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第 3 話  大人の余裕

 彼女の腕から弾けた黒い影は、私を無視して真っ直ぐ厨房に向った。

 そして、棚から物が落ちる音。

 見知らぬ場所に、かなり興奮しているようだ。


 後片付けをしている、女性二人の悲鳴を期待したのだが……

 残念ながら何も聞こえなかった。



「ちょっと待っているんだよ」


 一応、名の知れたレストランだ、窓も裏口のドアも開け放たれてはいない。

 怪しい術を使わない限り、逃げられはしないのだ。


「大丈夫、必ず捕まえてあげる」


 自分は大人だ。

 焦る姿を子供に見せたくはなかった。

 椅子に座らせ、コップに氷と水を入れ彼女に勧めた。


 ここでウインクでも出来れば絵になるのだが、両目を閉じそうなので遠慮した。



 ゆっくり厨房に歩き出すと、声が聞こえた。



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