なぁ~んもない!前編
一条一それが俺の名前だ
逆から読んでも一条一
俺はこの名前を結構気に入ってるんだが、子供のころは友だちにからかわれることもあった
さすがに今はそんな幼稚なことをいってくる友人はいない
友人が少ないだけなんだけどね
「んで、これからどうするよ?」
隣を歩く悠二に声をかける
「さぁね、午後は普通に授業出る予定だったし」
肩を竦めながら投げやりに答える
「お嬢様たちに聞いてみれば?」
悠二は呆れたように前を歩く少女2人に向かって顎をしゃくった
「わ、私に聞かないでくれ!私は姫子さんに無理やり連れ出されただけだ!」
雫が顔だけこちらに向けながら慌てて言い訳をする
「なんだよー私だけ悪者かよー」
わざとらしく頬を膨らませながら姫子が雫を睨む
「俺たちが学校をサボる理由はいつだってお前だろぉが」
昼休み
俺の携帯に姫子からメールが届いた
件名:なし
私たちが学ぶべきことは学び舎にはない
さぁ一緒に大空に飛び立とうでわないか!
という意味の分からない内容だった
しかも”でわ”ではなく正確には”は”だ
「いつからあんた達はそんなに真面目になったの?私、そんなに真面目な子に育てた覚えはないわよ!」
演技がかった声と、「おぉロミオ!」とか叫びそうなポーズで俺たちに訴えかける姫子
「まぁ断る理由もねぇから別にいいけどさ」
「まぁねー」
「授業があるでしょう!授業が!」
雫がツッコミをいれてくるが気にしない
雫は真面目だなー
「サボったはいいけど結局どうするよ?」
姫子に訪ねてみる
すると彼女はなんの迷いもなく、満面の笑みでこう言った
「特になぁ~んもやることはないでありまするよ!」
姫子は両腕でばってんを作ると、なぁ~んもないの踊りをしながら岩と化した雫の周りをくるくる回る
「だと思ったよ」
「そうね」
俺と悠二は苦笑いを浮かべつつ立ち止まって空を見上げた
「気まぐれで・・ただの気まぐれで・・私の内申が・・・」
岩と化した雫が涙を流しながら何かブツブツ言ってる
空を見上げながら雫に言った
「別に初めてのことじゃないだろ?」
雲一つない綺麗な空
「今日は絶好のサボり日和だぜ?」
俺たちは一般的に不良と呼ばれる存在なのかもしれない
自分から授業をサボったりすることはないが、姫子が提案してきた時はほぼ間違いなくサボってる
月に一度とかそんなもんじゃない
週に1、2回は今日みたいな日がある
勉強についていけなくてグレた訳じゃない
テストの成績では俺と悠二、姫子の3人は中の上くらいの位置にいる
雫は中の下といったところか 真面目なくせに成績は微妙だ
俺たちは姫子の頼みを断れない
それが俺たちが学校をサボる理由だ
本人曰く、雫は姫子の性格からしてそばにいないと心配と
悠二は出来るだけ俺と行動を共にしたいから
俺は・・・内緒だ
とりあえず俺たちは姫子の頼みを断れない
ではなぜ姫子は学校をサボりたがるのか?
答えは非常にシンプルで
姫子は人間が大嫌いだからだ
雪城姫子の能力は生物の持つ自然治癒力の向上化だ
しかもただの向上化ではなく”急激”な向上化
それは起きていても、寝ている時でも自分の体・及び自分の体が接触しているものに対しオートで行われる
傷を癒す能力はこの世に腐るほど存在しているが、姫子のそれは別格だった
俺と姫子がまだ小学生の時、俺は交通事故にあった
居眠り運転をしていたトラックが歩道に突っ込んできたのだ
俺は反射的に姫子をかばい、トラックにはねられた
運良く即死は免れたものの、死ぬのは時間の問題だった
頭を抱える運転手、野次馬の声、泣き叫ぶ姫子の顔は今でも覚えてる
姫子は涙で顔を濡らしながら必死に俺の名前を叫び小さい体で俺の体を抱いていた
事故から救急車が俺を病院に運ぶまで約17分
絶望的とまで思われていた俺の体には
傷一つ残っていなかった
精密検査をしたが身体のどこにも異常はなく
はねられた直後の苦しさもない、むしろ事故前よりも体が軽い気がした
病室からでると涙と鼻水で顔をくしゃくしゃにしながら姫子が俺に抱きついた
車で家に帰る途中、泣き疲れたのか姫子は俺に寄り添いながら眠っていた
さっきまでの表情とは違って、安堵の表情を浮かべた可愛らしい笑顔だった
これが俺の記憶にある小学生の頃に姫子が見せた
最後の笑顔だった
一個にまとめるはずだったんですが、思いのほか長引いてしまったので、前後編に分けることにしました!
あとがきも後編のあとにまとめて書きます;




