11話
11話
携帯のアラームが鳴った。
いつもの朝だ。
俺はだらだらとベッドから起き上がり、着替えて食卓に向かう。
部活のためアネキの姿はない。
なので今の時刻は八時。いつもより遅い時間だ。
適当にテレビをつけて朝食を取り、学校へ向かうことにする。
校門を通り、昇降口を通り、教室に着く。
10分もしたら担任が来て、朝のHRを行い、いつも通りの授業が始まる。
昨日と何も変わらない日常があるだけだ。
昼休み、今日はアネキが部活で朝早いため、アネキ作の弁当はなく購買に向かう。
後ろで白鳥が「待ってるぞ」とか抜かしているが、今日はそんな気分じゃない。
1人下駄箱で食うことにしよう。
購買でコロッケパンと焼きそばパンを購入し、下駄箱に着くと1人の女生徒が座っていた。
日向だ。
「あっ! 悪魔さん! この度はホントにありがとうございます」
「何だ? 俺はお礼を言われることはしてないぞ」
あれから一度も日向に会っていない、罵倒されることはあっても、お礼を言われることは無いはずだ。
「えっ? あっ! とぼけてるんですね?」
「とぼける? なんの話だ?」
どうも話が噛み合わない。
話の内容が見えないし、日向が何を言っているのかわからない。
「えっ? だって文芸部に入部してもらえるんですよね?お姉さんが言ってましたよ」
「なんだその話は? 俺はそんなこと言ってないぞ」
「でも、お姉さんが……」
俺はポケットから携帯を取り出しアネキに電話をかける。
アネキしか登録してないから早いもんだ。
「何? なんかよう?」
すぐにアネキが電話にでた。
俺は質問をぶつけにかかる。
「どういうことだ? 俺は文芸部に入部なんかしないぞ」
「あぁ。そのこと。してあげなさいよ! 自由ちゃん可哀想でしょ?」
「俺には関係ない」
「あるわ! 彼女は竜也を変えてくれる」
「俺が変わる?」
アネキがワケのわからないことを言い始めた。
「そう。変わるチャンス。竜也が変わるチャンスよ」
「それは……中学の頃の俺から……か?」
「……えぇ」
アネキが言いづらそうに答えた。
俺は何も言わず、電話を切る。
「あの……」
日向が申し訳なさそうに話しかけてくる。
「なんだ?」
「入部しては……もらえないんですね?」
日向の顔が曇る。
向日葵が一瞬にして枯れてしまった。
「あぁ。昨日も言ったが俺には関係ない」
「そう…ですか」
やはり、断るならきっぱり断った方がいい。
これでいいはずだ。
彼女のためにも。俺のためにも。
ここで昼食を取るのが気まずくなってしまったので、俺はここから立ち退くことにする。
「あのっ!」
呼び止められた。
俺は正直、アネキとの電話で中学の話題がでて、イラつき始めていたが、足を止める。
「中学の頃、とか変わる、とか言ってましたよね? どういうことですか?」
「お前には関係ない!」
悪気がないのはわかっていたが、つい口調が強くなってしまう。
「そ……そうですか……そうですよね! まだあんまり仲が良くなったわけじゃないのに」
俺が怒ってるように見えたのだろう。
日向は悲しそうにしている。
「すいません。私……悪魔さんがお友達みたいで嬉しかったんです」
「友達みたいだと?」
俺はつい聞き返してしまう。
いい言葉が返ってくるはずもないのに。
日向は必死に涙をこらえながら答えた。
「はい……私に友達がいないのは……前にも話しましたよね?」
「あぁ」
「だから悪魔さんが初めての友達に思えて……つい」
今の言葉は俺の心の深くに響き渡った。
それにこれ以上、日向の悲しそうな顔を見ていられなかった。
「もういいぞ」
「えっ?」
「もう何も言うな。入部するのは無理だが、部活創立を手伝ってやるよ」
なんの気まぐれだか自分でもわからないがさっきまでイライラはどこかへ行ってしまい。しまいには部活創立を手伝うなんて言ってしまった。
「ホ……ホントですか!」
日向の顔に向日葵が戻った。
「じゃあ早速放課後から活動しましょう!」
よほど嬉しいのか日向がブンブン両手を振り回す。
「あっ! すいません。嬉しくてつい」
「そうかよ」
「はい! では放課後、ここでで待ち合わせましょう!」
日向は嬉しそうにスキップしながら帰っていった。
このとき、俺は気づかなかった。
自分の心に、何かわからないものが溜まっていくのを。




