうやら相当厳しい人のようだ。
俺の両親は超が付くほどんの放任主義なのでとても新鮮に思うが、それよりも面倒そうな親だと思った。
でも、正直日向の両親も半分は正しいと思う。
日向を自由奔放に育ててしまうと本当に誘拐とかの犯罪に巻き込まれかねない。
最終的に犯人の裏事情とか聞いて犯人に加担してしまいそうだ。
店内に入ると学校帰りの学生で店内が溢れていた。
それでも順番は3分もしないうちに回ってきて、俺は今日の気分で適当に注文をした。
「お前はどうするんだ?」
「悪魔さん」
「なんだ?」
日向がカウンターのところに張り付けてあるメニュー表を見ながらなにやら真剣に話しかけてきた。
「どれもおいしそうです。私は何を頼めばいいのでしょう?」
「食いたいものを頼め」
「全部頼んだらお金が……」
「全部食べたいのかよ!?」
初めてくるとは言っていたものの、まさかファーストフード店でこんなことになるなんて誰が予想できただろうか?
いや、誰もできないだろう。
「わかった。俺がお勧めを選んでやる」
「はい。悪魔さんに任せます」
俺は適当に王道のセット物と飲み物を選択。
無難な選択だが王道で無難な選択だからこそ失敗はない。
俺はそう思い日向の分を注文をした。
5分ほどで注文したものができたようで、カウンターで受け取る。
この5分間は本当に辛かった。
隣で日向がしきりに「まだですか」を連呼。
うれしいのはわかるんだが公衆の面前でこういうのはやめてもらいたい。
何度も言っている通り俺は目立つのが嫌いだ。
でも、日向にそんなことはわかるはずもなく、目を文字通りキラキラと輝かせながら待機している。
今、日向に擬音をつけるとしたら間違いなく『ウキウキ』だろう。
「ウキウキ、わくわく!」
考えてたら本当に擬音を口に出しやがった。
驚きを隠せない俺に気づくことなく日向はウキウキわくわくしている。
こんな時間が5分も続いたのだ。
周りから変な目で見られるわ、日向を止めることはできないわで俺の精神はもうすでに限界だ。
早く帰りたい。
「ここでいいか」
「はい」
適当に空いてる席に座る。
鞄をわきの椅子に置こうとしたらそこに日向が座った。
「なんでここに座る?」
「えっ? だめですか?」
「前に座ればいいだろう。お互い荷物も置けるし」
「わかりましたならこうしましょう!」
日向はそういうと俺のバックと自分のリュックを前の席に置き、結局日向が俺の隣に座った。
なぜだ。なぜ俺の常識が通用しない。
俺は常識人間ではないが最低限の常識は持っているはずだ。
普通こういう場合お互いが話しやすいように前後の席に座るはずだ。
現に周りの二人組を見ても隣通しで座っているのなんて誰一人としていない。
三人組とかのなると仕方がないとは思うが俺らは二人組、なんでこうなった。
「はあー」
「どうしたんですか悪魔さん? ため息は幸せを逃がしてしまいますよ。おばあちゃんが言ってました」
「そうか。なら今の俺に幸せは来ない」
俺はもう一度大きなため息をつくと、ハンバーガーの包みを開けてかぶりついた。
うん。うまい。
「悪魔さん! なんですかこれは! おいしすぎます!」
「そうかよかったな」
「はい。悪魔さんには感謝です」
そう言うと日向は無言でハンバーガーを食べ続けた。
そしてお互いが半分ほどハンバーガーを食べ終えたころ日向が話しかけてきた。
「悪魔さん」
「なんだ?」
「それ。一口ください」
日向が俺の頼んだハンバーガーを指さしながらそんなことを言い出した。
「やだ」
もちろん俺の答えは拒否。
なぜ俺のものを日向にやらねばならんのか。
「私のも一口あげますから」
「いらん」
「私何でもしますから!」
「わかったわかった」
日向の一言で店内の人間が一瞬でこちらを向いたので俺はこれ以上日向に変なことを言われる前に折れることにした。
たぶん、子供が店で駄々をこねてどうしようか迷ってる親ってこんな気持ちなのだろう。
まだ16なのに俺は親の気持ちというものを体験した。
やっぱり大人になりたくないな。
俺は適当にちぎって渡そうとハンバーガーに手を伸ばすと日向がそれを制した。
「大丈夫ですよ。ほら……」
そう言うと日向は俺の食べていた部分を何も言わずに食べた。
「おい」
「いたいですぅー」
日向の頭にチョップを叩きこむ。
「お前なあ、自分が今なにしたのかわかってるのか?」
「悪魔さんのハンバーガーをもらっただけですが」
「お前男に対してそういうことをやるのに抵抗はないのか」
「はい? 抵抗ですか?」
ダメだ。
たぶんなにもわかってない。
純粋すぎて危ない。色恋沙汰に興味のない俺だったからいいものの、日向の奴他の奴にもこういうことをしないか心配である。
一応忠告ぐらいはしておいてやろう。
俺の少ない良心だ。
「いいか。これからはそういうことするなよ」
「なんのことだかわからないのですが?」
「だからな。男の食べたものにそのまま食いつくな。口をつけてない部分をもらうか、もらうな」
「よくわかりませんが悪魔さんが言うならそうなんでしょう。わかりました」
この後食事を終えた俺らは帰宅した。
なんとも大変な放課後だった。




