お昼寝
「眠い」
隣で君がぼそりと呟いた。
無理もない。今は五時間目。丁度昼ご飯を食べた後で、一番眠くなる時間帯だ。
しかもどう聞いても子守唄にしか聞こえない先生の話し声と、今の時期特有の、あの涼しいけれど太陽がぽかぽかと暖かい感じは、春とはまた違った意味で眠気を誘う。
あ、とうとう船を漕ぎ始めた。がっくんがっくんと頭が揺れている。これは先生にばれるのも時間の問題かな。
さて、ここで声をかけてあげるのがいいのか、それともそのままにしておいた方がいいのか。普通は起こすのかもしれないけれど、心地よい眠りを妨げたと後で責められるのも嫌だ。
そうこう考えてる間にも、君は気持ち良さそうに寝息をたて始めた。
やっぱり先生に怒られるのは可哀想だから、そっと起こしてあげようと、手を伸ばす。
「───くん……」
肩を叩くはずだった手は、空中で止まってしまった。
君が寝言のように呟いたのは、紛れもなく僕の名前。
空中で行き場を失っていた手を、そっと降ろす。
君はきっと、後で先生に怒られるだろう。
そしてその後で、なんで起こしてくれなかったのか、僕に詰め寄るに違いない。
だけど知るもんか。
君が、僕の名前なんて呼ぶから悪い。
今回はちょっと恋愛風になりました。
最後の方は、書いててニヤニヤしてしまいました。
私も午後の授業は眠たくなります。特に五時間目らへんは睡魔との戦いですね。五時間目開始のチャイムと共に、ほら貝の音が聞こえてきそうです。